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Amazon衛星インターネット事業が本格始動 |Atlas Vで衛星27基追加打ち上げ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Amazonは2025年6月23日午前6時54分(東部時間)、フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地からUnited Launch Alliance(ULA)のAtlas Vロケットで Project Kuiper衛星27基を低軌道に打ち上げた。

この打ち上げはKuiper 2と呼ばれ、Amazonの運用衛星総数は54基となった。1週間前にロケットブースターの問題により延期されていた。

Project KuiperはAmazonが100億ドル以上を投資する衛星インターネット事業で、最終的に3,236基の衛星で構成される予定である。SpaceXのStarlinkに対抗するサービスとして位置づけられている。Amazonは連邦通信委員会(FCC)の規則により2026年半ばまでに計画衛星の半数である1,618基を打ち上げる必要がある。

Amazonは今後約80回の打ち上げを予定しており、Atlas V 8回、後継機Vulcan Centaur 38回のほか、Blue OriginやSpaceX Falcon 9も使用する。ワシントン州カークランドの工場では1日5基のペースで衛星を製造することができる。

From: 文献リンクAmazon Doubles Project Kuiper Satellite Fleet in Race to Catch Up to SpaceX’s Starlink

【編集部解説】

Amazon Project Kuiperの第2回打ち上げ成功は、宇宙インターネット競争における重要な転換点を示しています。この打ち上げにより、Amazonの衛星総数は54基となりましたが、SpaceXのStarlinkが既に大きなアドバンテージを持っている現状を考えると、追いつくためには相当な加速が必要です。

注目すべきは、AmazonがSpaceXとは異なる戦略を採用している点です。Project Kuiperは特に従来のプロバイダーがサービスを提供していない地域や十分なサービスを受けられない地域をターゲットとしています。これは、AWS(Amazon Web Services)との連携によるエンタープライズ向けサービスへの展開を見据えた戦略的な差別化といえるでしょう。

技術的な側面では、Project Kuiperが光学衛星間リンク(OISL)技術を採用し、衛星同士がレーザー光で直接通信することで、地上局を経由せずにデータ転送を行う設計となっています。これにより、通信の遅延を大幅に削減し、より効率的なネットワーク運用が可能になります。

製造面では、ワシントン州カークランドの工場で1日5基という生産能力を確保していますが、2026年半ばまでに1,618基(全体の半数)を打ち上げるFCC規制をクリアするには、打ち上げ頻度の大幅な向上が不可欠です。Amazonは約80回の打ち上げを計画しており、ULA、Blue Origin、さらには競合のSpaceXまで含む複数の打ち上げプロバイダーと契約を結んでいます。

この競争が激化することで、衛星インターネットサービスの価格低下と品質向上が期待される一方、宇宙デブリの増加や軌道上の交通管制といった新たな課題も浮上しています。特に、両社合わせて数千基の衛星が軌道上に展開されることで、天体観測への影響や衛星同士の衝突リスクも懸念されています。

長期的には、この競争により全世界のデジタルデバイド解消が加速する可能性があります。特に、従来の地上インフラでは採算が取れなかった僻地や発展途上国でのインターネット普及が進むことで、教育、医療、経済活動の機会均等化が実現するかもしれません。

【用語解説】

低軌道(LEO: Low Earth Orbit):地球表面から約180km〜2,000kmの高度にある軌道。静止軌道(約36,000km)より大幅に低い高度で、信号の遅延が少なく、高速通信に適している。

衛星コンステレーション:複数の小型衛星を協調して運用するシステム。一つの大型衛星ではなく、多数の小型衛星でネットワークを構築することで、広範囲をカバーし冗長性も確保できる。

光学衛星間リンク(OISL):レーザー光を使って衛星同士が直接通信する技術。地上局を経由せずにデータを転送できるため、通信の遅延を減らし、効率を高められる。

FCC(連邦通信委員会):アメリカの通信規制機関で、衛星インターネットサービスの運用許可や配備期限を定める権限を持つ。

【参考リンク】

Project Kuiper – About Amazon(外部)
Amazonの衛星インターネット事業Project Kuiperの公式サイト

United Launch Alliance(ULA)(外部)
Atlas VやVulcan Centaurロケットによる打ち上げサービス提供企業

Project Kuiper採用サイト(外部)
Project Kuiperチームの採用情報と募集職種を掲載

【参考記事】

Atlas V rocket launches 2nd batch of satellites for Amazon’s Project Kuiper(外部)
Atlas V 551ロケットによるKA-02ミッションの技術的詳細を報じた記事

Project Kuiper progress report – About Amazon(外部)
Amazon公式によるKuiper 2ミッションの詳細情報と今後の計画

【編集部後記】

宇宙インターネット競争が本格化する中、私たちの生活にどのような変化が訪れるでしょうか。Project KuiperとStarlinkの競争により、これまでインターネット接続が困難だった地域でも高速通信が可能になる未来が見えてきました。みなさんは、衛星インターネットをどのような場面で活用したいと思いますか?災害時の通信手段として、あるいは旅行先での仕事環境として、その可能性は無限大です。この技術革新が私たちの働き方や暮らし方をどう変えていくのか、一緒に注目していきませんか。

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TaTsu
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