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SpaceX、米軍気象衛星WSF-M2打ち上げで117億円契約獲得 2027年実施予定

SpaceX、米軍気象衛星WSF-M2打ち上げで117億円契約獲得 2027年実施予定 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-30 07:06 by admin

SpaceXが2025年6月27日、米軍の気象衛星「Weather System Follow-on – Microwave Space Vehicle 2(WSF-M2)」の打ち上げ契約を8,161万3,951ドル(約118億円)で獲得した。

この契約は国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)フェーズ3プログラムの一環で、宇宙システム司令部がUSSF-178ミッションとして発注した。WSF-M2は2027年度前半に打ち上げ予定で、WSF-Mシリーズの2番目で最後の衛星となる。

1番目のWSF-M1は2024年4月11日にバンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げ済みである。両衛星は太陽同期軌道で運用され、熱帯低気圧の強度測定、嵐の追跡、宇宙天気の監視を行う。海面ベクトル風の測定機能を持ち、海氷、土壌水分、積雪深のデータも収集する。SpaceXはNSSLフェーズ3で3回連続の受注を達成している。同時にBLAZE-2ペイロードとして各防衛機関開発の実験的小型衛星も搭載予定である。

From: 文献リンクSpaceX Secures $81.6 Million Deal to Launch Critical U.S. Weather Satellite

【編集部解説】

今回のSpaceXによる8,161万ドルの軍事衛星打ち上げ契約獲得は、単なる商業的成功を超えた戦略的な意味を持っています。この契約は国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)フェーズ3プログラムの一環であり、SpaceXが軍事宇宙分野で3回連続の受注を達成したことで、同社の信頼性と技術力が改めて証明されました。

WSF-M2衛星が担う役割は、従来の気象観測の枠を大きく超えています。Ball Aerospace製のマイクロ波イメージャー(MWI)による海面ベクトル風の測定、政府製の高エネルギー荷電粒子(ECP)センサーによる宇宙天気監視、さらには海氷や土壌水分といった戦略的環境データの収集まで、多層的な情報収集システムとして機能します。

特に注目すべきは、太陽同期軌道での運用により継続的な地球規模監視が可能になることです。これにより軍事作戦の計画立案から災害対応まで、リアルタイムでの意思決定支援が飛躍的に向上します。

技術的な観点では、WSF-M1が2024年4月に成功裏に打ち上げられ、現在運用中であることが重要です。初号機の実績により、2027年のWSF-M2打ち上げへの信頼性も高まっています。

一方で、軍事衛星の高度化は宇宙の軍事化加速という側面も持ちます。気象データは軍事戦略上極めて重要な情報であり、これらの衛星が攻撃対象となるリスクも考慮する必要があります。

長期的には、BLAZE-2ペイロードによる小型衛星の同時打ち上げが示すように、一回の打ち上げで複数の軍事ミッションを効率的に実現する「マルチマニフェスト」アプローチが標準化される可能性があります。これは宇宙アクセスのコスト削減と迅速な展開を両立する新たなモデルとして、今後の宇宙開発に大きな影響を与えるでしょう。

【用語解説】

NSSL(National Security Space Launch)
米国宇宙軍が管理する国家安全保障宇宙打ち上げプログラム。米国防総省や政府機関のペイロードの宇宙アクセスを保証する目的で運用されている。

WSF-M(Weather System Follow-on Microwave)
米国防総省の次世代運用環境衛星システム。Ball Aerospace製マイクロ波イメージング放射計と政府製高エネルギー荷電粒子センサーを搭載し、太陽同期軌道で運用される。

太陽同期軌道
地球の自転と同期して太陽に対する相対位置を一定に保つ軌道。同じ地点を常に同じ時刻に通過するため、継続的な観測に適している。

USSF-178ミッション
米国宇宙軍が実施するWSF-M2衛星の打ち上げミッション名。国家安全保障宇宙打ち上げプログラムの一環として実施される。

BLAZE-2ペイロード
WSF-M2と同時に打ち上げられる実験的小型衛星群。各防衛機関が開発した研究開発用の小型衛星を搭載する。

DMSP(Defense Meteorological Satellite Program)
1960年代から運用されている米軍の気象衛星プログラム。WSF-Mはこのシステムの一部を代替する次世代システムである。

【参考リンク】

SpaceX公式サイト(外部)
先進的なロケットと宇宙船の設計・製造・打ち上げを行う民間宇宙企業。2002年設立で宇宙技術の革新を目指している。

Ball Aerospace公式サイト(外部)
WSF-M衛星の製造を担当する航空宇宙企業。現在はBAE Systemsの子会社として運営されている。

米国宇宙軍宇宙システム司令部(外部)
宇宙軍の宇宙システム開発・取得・装備・展開・維持を担当する司令部。WSF-Mプログラムの管理機関。

【参考記事】

Space Systems Command Set to Strengthen Operational Environment with Enhanced Global Weather Sensing(外部)
2025年6月27日の宇宙システム司令部公式発表。USSF-178ミッションの詳細と契約金額8,161万3,951ドルを正式発表。

SpaceX Launches Next-Generation Environmental Monitoring Satellite to Orbit(外部)
2024年4月11日のWSF-M1打ち上げ成功を詳細に報じる記事。WSF-M2の2028年打ち上げ予定についても言及。

Space Force launches weather satellite to replace 1960s-era spacecraft(外部)
WSF-Mプログラムの背景とDMSP代替の重要性を解説。60年間運用されてきた気象衛星システムの近代化について詳述。

【編集部後記】

今回のSpaceXの軍事衛星打ち上げ契約は、宇宙技術が国家安全保障の最前線でどのように活用されているかを示す興味深い事例でした。

皆さんは、気象データが軍事戦略にどれほど重要な役割を果たしているか考えたことはありますか?また、民間企業が国防分野で果たす役割の拡大について、どのような可能性やリスクを感じられるでしょうか?宇宙開発の商業化が進む中で、技術革新と安全保障のバランスについて、ぜひ皆さんのご意見もお聞かせください。

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TaTsu
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