中国の超大型ロケット長征9号、再使用型への転換を発表 – 野心的計画の全容

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Last Updated on 2024-11-06 07:39 by admin

中国が新型ロケット「長征9号」の最新設計を公開した。2024年11月5日、広東省珠海市で開催された第14回中国国際航空宇宙博覧会での発表によると、この設計はSpaceXのStarshipとほぼ同じ構成を採用している。

基本設計は全長110メートル、直径10メートル、打ち上げ時重量4,000トン、推力6,000トンで、打ち上げ能力は低軌道で150トン、月遷移軌道で50トンを実現する。第1段には30基のYF-215メタンエンジンを搭載し、各エンジンの推力は約200トンとなる。

開発は2段階で進められ、2030年までに第1段のみ再使用可能な3段式ロケット、2040年までに完全再使用型2段式ロケットの実現を目指している。

from:China’s New Heavy Lift Rocket Looks a Whole Lot Like SpaceX’s Starship

【編集部解説】

中国の宇宙開発は、これまで独自路線を保ちながら着実な発展を遂げてきましたが、今回のSpaceX Starshipに酷似した設計採用は、グローバルな宇宙開発の潮流が「再使用型」へと確実にシフトしていることを示しています。

特筆すべきは、この設計変更が単なる模倣ではなく、中国の宇宙開発戦略の本質的な転換を示している点です。従来の使い捨て型ロケット「長征」シリーズから、完全再使用型への移行は、コスト効率と環境負荷の両面で大きな進歩といえます。

技術面では、YF-215メタンエンジンの採用が注目されます。メタンエンジンは、従来の液体水素やケロシンと比べて取り扱いが容易で、火星での燃料製造も視野に入れやすいという利点があります。

また、打ち上げ能力については、低軌道に150トン、月遷移軌道に50トン、火星遷移軌道に35トンという仕様が示されており、これは将来の宇宙探査に十分な能力といえます。

興味深いのは、中国が国家主導の宇宙開発と並行して、民間企業の参入も積極的に促進している点です。CosmoleapなどのスタートアップがSpaceX型の技術を採用しようとしている背景には、国家戦略としての商業宇宙産業の育成があります。

しかし、課題も存在します。2033年という初飛行目標は、現在のSpaceXとの技術格差を考えると、かなり慎重な設定といえます。この期間をどのように活用し、独自の技術革新を実現できるかが鍵となるでしょう。

さらに注目すべきは、この動きが単なるロケット開発の枠を超えて、国際月面研究ステーション(ILRS)計画や宇宙太陽光発電所の建設など、より広範な宇宙開発戦略の一部として位置づけられている点です。

このような包括的なアプローチは、将来の宇宙開発における中国の存在感を大きく高める可能性があります。特に、完全再使用型ロケットの実現は、宇宙への持続的なアクセスを可能にし、月面基地建設や火星探査といった野心的な計画の実現可能性を高めることになるでしょう。

この動きを単なる「模倣」と片付けるのではなく、グローバルな宇宙開発の新たな競争フェーズの始まりとして注目していきたいと考えています。

【参考情報】

主要スペック比較表

項目長征9号Starship
全長110m120m
推力6,000t7,590t
LEO積載量150t100-150t
初飛行目標2030年運用中
主要スペック比較表

※LEO積載量とは、ロケットが地球低軌道(高度2,000km以下)まで運搬できる最大の重量のことです

【用語解説】

  • メタンエンジン
    液化天然ガス(メタン)を燃料とする次世代ロケットエンジン。従来の燃料より取り扱いが容易で、火星でも製造可能という利点がある。
  • 国際月面研究ステーション(ILRS)
    中国とロシアが主導する月面基地建設計画。2036年の運用開始を目指している。

【参考リンク】

  1. 中国国家航天局(CNSA)公式サイト(外部)
    中国の宇宙開発を統括する政府機関。長征シリーズの開発情報や最新の宇宙開発動向を公開
  2. SpaceX公式サイト(外部)
    Starshipの開発元、民間宇宙企業の先駆者

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