Last Updated on 2025-02-16 00:07 by admin
日本の宇宙開発企業ispace(アイスペース)は、2025年2月15日午前7時43分(日本時間)、商業用月着陸船「RESILIENCE(レジリエンス)」による史上初の民間月フライバイに成功した。
RESILIENCEランダーは月表面から高度約8,400kmの地点を通過し、高度14,439kmから月の写真撮影に成功した。これにより、ミッション2の10段階のマイルストーンのうち、Success 5を達成した。
このミッション2は2025年1月15日15時11分に米国フロリダ州のケネディ宇宙センターからSpaceX社のFalcon 9ロケットで打ち上げられ、同日16時44分にロケットから分離された。
RESILIENCEランダーには6つのペイロードを搭載している
- 高砂熱学工業の月面用水電解装置
- ユーグレナ社の食料生産実験モジュール
- 台湾国立中央大学の深宇宙放射線プローブ
- バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」
- ispace EUROPEのマイクロローバー「TENACIOUS」
- スウェーデンのアーティストによる「ムーンハウス」
今後、RESILIENCEランダーは低エネルギー遷移軌道を使用して深宇宙を航行し、地球から約110万キロメートルの距離を移動して、2025年5月初旬に月重力圏への到達を目指す。
本ミッションは、ispaceが実施する民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の一環で、三井住友銀行がオフィシャルパートナーとして参画している。
from:ispace、ミッション2マイルストーンSuccess 5「月フライバイ」に成功!
【編集部解説】
民間企業による月フライバイの成功は、宇宙開発の新時代を象徴する出来事です。ispaceのRESILIENCEランダーは、月表面からわずか8,400kmの距離まで接近し、高度14,439kmから鮮明な月の写真撮影に成功しました。
この月フライバイは単なる通過ではありません。低エネルギー遷移軌道という効率的な航行方式を実現するための重要なステップとなります。この軌道を利用することで、従来の直接的なアプローチと比べて、はるかに少ない燃料で月への到達が可能になります。
技術的チャレンジ
月フライバイの成功には、極めて高度な軌道制御技術が必要でした。目標通過点に対して数十キロメートルの精度で通過させるため、精密な軌道計画と運用が求められました。
特筆すべきは、この技術がispaceの前回のミッション1での経験を活かして実現されたという点です。失敗から学び、それを次の成功につなげる企業文化が実を結んだ形です。
今後の展望
RESILIENCEランダーは今後、地球から約110万キロメートルという深宇宙まで航行し、2025年5月初旬に月への軌道投入を目指します。
搭載されている6つのペイロードには、月面での水電解や食料生産など、将来の月面活動に不可欠な実験機器が含まれています。これらの実験が成功すれば、月での持続可能な人類の活動に向けた大きな一歩となるでしょう。
産業への影響
民間企業による月面ビジネスの実現可能性が、より現実的なものとなってきています。ispaceの成功は、宇宙開発における官民連携の新しいモデルを示すものとなるかもしれません。
ただし、月面開発には技術的な課題も残されています。特に月の南極地域では、独特の照明条件により視覚的な課題が存在することが指摘されています。これらの課題解決も、今後の月面開発の重要なポイントとなるでしょう。