AirPodsのカスタムEQはなぜ今まで存在しなかったのか?iOS 27の新機能が示すAppleの音響哲学

AirPodsに「自分好みの音」を設定できるカスタムEQが、iOS 27でついて登場します。10年越しの機能追加ですが、その設計を見ると、Appleが何を優先してこの機能を作ったかが透けて見えます。


AppleはWWDC 2026基調講演で、AirPods向けのカスタムEQ機能をiOS 27で導入すると発表した。AirPodsが最初に登場した2016年12月以来、長年ユーザーから要望されていた機能がついて実現する形だ。

設定画面では「Custom」をタップすると周波数グラフ上にラインが表示され、各周波数帯域を上下に調整できる仕組みになっている。再生中の音の変化をリアルタイムの波形で視覚的に確認しながら操作できる。

これまでAirPodsの音響調整はアクセシビリティ機能(聴覚補助目的)やApple Musicの内蔵EQで部分的に対応可能だったが、前者は聴覚障害向けの設計であり、後者は他アプリやデバイス切り替え時に設定が引き継がれないという制限があった。今回の機能はAirPodsの設定画面に統合される形で、アプリを問わず機能することが示唆されている。

一方、現時点で公開されたスクリーンショットにはプリセット保存の機能が確認できず、詳細は明らかになっていない。また設定画面の説明文には「AirPodsはAppleが設計・設計したとおりに音楽・映像・通話を忠実に再生するよう作られている」と記載されており、カスタマイズをあまり推奨しないトーンも読み取れる。

From: 文献リンクAfter 10 years, AirPods are getting an easy custom EQ at last — it’s coming in iOS 27|TechRadar

【編集部解説】

iOS 27で追加されるAirPodsのカスタムEQは、ユーザーが長年求めてきた機能です。しかし発表時のスクリーンショットをよく見ると、Appleがこの機能をどう位置づけているかが透けて見えます。

設定画面の「Custom」をタップすると、周波数グラフ上にラインが表示され、低域・中域・高域の3帯域を上下に動かして音のバランスを変えられます。調整の結果は再生中の波形でリアルタイムに確認でき、変更を確定する前にプレビューも可能です。デフォルト設定に戻すオプションも用意されています。

対応するのは、AirPods Max 2・AirPods Pro 3・AirPods 4の3機種です。iOS 27・iPadOS 27・macOS 27の3プラットフォームで利用できます。

これまで手元にあった選択肢と比べると、前進は明確です。アクセシビリティ機能の聴覚補助EQは聴こえにくい帯域を補うためのもので、音楽の好みに合わせた微調整向きではありませんでした。Apple MusicにもEQ機能はありますが、他の音楽アプリには効かず、デバイスを切り替えると設定がリセットされます。今回の機能はAirPods本体の設定として保存されるため、アプリやデバイスをまたいで有効になります。

一方で、設定画面に書かれた説明文が目を引きます。「AirPodsはAppleが音楽・映像・通話を忠実に再生するよう設計されています。別のサウンドプロファイルをご希望の場合は、カスタマイズできます」という文言です。機能の入口にあえてこのような注釈を置くのは、Appleが「デフォルトのサウンドこそが正解」という立場を崩していないことを示していると読めます。

また、調整できる帯域が低域・中域・高域の3点のみという設計も示唆的です。一般的なオーディオ機器やサードパーティアプリで提供されるEQは数十バンドの細かい調整が可能なものも多く、3バンドはシンプルな設計です。使いやすさを優先した判断とも言えますが、本格的な音作りを求めるユーザーには物足りないかもしれません。

現時点で公開されたスクリーンショットには、プリセット保存のUIが確認できません。最終版で追加される可能性はありますが、もしプリセットがないまま正式リリースされれば、「AirPods ProとAirPods Maxで異なる調整を使い分ける」「特定の音楽ジャンル向けに設定を呼び出す」といった使い方はしにくくなります。

AirPodsのモデルごとに音の傾向は異なります。AirPods Maxシリーズは比較的フラットなサウンドを志向しており、AirPods Pro 3はそれより強調感のある音作りです。低域・中域・高域の3点調整でも、たとえばAirPods Maxに低音を少し足したい、AirPods Pro 3の高域をやや落ち着かせたい、といった基本的な調整には十分です。

正式リリースはiOS 27の公開とあわせて2026年秋の予定です。

【用語解説】

EQ(イコライザー)
音声信号の周波数帯域ごとに音量レベルを増減させる機能。低音(低域)・中音(中域)・高音(高域)それぞれを独立して調整でき、音の印象を変えることができる。ヘッドフォンやスピーカーの音質特性に合わせた補正や、音楽ジャンルに合わせた音作りに使われる。

Adaptive EQ(アダプティブEQ)
AirPodsに搭載されている自動音質調整機能。装着状態や耳の形状を内蔵マイクで継続的に計測し、音が最適に届くよう低・中域を自動補正する。今回のカスタムEQとは別の機能として引き続き動作する。

【参考リンク】

AirPods — Apple(公式)(外部)
Apple公式のAirPods製品ページ。AirPods 4・AirPods Pro 3・AirPods Max 2の各モデルのスペック、価格、機能比較が確認できる。

【参考記事】

AirPods are getting a customizable EQ in iOS 27|Engadget(外部)
対応モデル(AirPods Max 2・AirPods Pro 3・AirPods 4)と対応プラットフォーム(iOS/iPadOS/macOS 27)についてAppleから追加情報を得て更新した記事。

Apple announces custom AirPods EQ options coming with iOS 27|What Hi-Fi?(外部)
オーディオ専門メディアによる発表記事。EQがAirPods本体の設定として保存されアプリをまたいで有効になる点と、設定画面の説明文の意味について詳しく解説している。

【関連記事】

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昨年のWWDC 2025でAirPodsに追加された機能の解説記事です。毎年のWWDCで積み上げられてきたAirPodsの進化の文脈として参照できます。

【編集部後記】

「ようやく来た」という気持ちは、AirPodsユーザーなら多くの人が共有するものだと思います。10年という時間を考えると、この機能追加は小さいとは言えません。

ただ、設定画面に置かれた「AirPodsはデフォルトで忠実に再生するよう設計されている」という一文は、Appleが何かを手放したわけではないことを静かに主張しています。3バンドという設計も、「調整してほしくはないが、どうしてもというなら」という姿勢に見えなくもありません。

私たちがこの機能をどう使うか、そしてAppleが次のバージョンでどこまで広げるか。正式リリースで確かめてみましょう。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。