量子・DNA・アナログ、次世代コンピュータを一度に学べる無料イベントが6/18に渋谷スクランブルスクエアにて開催

[更新]2026年6月16日

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量子コンピュータ、DNAコンピュータ、量子アニーリング。次世代の計算基盤として注目される技術ですが、それぞれを専門家から直接聴ける機会はほとんどありません。2026年6月18日、渋谷で開催される無料イベントは、現役の研究者・実務家4名がこれらを一度に語るという、なかなか実現しない場です。


SHIBUYA QWSと東京科学大学が連携する公開プログラム「QWS ACADEMIA」の一環として、2026年6月18日(木)18時から20時、渋谷スクランブルスクエア15階のクロスパークにて「あつまれ!アナログコンピュータの世界」が開催される。参加費無料、定員60名。

イベントでは、DNA・量子といった物理現象を「計算」として捉えるアナログコンピューティングの多様な形態が紹介される。18時から19時の講演パートでは4名が登壇し、「いろいろなアナログコンピュータ」「DNAがコンピュータになる」「量子コンピュータのいま」「量子アニーリングの活用事例」と題した各15分の講演が行われる。登壇者は、東京科学大学・JAMSTEC・blueqat株式会社・ビネット&クラリティ合同会社に所属する研究者・実務家4名。19時以降はネットワーキングの時間が設けられている。

From: 文献リンクあつまれ!アナログコンピュータの世界 ―身近なモノで計算するヒント―(QWSアカデミア 東京科学大学)| Peatix

【編集部解説】

AIの台頭によって「デジタルコンピュータの時代」が加速する一方、「計算とは何か」を根本から問い直す動きが、研究の最前線では静かに広がっています。シリコンとデジタル信号だけが「計算」ではない、という考え方です。2026年6月18日(木)にSHIBUYA QWSで開催されるイベント「あつまれ!アナログコンピュータの世界」は、そうした問いの入口として、一般の方が無料で参加できる貴重な機会です。

DNAや量子も「コンピュータ」になる

今回登壇する研究者・実務家4名が取り上げるテーマは、「量子コンピュータ」「DNAコンピュータ」「量子アニーリング」そして「アナログコンピュータ全般」と、次世代の計算基盤が一堂に集まる内容になっています。

これほど多様な計算パラダイムを、一度のイベントでまとめて聴ける機会はほとんどありません。量子コンピュータについての講演や勉強会は増えてきましたが、DNAコンピュータを専門家から直接聴ける場、さらにアナログ計算の多様性を横断的に扱う場は、一般向けにはほぼ存在しないのが現状です。

DNAコンピューティングは、1994年にRSA暗号の開発者の一人であるレオナルド・エーデルマンが提唱した計算手法で、DNA分子が持つ塩基配列の結合特性を演算に用います。かつては「次世代の超並列計算機」として注目されましたが、現在の研究の焦点は変化しています。生体内で自律的に情報処理できる「ナノコンピュータ」として合成生物学と融合し、医療・診断への応用が期待される方向へと発展しているのです。今回登壇するJAMSTEC(海洋研究開発機構)の小宮健氏は、DNAの分子挙動を用いた単一分子レベルの論理演算装置を人工細胞膜上に構築するという成果を2025年6月に発表したばかりで、まさにその第一線に立つ研究者です。

量子アニーリングは、「組み合わせ最適化問題」に特化した量子計算の手法です。物流の経路最適化や金融ポートフォリオの構成、エネルギー管理など、現実のビジネス課題との親和性が高く、量子ゲート方式より先に実用化が進んだ分野として知られます。ただし、現状の量子アニーリングマシンが持つ量子ビット数は約5,000前後にとどまっており、大規模な実問題への適用にはまだ制約があります。登壇するblueqat株式会社の湊雄一郎氏は、量子コンピュータの実用化を産業界に橋渡しすることを事業の核としており、「できることとできないことの現在地」を現場の視点から語れる実務家です。

若手・現役の研究者が語る、という意味

このイベントのもう一つの特徴が、登壇者の顔ぶれです。4名のうち、東京科学大学修士2年の青木優氏は現役の大学院生。月の資源探査に向けた放射伝達モデルの研究開発を進めながら、ESAの木星探査ミッション(JUICE)のデータ解析にも関わるという経歴を持ちます。大学院生が「量子アニーリングの活用事例」として自分の研究を語るという構図は、完成した技術の解説とは異なり、現在進行形の問いと格闘する研究者の生の言葉を聞ける場になります。

