Last Updated on 2025-05-15 16:57 by admin
ルンディン・マイニング社とBHPの合弁会社であるビクーニャ社は、アルゼンチンのサンフアン州で「ビクーニャプロジェクト」として知られる大規模な鉱床の初期鉱物資源量推定を2025年5月14日に発表した。この鉱床は、過去30年間で発見された最大級の銅・金・銀鉱床の一つである。
ビクーニャ鉱区には、測定・概測カテゴリーで1,300万トンの銅、3,200万オンスの金、6億5,900万オンスの銀が含まれており、推定カテゴリーではさらに2,500万トンの銅、4,900万オンスの金、8億800万オンスの銀が含まれている。この数値は、世界の主要銅生産鉱山の中でもトップ10に入る規模の鉱物資源である。
ビクーニャプロジェクトは、フィロ・デル・ソル鉱床とホセマリア鉱床の2つの主要鉱床から構成されている。フィロ・デル・ソル硫化物鉱床には、銅当量品位1.14%の高品位コアが6億600万トン存在し、これには450万トンの銅、960万オンスの金、2億5,900万オンスの銀が含まれている。一方、ホセマリア鉱床には銅当量品位0.73%の高品位コアが1億9,600万トン存在し、97万8,000トンの銅、240万オンスの金、1,100万オンスの銀が含まれている。
ルンディン・マイニング社とBHPは2025年1月にフィロ社を約40億カナダドルで共同買収し、ビクーニャ社を設立した。同時に、BHPはホセマリアプロジェクトの50%の権益を6億9,000万米ドルで取得した。
ビクーニャプロジェクトの統合技術報告書は2026年第1四半期に完成する予定であり、これによりビクーニャ鉱区は世界有数の銅・金・銀の生産地になる可能性がある。
ルンディン・マイニング社のジャック・ルンディンCEOは、「フィロ・デル・ソルは過去30年間で最も重要な新規発見の一つであり、世界最高品位の未開発露天掘り銅プロジェクトの一つになる可能性がある」と述べている。
この発見は、電気自動車や再生可能エネルギー技術の急速な拡大によって銅、金、銀の需要が急増している時期に訪れた。銅は「未来の金属」とも呼ばれ、世界がよりクリーンなエネルギーと電化へと移行する中で需要が増加すると予想されている。
References:
Largest Copper-Gold-Silver Deposit Found in Argentina – A Game-Changer For Mining!
【編集部解説】
ビクーニャプロジェクトの発見は、単なる鉱床発見のニュースを超えた重要な意味を持っています。まず、数値の正確性について確認しておきましょう。ルンディン・マイニング社の公式発表によると、この鉱床には測定・概測カテゴリーで1,300万トンの銅、3,200万オンスの金、6億5,900万オンスの銀が含まれており、さらに推定カテゴリーでは2,500万トンの銅、4,900万オンスの金、8億800万オンスの銀が含まれています。これは合計で約3,800万トンの銅と約8,100万オンスの金、14億6,700万オンスの銀という膨大な資源量です。
このプロジェクトが「過去30年間で最大の銅発見」と称されている点も事実です。ルンディン・マイニング社とBHPという世界的な鉱業大手による合弁事業であり、2025年1月にフィロ社を約40億カナダドルで共同買収したことで実現したプロジェクトです。
注目すべきは、このビクーニャ鉱区がアルゼンチンとチリの国境地帯に位置していることです。この地理的位置は、両国の協力が必要となる可能性を示唆しており、国際的な資源開発の好例となるかもしれません。
銅は現代社会において極めて重要な金属です。特に電気自動車(EV)の生産には従来の内燃機関車の約4倍の銅が必要とされ、再生可能エネルギーインフラにも大量の銅が使用されます。国際銅研究会(ICSG)の予測によると、2030年までに銅の需要は現在より約50%増加する見込みです。
このような背景から、ビクーニャプロジェクトの発見は単に鉱業界のニュースにとどまらず、グリーンテクノロジーの未来にも直結する出来事と言えるでしょう。アルゼンチンにとっては、経済発展の新たな原動力となる可能性があります。サンフアン州は鉱物資源が豊富な地域として知られていましたが、この発見によって世界的な鉱業の中心地として注目されることになるでしょう。
一方で、大規模な鉱山開発には環境への影響も懸念されます。アンデス高地の生態系は非常に脆弱であり、水資源の問題も深刻です。特に氷河地帯に近い場所での開発は、アルゼンチンの「氷河保護法」との兼ね合いも問題となる可能性があります。ルンディン・マイニング社とBHPは環境への配慮を表明していますが、実際の開発過程では地域コミュニティとの対話や環境保全措置が重要になってくるでしょう。
また、このプロジェクトの経済的インパクトも見逃せません。数千の雇用創出、インフラ開発、国際投資の誘致など、地域経済への波及効果は計り知れません。アルゼンチンは伝統的に農業国として知られてきましたが、この発見により今後10年で世界有数の銅輸出国へと変貌する可能性があります。
技術的な観点からも、このプロジェクトは注目に値します。フィロ・デル・ソル鉱床とホセマリア鉱床という2つの主要鉱床から構成されており、それぞれに高品位の鉱石が存在します。これらの鉱床を効率的に開発するためには、最新の採掘技術や環境技術が必要となるでしょう。
ビクーニャプロジェクトの統合技術報告書は2026年第1四半期に完成する予定です。この報告書によって、プロジェクトの全容がより明確になり、実際の開発計画が具体化されていくことでしょう。
【用語解説】
ポーフィリー銅鉱床:
火山活動によって形成された大規模な低品位の銅鉱床。世界の銅生産の約60%を占める重要な鉱床タイプである。
銅当量品位:
複数の金属を含む鉱床の価値を銅の品位に換算した値。例えば金や銀の価値も銅に換算して表すことで、鉱床の経済価値を比較しやすくしている。
露天掘り:
地表から穴を掘り下げて鉱石を採掘する方法。地下坑道を掘る方法に比べて大規模な採掘が可能だが、環境への影響も大きい。
氷河保護法:
アルゼンチンで2010年に制定された法律で、氷河とその周辺環境を保護するために鉱業活動を制限している。環境保護と資源開発のバランスを図る重要な法的枠組みである。
【参考リンク】
Lundin Mining Corporation(外部)
アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポルトガル、スウェーデン、米国で事業を展開する多角的な鉱業会社。
BHPグループ(外部)
2001年に設立された世界最大の鉱業会社で、多様な鉱物資源の採掘と加工を行っている。
Vicuña Corp.(外部)
ルンディン・マイニングとBHPが各50%の権益を持つ合弁会社で、アルゼンチン・チリ国境地帯の銅・金・銀プロジェクトを推進。
国際銅研究会(ICSG)(外部)
銅市場の透明性向上と持続可能な発展を促進するための国際組織。
【参考動画】
【編集部後記】
皆さんは普段使っているスマートフォンやEV車に、どれほどの銅が使われているかご存知でしょうか?一台のEV車には約83kgの銅が使用され、これは従来の内燃機関車の約4倍です。また、スマートフォン一台には約15gの銅が含まれています。今回発見されたような鉱物資源が、私たちの日常を支える最先端技術の基盤となっているのです。この巨大鉱床の発見は、私たちの未来のテクノロジーにどのような可能性をもたらすのでしょうか。テクノロジーの進化と資源開発の両立、環境保全と経済発展のバランスなど、現代社会が直面する重要な課題に対する一つの答えがここから生まれるかもしれません。