Sunoが新世代モデル「v6」を発表しました。高速版のv6-miniは、無料プランでも使えます。ただしSunoの無料プランには、月ごとのダウンロード枠も商用利用の権利もありません。開放されたのは音のほうで、その音をどこまで使えるかの線は、9月3日に引き直されたままです。
Sunoは現地時間9月9日、新世代の音楽生成モデル「v6」を発表した。Warner Music Group、BMG、Believeを業界パートナーとして共同開発したもので、v6、v6-wild、v6-miniの3モデルで構成される。
v6とv6-wildはProおよびPremier契約者向け、v6-miniは無料プランを含むすべての利用者が対象となる。曲の一部分を自然言語で編集する、複数の曲から1リクエストでマッシュアップを作る、サンプリングと音源分離とビート制作を1つの流れで行う、テキスト・音声・画像・動画から生成する、歌詞1語だけを差し替えるといった操作に対応する。Sunoはv6のロールアウトに伴い、従来のモデルをすべて引退させ、Sunoをv6世代へ完全に移行するとしている。
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Introducing v6
【編集部解説】
今回の発表は「3つのモデルが出た」という話に見えます。ただ、Sunoを実際に使っている人にとって、その日から何が変わるかを決めるのはモデル名ではありません。契約しているプランのほうです。
v6-miniは無料プランを含むすべての人が使えます。これは大きな開放です。一方で、無料プランには月ごとのダウンロード枠と商用利用の権利がありません。ここは9月3日に施行された新しい利用規約とダウンロード方針で線が引かれた部分です。有料プランはProが月20回、Premierが月60回。商用利用の権利は、有料プランの契約者としてダウンロードした曲に紐づきます。
無料プランにも、試用のダウンロード枠は用意されています。9月3日より前に加入した人は生涯で最大7回、それ以後に加入した人にも折に触れて付与される場合があるとされています。ただしこの試用枠は個人利用に限られ、商用利用の権利は付きません。
つまり、v6-miniで良い音が出て、試用枠が残っていればファイルは手元に落とせます。それでも案件に納品することはできません。日本でSunoをBGM制作や動画の劇伴に使っている人にとって、ここが最初に効いてくる分岐点です。v6-miniは「無料で試せる最良のモデル」であって、「無料で仕事に使えるモデル」ではありません。
料金は取得時点で、年払いにした場合のProが月8ドル、Premierが月24ドルです。Premierにはブラウザで動くDAWのSuno Studioが含まれ、Studioからの書き出しには上限が適用されません。
もうひとつ、実作業者に直接届く変更があります。Sunoは公式ブログで、v6のロールアウトに伴って従来のモデルを引退させ、プラットフォーム全体をv6世代へ移すと明記しました。8月10日に「新しいモデルの登場時に、これまでのモデルはすべて引退する」と予告されていた方針が、今回実行に移ります。
気になるのは、いま手元にあるものがどうなるかです。この点についてSunoはヘルプですでに答えを出しています。モデルの引退は「そのモデルで新しく生成できなくなる」ことを意味し、作った曲はライブラリに残って再生も共有もできる。旧モデルの曲を土台にした延長・リミックス・カバーも続けられるが、その処理は新しいモデルで走るため、元の生成とは音が変わる場合がある。旧モデル特有のワークフローについては、新モデルの投入時に近い結果が得られる代替手段を用意すると述べています。
つまり、作ったものは消えません。消えるのは、旧モデルで新しく生成するという選択肢のほうです。v5.5の質感を前提に作品を組み立てている人、v5.5に自分の音源を学習させたCustom Modelを持っている人は、旧モデルで済ませておきたい生成や編集が残っていないかを、早めに見ておくのが安全です。既存の曲は引退後もライブラリに残り、その書き出しには契約中のプランの上限が適用されます。
移行がいつ自分の画面に届くかは、また別の話です。Sunoはロールアウトという言い方をしており、個々のアカウントへの反映時期は公表されていません。焦って契約を変える段階ではなく、自分のアカウントに表示が出てから判断すれば十分です。
そのうえで、今回の発表が広げたものを見ておきたいと思います。Suno自体は以前からSampleやMashup、部分置換、ステム分離を備えており、Studio 2.0には会話で操作できるチャットバーもありました。v6で加わったのは、曲の他の部分を保ったままサビだけを言葉で変更する操作と、Sunoが「一つのワークフロー」と表現する、サンプリングから分離、ビート構築までの流れです。指示の入り口が、機能を選ぶことから平文の言葉へ寄りました。プロンプトで一発当てるゲームから、部分を直しながら詰めていく作業へ、重心が移っています。
3モデルを性格で分けた設計も、この流れの上にあります。狙った音へ確実に寄せるv6と、思いつかなかった方向へ振れるv6-wild。Sunoはwildで出た手がかりをv6へ戻して仕上げる往復を想定していると説明しています。ラフスケッチと清書を行き来する作曲の動きが、そのままモデルの選択に置き換わった形です。3モデルはいずれも、ボーカル、楽器編成、構成、ムードといった音楽家が実際に使う言葉を、より広く受け取るとされています。
出口も同時に開きました。発表の前日、SunoはBelieveおよびTuneCoreとの世界提携を公表しています。Believeは今年前半、当時のSunoのモデルで作られた楽曲を配信しないと表明していた側です。今回、業界パートナーと共同開発したモデルで作られた楽曲は、両社を通じて配信できる対象になりました。作った曲をSpotifyやApple Musicへ届ける経路が、正面から用意されたことになります。透かしとフィンガープリント、ダウンロード上限は、この経路に乗る楽曲にも適用されます。
