SpaceX社の超大型宇宙船Starshipの7回目となる試験飛行が2025年1月17日に実施された。
主な事実は以下の通り
- 打ち上げ場所:テキサス州ボカチカにあるSpaceX社のStarbase
- 飛行時間:約8分30秒(予定は1時間6分)
- ミッション内容:
- 次世代Starlink衛星を模した10個のダミー衛星の放出試験
- インド洋への着水を目指した軌道飛行
機体の主な改良点
- 前方フラップの小型化
- 推進剤容量2%増加
- アビオニクスの刷新
- 二重構造の新型耐熱シールド
- 30台の観測カメラ搭載
結果
- Super Heavyブースター(第一段)
- 33基のRaptorエンジンが正常に作動
- 着陸時の捕捉に成功(史上2回目)
- 初めて使用済みエンジンを搭載
- Starship(第二段)
- 6基のエンジンは正常に点火
- 飛行開始約8分30秒後に機体後部で火災が発生
- 大西洋上の指定危険区域内で空中分解
これまでのStarship試験飛行は計7回実施され、着陸成功は3回となっている(最後の失敗は2024年3月のフライト3)。
from:SpaceX resets ‘Days Since Starship Exploded’ counter to zero
【編集部解説】
今回の試験では、これまでにない重要な技術的進歩が見られました。特筆すべきは、Super Heavyブースターの着陸成功です。高さ70メートルもの巨大なロケットを、発射台の「箸」と呼ばれる機械アームで空中捕捉することに成功しました。この技術は、将来の完全再利用型ロケットの実現に向けた重要なマイルストーンとなります。
Super Heavyブースターの着陸成功は、まるで鉛筆を立てて投げ、そのまま立った状態でキャッチするような高難度の技術です。また、今回初めて使用済みエンジンを再利用した点も画期的です。これは、SpaceXが目指す「完全再利用型ロケット」の実現に向けた重要な一歩といえます。
事故の分析と今後の展望
上段のStarshipが失われた原因について、イーロン・マスク氏は「エンジンファイアウォール上部の空洞でO2/燃料漏れが発生し、排気能力を超える圧力が生じた」と説明しています。この問題に対して、漏れ検査の強化、消火システムの追加、排気エリアの拡大などの対策が検討されています。
興味深いのは、この事故による航空交通への影響です。カリブ海上空で破片が確認され、複数の民間航空機が迂回を余儀なくされました。これは、大型ロケットの試験飛行が民間航空に与える影響を考える重要な事例となりました。
産業への影響
今回の試験飛行は、宇宙開発における「高速な開発サイクル」の重要性を示しています。SpaceXはすでに次回の打ち上げに向けた改良型のStarshipを準備していると発表しており、失敗を恐れず、素早く改善を重ねていく姿勢を示しています。
特に注目すべきは、今回初めて試みられた模擬Starlink衛星の展開試験です。これは次世代Starlink衛星の打ち上げ能力の実証を目指したものでした。残念ながら実施には至りませんでしたが、将来の衛星インターネット事業の展開に向けた重要な試みでした。
将来展望
Starshipの開発は、NASAのアルテミス計画における月面着陸船としての役割も担っています。2027年に予定される有人月面着陸に向けて、今回の試験で得られたデータは貴重な知見となるでしょう。
また、マスク氏が掲げる2026年の火星への無人飛行という野心的な目標に向けて、今回の試験結果をどのように活かしていくのか、今後の開発の進展が注目されます。