innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

NASA・東邦大学共同研究:10億年後、地球の酸素が枯渇し生命は消滅へ

NASA・東邦大学共同研究:10億年後、地球の酸素が枯渇し生命は消滅へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-15 17:05 by admin

NASAの支援を受け、日本の東邦大学の小崎一美助教授とジョージア工科大学のChristopher Reinhard准教授の研究チームが2021年3月に発表した研究によると、地球は今後10億年(1.08±0.14億年)かけて大気中の酸素が徐々に枯渇し、最終的に複雑な生命体が生存できない環境へと変化することが予測されている。

この変化は太陽の明るさが徐々に増すことで大気中の二酸化炭素(CO₂)の分解が加速され、光合成を行う植物が死滅することで始まる。植物の死滅により大気中の酸素の主要な供給源が消失し、大気中の酸素は現在の100万分の1以下にまで減少する可能性がある。

酸素の減少に伴い地球のオゾン層も消失し、地表は太陽からの致命的な紫外線にさらされることになる。研究チームは約40万回のシミュレーションを実行し、この変化が地質学的には急速に進行することを示した。

研究者たちによれば、この現象は地球の歴史における自然な変化であり、約24億年前の大酸化イベント以前の状態-メタンが豊富で鉄分で飽和した環境-に地球が戻ることを意味している。この環境変化後も嫌気性細菌や古細菌などの微生物は生存可能だが、人間を含む複雑な生命体は絶滅するとされている。

この研究は、地球の居住可能性が有限であることを示すとともに、現在の環境保全の重要性を再認識させるものとなっている。

References:
文献リンクNASA Is Definitive About This: Life on Earth Will No Longer Be Possible From This Date

【編集部解説】

今回のニュースは2021年3月に科学誌「Nature Geoscience」に掲載された地球の遠い将来に関する研究結果についてです。この研究は東邦大学の小崎一美助教授とジョージア工科大学のChristopher Reinhard准教授が中心となり、NASAの「系外惑星系科学のためのネクサス(Nexus for Exoplanet System Science)」の協力によって行われたものです。

研究の詳細を見ると、この研究チームは約40万回ものシミュレーションを実行し、地球大気の長期的な進化を予測しています。「地球の酸素化大気の将来寿命(The future lifespan of Earth’s oxygenated atmosphere)」というタイトルで発表されたこの研究は、地球環境の将来に関する重要な知見を提供しています。

この研究が示す未来像は、一見すると遠い未来の話に思えますが、地球環境の脆弱性と生命の存続条件の繊細さを改めて認識させるものです。10億年という時間スケールは人間の想像を超えていますが、宇宙的な時間軸では比較的短い期間と言えるでしょう。

特に興味深いのは、地球が将来的に過去の状態に戻るという点です。約24億年前の「大酸化イベント」以前、地球はメタンが豊富な環境でした。この研究は、地球の大気が再びそのような状態に戻ることを示唆しています。つまり、私たちが「普通」と考えている酸素豊富な環境は、地球の長い歴史の中ではむしろ特殊な時期なのかもしれません。

また、この研究は系外惑星の探査にも重要な示唆を与えています。生命を維持できる惑星の条件と、その状態がどれくらい続くのかという「居住可能期間」の理解は、宇宙における生命探査の重要な指標となります。

研究では、酸素の減少が地質学的な時間スケールで進行するとされていますが、10億年という期間は地球の歴史からすれば「明日」と言えるほど近い未来です。しかし、人類文明の歴史からすれば非常に長い時間であり、この間に技術的な解決策を見出す可能性も十分にあります。

この研究結果は、人類に対して「地球は永遠の楽園ではない」という重要なメッセージを投げかけています。宇宙開発や惑星間移住の技術開発が単なる夢物語ではなく、種としての人類の長期的な生存戦略として重要である可能性を示唆しています。

最後に、この研究は環境変化に対する生命の適応能力についても考えさせられるものです。地球上の生命は過去に何度も大きな環境変化を乗り越えてきました。今後の10億年という時間の中で、生命がどのように進化し適応していくのか、それとも人類が技術によって環境変化そのものに介入する道を選ぶのか、未来への可能性は開かれています。

【用語解説】

大酸化イベント(Great Oxidation Event)
約24億年前に起きた地球史上の重大な出来事で、大気中の酸素濃度が急激に上昇した現象である。それまでメタンや二酸化炭素が主体だった大気が、光合成生物の活動により酸素を含む現在の状態へと変化した。これは地球の歴史で最も重要な環境変化の一つであり、現在の生命の繁栄の基盤となった。

嫌気性生物(Anaerobic organisms)
酸素を必要とせず、むしろ酸素が有毒となる環境で生存できる生物である。地球上の生命が始まった当初はこのような生物が主流であった。例えるなら、私たち人間にとっての水中と同じように、彼らにとって酸素は「溺れる」環境なのである。

小崎一美助教授(Kazumi Ozaki)
東邦大学理学部の助教授で、地球の大気進化に関する研究を専門としている。今回の研究の主著者であり、地球の酸素豊富な大気の将来寿命について重要な発見をした。

Christopher Reinhard准教授
ジョージア工科大学の地球大気惑星科学者で、小崎助教授との共同研究者。惑星の居住可能性と生命の進化に関する研究を専門としている。

【参考リンク】

NASA(アメリカ航空宇宙局)(外部)
アメリカの宇宙開発機関。宇宙探査、地球科学、航空研究などの最新情報を提供している。

東邦大学(外部)
自然科学および生命科学系の総合大学。医学、薬学、理学、看護学、健康科学の5学部を有する。

Nature Geoscience(外部)
今回の研究「地球の酸素化大気の将来寿命」が掲載された科学ジャーナル。

研究論文原典(外部)
2021年3月に発表された「地球の酸素化大気の将来寿命」に関する原論文。

【編集部後記】

地球の酸素が10億年後に枯渇するという2021年の研究結果は、私たちの「当たり前」がいかに特別なものかを教えてくれます。皆さんは普段、呼吸する空気について考えることはありますか?地球の歴史において、現在の酸素豊富な環境は実はほんの一瞬の特別な時間なのかもしれません。この記事を読んで、地球環境の繊細なバランスや生命の進化について、ぜひSNSでシェアしてみてください。遠い未来の話ですが、私たちの「今」をより深く考えるきっかけになるはずです。

【関連記事】

エネルギー技術ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com
ホーム » エネルギー技術 » エネルギー技術ニュース » NASA・東邦大学共同研究:10億年後、地球の酸素が枯渇し生命は消滅へ