共同編集では、文章を直す前に大量のコメントを読み、論点と担当者を整理する作業が発生します。Google Docsの新機能は、Geminiがコメントを要約し、返信案や本文修正案の作成まで支援するものです。文書レビューの進め方はどう変わるのでしょうか。
Googleは2026年7月28日、Google DocsにGeminiを活用したコメントワークフローを導入すると発表した。Geminiは文書内のコメントを読み取り、スレッドの要約、主要テーマや未解決事項の抽出、コメント追加、返信案の作成、レビューを反映した修正案の提示を行う。
機能は編集権限を持つ利用者が対象で、Google Docsの下部バーまたはGeminiサイドパネルから利用できる。Rapid ReleaseとScheduled Releaseの両ドメインで同日から最長15日かけて段階的に展開され、Business Standard/Plus、Enterprise Standard/Plus、Education Plus、Google AI Pro/Ultraなどで提供される。
From:Streamline collaboration in Google Docs with Gemini-powered comment workflows
【編集部解説】
これまでのGemini in Google Docsは、文章の新規作成、既存文書の推敲、要約、画像生成、文体や書式の統一など、主に文書本文を対象とした支援機能を提供していました。
今回の更新で新しいのは、共同編集者が残したコメント自体をGeminiが作業対象として扱う点です。コメントスレッドの要約、共通する論点の抽出、未解決事項の特定に加え、新しいコメントの追加、返信案の作成、フィードバックを反映した本文修正案の作成まで依頼できます。
従来は、担当者が複数のコメントを順に読み、対応が必要な指摘を選び、関係者へ返信し、本文を修正する必要がありました。今回の機能は、この一連のレビュー工程をGoogle Docs内のGeminiから操作できるようにするものです。単に文章を書かせるのではなく、文書を完成させるまでの調整作業を進めるAIという設計思想が読み取れます。
利用場面として考えやすいのは、記事原稿、企画書、報告書、プレスリリース、営業資料など、複数の担当者がコメントを付けながら仕上げる文書です。
たとえば、「未解決の指摘だけを整理する」「特定の担当者からのコメントをまとめる」「数値の確認を担当者へ依頼する」「指摘を踏まえて導入部分を書き直す」といった作業をGeminiへ依頼できます。Google Drive内の関連資料を参照した返信案を作ることも想定されています。
特にコメント数が増えた文書では、文章を修正する時間よりも、誰が何を指摘しているかを把握する時間の方が長くなる場合があります。今回の機能は、コメント欄を単なる連絡場所ではなく、Geminiに作業を指示するための情報源として利用するものです。
一方、少人数で作成する短い文書や、コメントがほとんど付かない文書では、効果を感じにくい可能性があります。多数の関係者による確認や承認が発生する業務ほど、機能の価値が分かりやすいと考えられます。
Geminiがフィードバックを基に本文を変更する場合、修正内容は提案として生成され、利用者が確認して承認した後に文書へ適用されます。
この仕組みからは、Geminiにレビュー工程を完全に任せるのではなく、コメントの整理や修正案の作成をAIが担当し、採用するかどうかは人間が決めるという役割分担が見えます。コメントの意図を誤って解釈したり、複数の指摘を不適切にまとめたりする可能性は残るため、生成された返信案や修正案の確認は必要です。
Googleも、Geminiの提案には不正確または不適切な内容が含まれる可能性があると案内しています。特に数値、契約条件、製品仕様、公開前情報などを扱う文書では、AIが作った回答をそのまま確定せず、元資料と照合する運用が求められます。
機能を利用するには、対象となるGoogle Docs文書の編集権限が必要です。また、管理者側でGemini for Workspace in Driveが有効になっており、利用者側でもGoogle Workspaceのスマート機能を有効にする必要があります。
対象はBusiness Standard/Plus、Enterprise Standard/Plus、Education Plus、Google AI Pro/Ultraなどのプランです。すべてのGoogle Workspace利用者へ無条件で提供される機能ではありません。
文書生成や編集、文体・書式の一致など、今回とは別のGemini in Google Docs機能では日本語が対応言語に含まれています。ただし、今回のコメントワークフローについては、公式発表で個別の対応言語が明記されていません。日本語文書や日本語コメントで全機能を利用できるかは、実際の展開後に確認する必要があります。