ビネット&クラリティ合同会社の安田翔也氏も、東工大発ベンチャーの立ち上げと並行して量子アニーリングの講師や子ども向け科学教室の運営を手掛ける、実践と教育の両方を横断する人物です。研究室の奥にいる専門家ではなく、「伝えることを仕事にしている研究者」の話は、専門知識がなくても入りやすいという点で、このイベントの敷居を下げる役割を果たしそうです。

デジタルコンピュータの「外側」にある計算の世界を、研究者と雑談しながら知ることができる場は、特別な勉強をしてから行く必要はありません。むしろ「何も知らない」まま行って、「そもそも計算って何だろう」という問いを持ち帰るのに向いているイベントだと思います。

【参考記事】

分子で動く超小型コンピュータを実現:人工細胞膜上のナノポア統合型DNA演算デバイス|JAMSTEC(外部)
登壇者の小宮健氏が関わった2025年6月発表の研究成果。DNAの分子挙動を利用した単一分子論理演算装置を人工細胞膜上に構築し、リアルタイムな分子情報処理を実現したことを報告している。

量子コンピュータとイジングマシンの最新動向:社会実装に向けて|情報処理学会(外部)
量子アニーリングの商用機の現状を整理した2025年の学術論文。D-Wave Advantage 2(5640量子ビット)の現状や、国内外の開発動向を包括的に解説している。

シャープが疑似量子アニーリングコンピュータを開発する理由|SHARP Blog(外部)
量子アニーリングの現状課題(量子ビット数が実用規模に追いついていない問題)を、製造業の現場視点から解説した2025年の記事。「できること・できないこと」の現在地を理解するのに適した一次情報。

【参考リンク】

あつまれ!アナログコンピュータの世界 | Peatix(外部)
本イベントの申し込みページ。2026年6月18日(木)18:00〜20:00、SHIBUYA QWSクロスパーク開催。参加無料・定員60名。Peatixから申し込みができる。

SHIBUYA QWS(外部)
渋谷スクランブルスクエア15階の会員制施設。大学・研究者・企業が交差して新たな問いと価値を生み出すことを目指している。QWS ACADEMIAをはじめ多様なプログラムを主催。

blueqat株式会社(外部)
量子コンピュータ・AIに特化した東京発のベンチャー企業。量子アニーリングから量子ゲート方式まで幅広く開発・実用化支援を手掛ける。代表の湊雄一郎氏が今回のイベントに登壇する。

JAMSTEC 生命地球科学研究部門(外部)
国立研究開発法人海洋研究開発機構。登壇者の小宮健氏が所属する研究機関。DNAコンピューティング・分子ロボティクスの研究を推進している。

【用語解説】

アナログコンピュータ
物理的な連続量(電圧・流量・分子の振る舞いなど)を使って計算を行う仕組みの総称。0と1のデジタル信号ではなく、自然界の連続的な現象そのものを「計算」に活用する。DNAコンピュータや量子コンピュータもこの広い意味でのアナログ計算に含まれる。

DNAコンピューティング
DNA分子が持つ塩基(A・T・G・C)の結合特性を演算に用いる計算手法。1994年にレオナルド・エーデルマンが提唱。近年は超並列計算機としてより、生体内で自律的に情報処理できるナノコンピュータとして医療・診断分野への応用研究が進んでいる。

量子アニーリング
量子力学の「トンネル効果」を利用して、組み合わせ最適化問題の解を効率よく探索する計算手法。物流の経路最適化・金融ポートフォリオの構成・シフトスケジューリングなど、現実のビジネス課題への応用が先行して進んでいる。量子ゲート方式とは異なり、汎用計算ではなく特定の問題に特化している。

量子ゲート方式
量子ビット(qubit)と量子ゲートを使って、あらゆる計算を行うことを目指す汎用型の量子コンピュータ。GoogleやIBMが開発を主導。量子アニーリングより応用範囲は広いが、エラー率の問題などから大規模な実用化は2030〜40年代と予測されている。

SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)
2019年11月開業の渋谷スクランブルスクエア15階にある会員制施設。SHIBUYA QWS Innovation協議会が運営。大学・企業・個人が交差し、社会価値につながるプロジェクトを生み出すことを目的としている。

QWS ACADEMIA
SHIBUYA QWSが大学と連携して実施する公開プログラム。知識の一方向的な伝達ではなく、双方向の刺激と対話を通じて「未知の問い」と出会うことを目的としている。

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野村貴之
大学院を修了してからも細々と研究をさせていただいております。理学が専攻ですが、哲学や西洋美術が好きです。日本量子コンピューティング協会にて量子エンジニア認定試験の解説記事の執筆とかしています。寄稿や出版のお問い合わせはinnovaTopiaのお問い合わせフォームからお願いします(大歓迎です)。