学習データについては、公式ブログの書き方をそのまま読むのが正確です。ブログはWarner Music Group、BMG、Believeをはじめとする業界パートナーと共同開発したと述べています。「v6は旧バージョンの学習に使ったデータでは学習していない」という説明のほうは、TechCrunchの取材に対してSunoが述べたものとして報じられました。公式の文章と、取材で語られた内容は、置かれている場所が違います。
司法側の時計は、これとは別に動いています。UMG Recordings、Capitol RecordsおよびSony Music Entertainmentとの訴訟は続いており、9月1日に提出された修正訴状への答弁書で、SunoがYT-DLPを用いてYouTubeから音源を取得したことを認めたと、Music Business Worldwideが9月8日に報じました。同誌によれば、事実関係に関する証拠開示は9月30日に終了する予定です。過去の学習をめぐる論点と、これから出荷される音の作られ方は、同じ会社の中で並行して進んでいます。
それでも、権利者との契約を土台にしたモデルが、無料プランまで含めたすべての利用者に降りてくる。この形が実際の製品として動き出したことの意味は小さくありません。権利者と組んだうえで何ができるのかという問いに、契約書ではなくプロダクトで答えた形になります。日本のクリエイターにとって当面の実務判断は、どのプランでその線を越えるかという一点に集まります。まずは自分のアカウントにv6が現れたら、いつも作っているジャンルで1曲、同じプロンプトを通してみることをおすすめします。手が覚えている音との差が、いちばん確かな判断材料になります。
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【編集部後記】
無料プランの試用ダウンロードについて、公式の説明が二つに割れています。ブログの脚注は、9月3日より前に加入した人には最大7回、それ以後の人には折に触れて付与される場合があると書く。一方でヘルプは、各無料アカウントに最大7回と書いています。
自分がどちらに当たるかは、加入した日で決まります。無料のままv6-miniを試すつもりなら、ダウンロードのボタンを押す前に、残りが何回あるかを画面で確かめておいたほうが確実です。
【用語解説】
v6-wild
Sunoが提供する3モデルのうち、探索を目的とした派生モデル。出力の予測がつきにくく、ばらつきが大きい。得られた着想をv6へ戻して仕上げる使い方が想定されている。
ロールアウト
新機能や新バージョンを、全利用者へ一度に切り替えるのではなく、段階的に配布していく展開方法。利用者ごとに届く時期が異なる。
DAW
Digital Audio Workstationの略。パソコン上で録音・編集・ミックスを行う音楽制作ソフトの総称。Suno Studioはブラウザで動作するDAWにあたる。
ステム分離
完成した楽曲から、ボーカル、ドラム、ベースといった構成要素を個別の音声ファイルとして取り出す処理。取り出した素材は差し替えや再構成に使える。
マッシュアップ
複数の楽曲の要素を組み合わせて、1つの新しい楽曲を作る手法。v6では複数の音源を1回の指示でまとめて扱える。
Custom Model
Sunoが2026年3月に提供を始めた機能。利用者が自分の楽曲を複数アップロードし、自分の音を学習させた個人向けのモデルを作れる。v5.5を土台としている。
フィンガープリント
音声そのものの特徴から楽曲を識別する技術。透かしと異なりファイルへ情報を埋め込まず、音の側の特徴で照合する。Sunoは配信される楽曲の追跡に用いるとしている。
YT-DLP
動画共有サイトから音声や映像を取得するオープンソースのツール。Sunoとレコードレーベルの訴訟では、YouTubeからの音源取得に用いられたかどうかが争点の一つになっている。
事実関係に関する証拠開示
米国の民事訴訟で、当事者が互いに証拠や情報を出し合う手続き。この期間が終わると、争点は主に法律論の段階へ移る。
【参考リンク】
Suno(外部)
テキストや音声から楽曲を生成するプラットフォーム。マサチューセッツ州ケンブリッジのSuno, Inc.が運営し、無料プランも用意されている。
Suno 料金プラン(外部)
Free、Pro、Premierの3プランの比較表。クレジット数、月ごとのダウンロード数、商用利用の可否、利用できる機能が並記されている。
Suno ヘルプ|ダウンロード・モデル・利用規約のFAQ(外部)
9月3日施行の変更点をまとめた公式FAQ。ダウンロード上限の数え方や、旧モデル引退後に既存曲がどうなるかまで回答されている。
Suno リリースノート(外部)
機能追加と改善の履歴。v5.5、Studio 2.0、Sample、Mashup、ステム分離など、各機能がいつ実装されたかをたどれる。
【参考記事】
Suno replaces its AI models with a new one trained on licensed music as copyright suits pile up(外部)
v6が旧バージョンの学習データを使っていないとするSunoの説明を伝える。チーフプロダクトオフィサーの談話も収録されている。
Suno Tries to Break into Music Mainstream With New Model ‘v6’(外部)
3モデルがどの契約層へ届くかを整理し、レーベルおよびアーティストへの収益分配を含む仕組みまで踏み込んで解説した記事である。
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3モデルの提供範囲に加え、利用者の反応が割れている状況と、Warner Music Group側の受け止めを伝えている。


