今回の更新は、Google Docsを「AIで文章を書く場所」から、「人間から集まった意見をAIと整理し、文書を完成へ近づける場所」へ広げるものです。導入を検討する際は、文章生成の品質だけでなく、自社の確認・承認工程にどこまで組み込めるかを見る必要があります。
【関連記事】
Google Docs、Gemini搭載の音声読み上げ機能を追加 NotebookLMから移植
Google Docsでは、コメント処理だけでなく文書をAI音声で確認する機能も導入されています。Geminiが文書作業の入口から確認工程まで広がっている様子を紹介しています。
Google Workspace、Geminiを活用した「Audio Overviews」と「Canvas」機能を追加
Googleは以前から、文書作成や音声要約などWorkspace内の作業へGeminiを組み込んできました。これまでの機能拡張を紹介しています。
Google WorkspaceがAIエージェントに開放—OpenClaw対応CLIが示す「次のOS」の正体
Google Workspaceでは、アプリ内のAI支援と並行して、外部AIエージェントから業務を操作する環境も整備されています。AIが回答から実行へ進む、より大きな流れを確認できます。
【編集部後記】
Google Docsは、私自身も実生活の中で使う機会が多いツールです。コメントが増えると、内容を読み返して対応漏れを確認するだけでも意外と時間がかかります。Geminiが論点を整理し、返信案や修正案まで支援してくれるなら、日常的な共同編集でも役立ちそうです。一方で、コメントの意図をどこまで正確に読み取れるのかは気になります。
身近な作業に直結する機能だからこそ、実際の使い勝手を確かめてみたいところです。
私たちの文書作成がどこまでスムーズになるのか、今後の展開に注目したいです。
【用語解説】
コメントワークフロー
文書に付けられたコメントの確認、論点整理、返信案作成、本文修正案の反映までを連続して進める作業工程。今回の機能では、Geminiが複数の工程をGoogle Docs内で支援。
コメントスレッド
一つの指摘に対して、共同編集者が返信を重ねる会話形式のまとまり。Geminiによる要約、返信案の作成、未解決事項の抽出対象。
Rapid Release
Google Workspaceの新機能を比較的早く受け取るリリース方式。管理者がドメイン単位で選択する提供設定。
Scheduled Release
Rapid Releaseより後の計画された時期に新機能を受け取る方式。組織内で新機能を確認してから展開したい場合に利用される設定。
スマート機能
利用状況やコンテンツを基に、Google Workspaceが補助機能を提供するための設定。今回の機能では、利用者側で有効にする必要がある設定。
【参考リンク】
Google Docs(外部)
オンラインで文書の作成、編集、コメント、権限管理を行えるGoogleの共同編集サービス。今回の新機能が追加される製品の公式ページ。
Gemini in Google Docs(外部)
文書の下書き、推敲、要約、画像作成、内容に関する質問など、Google Docsで利用できるGemini機能の公式紹介ページ。
Google Workspace with Gemini(外部)
Docs、Gmail、Drive、Sheets、Meetなどに組み込まれたGeminiの機能、利用例、料金、データ保護方針を案内する公式ページ。
【参考動画】
【参考記事】
Respond to & manage comments with Gemini in Google Docs (Workspace Experiments)|Google Docs Editors Help(外部)
Geminiによるコメントの確認と要約、フィードバックに基づく本文修正案、返信案や新規コメントの作成方法を説明する公式ヘルプ。ページ上ではWorkspace Experiments向けと表示されている。
Gemini in Google ドキュメントを活用する|Google Docs Editors Help(外部)
Google Docs内でGeminiを開き、文書の作成、編集、要約などに利用するための操作方法をまとめた日本語の公式ヘルプ。
Expanded language support for Gemini in Google Docs|Google Workspace Updates(外部)
文書生成や編集、文体・書式の一致など、Google Docs内のGemini機能で対応言語を拡大した公式発表。今回のコメント機能自体の言語対応とは別の更新。












