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SpAItial、「10分でゲーム制作」実現する次世代3D-AI技術に巨額投資

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-28 17:49 by admin

ヨーロッパの著名なAI研究者マティアス・ニースナーが、テキストプロンプトから3D環境を生成するAI技術の開発を目指すスタートアップ「SpAItial」を設立し、1300万ドル(約18億円)のシード資金調達を完了した。

ミュンヘン工科大学でビジュアルコンピューティング・AI研究室を率いるマティアス・ニースナー教授は、5月26日(現地時間、日本時間5月27日)にTechCrunchが報じたところによると、起業家としての休職を取り、SpAItialという名前のスタートアップを2024年に設立した。ニースナーは21億ドル(約3150億円)の評価額を持つAIアバター企業Synthesiaの共同創設者でもある。

今回の1300万ドルのシード資金調達ラウンドは、UiPathやPeakGamesへの投資で知られるヨーロッパの著名な初期段階投資家Earlybird Venture Capitalが主導した。Speedinvestも参加し、Black Forest LabsのCEOロビン・ロンバッハ、SynthesiaのCEOビクター・リパルベリなど複数の著名なエンジェル投資家も出資に参加している。

SpAItialは、テキストプロンプトから完全でインタラクティブなフォトリアリスティック3D環境を生成できるSpatial Foundation Models(SFM)の開発を進めている。現在のAIモデルがピクセル単位で画像を生成するのに対し、SpAItialのSFMは3D構造上で直接動作し、仮想環境と物理環境を前例のない精度とリアリズムで橋渡しすることを可能にする。

技術チームには、GoogleのProject Starlineや3D Shopping、3Dテレカンファレンシングプラットフォーム「Beam」に貢献したリカルド・マルティン=ブルアラ、Metaでテキストから3Dアセット生成プロジェクトを6年間主導したデビッド・ノボトニー、元McKinsey・Cazoo幹部のルーク・ロジャースが参加している。

SpAItialは、エンターテインメント用途をターゲットに2700万ドルを調達したOdysseyや、AI先駆者フェイフェイ・リーによって設立され10億ドル以上の評価額を持つWorld Labsなどと競合している。同社は現在、テキストプロンプトから3Dルームの作成を実証するティーザー動画以外に限定的な提供物しか持たないが、初期デモでは単一の画像からフォトリアリスティックな3D世界を生成できることを示している。

ニースナーは「10歳の子供がテキストを入力して、わずか10分で自分のビデオゲームを作成できるようにする」ことを「聖杯」と表現し、単なる3D生成ではなく、現実世界のように振る舞うインタラクティブな環境の実現を目指している。調達した資金は、AIエキスパート、グラフィックス、3Dシステムの専門家でチームを拡大し、第一世代のSpatial Foundation Modelsの開発を加速するために使用される予定である。

from:
 - innovaTopia - (イノベトピア)One of Europe’s top AI researchers raised a $13M seed to crack the ‘holy grail’ of models | TechCrunch

【編集部解説】

SpAItialが調達した1300万ドルのシード資金と、テキストからフォトリアリスティックな3D環境を自動生成するAI技術の開発は、AI業界の中でも特に注目度が高い事案です。現時点で報じられている内容は、TechCrunchやSifted、TechFundingNewsなど複数の欧米テック系メディアでほぼ一致しており、資金調達額や創業メンバー、技術的な方向性に関して大きな誤報や誇張は見られません。

この分野の背景には、従来の画像生成AI(『Stable Diffusion』や『DALL-E』など)が2D画像までしか扱えなかったという限界があります。これに対してSpAItialは、3D空間そのものを理解し、現実世界の物理法則やインタラクションを再現できる「Spatial Foundation Model(SFM)」の開発を目指しています。これにより、テキストプロンプト一つで、まるで現実世界のように物体同士が影響し合う仮想空間を自動生成できるようになる可能性があります。

この技術が実現すれば、ゲームや映画といったエンターテインメント分野だけでなく、建築設計や都市計画、デジタルツイン、ロボティクス、eコマース、教育など、幅広い産業で3Dデータ活用のハードルが劇的に下がります。特に、従来は専門知識がなければ扱えなかった3Dモデリングやシミュレーションが、一般の開発者や非エンジニアでも利用できるようになる点は、産業構造そのものを変えうるインパクトがあります。

一方で、現状の課題としては「高品質な3Dデータの不足」や「物理的なリアリズムの再現性」、「大規模な計算資源の確保」などが挙げられます。また、AIが生成した3D環境の著作権や倫理、リアルとバーチャルの区別が曖昧になることによる社会的リスク、産業ごとの規制対応など、今後議論が必要なテーマも多く残されています。

競合としては、同じくテキストから3D生成を目指す『Odyssey』や、AI研究の第一人者フェイフェイ・リーが設立した『World Labs』、さらにゲームプラットフォーム『Roblox』などが挙げられますが、SpAItialは「物理法則に基づいたインタラクション」や「APIによる外部開発者への開放」などで独自性を打ち出しています。

長期的には、AIによる3D空間生成が進化することで、仮想世界と現実世界の融合が加速し、デジタルツインやメタバース、次世代ロボットの知能化など、社会全体のデジタル化が一段と進む可能性があります。今後、SpAItialの技術がどこまで実用化され、どの産業でブレイクスルーを生み出すのか、引き続き注目が必要です。

【用語解説】

Spatial Foundation Model(SFM):テキストプロンプトや画像から3D空間を直接生成するAIモデル。従来の2D画像生成とは異なり、3次元構造上で動作し、物理法則やインタラクションを理解できる。時空間的に一貫性のある環境を生成可能。

フォトリアリスティック:写真のようにリアルで自然な画質や質感を持つ3Dグラフィックスや映像のこと。現実と見分けがつかないレベルの視覚的品質を指す。

デジタルツイン:現実世界の物理的なオブジェクトやシステムをデジタル空間で完全に再現したもの。IoTセンサーなどからリアルタイムデータを取得し、仮想空間でシミュレーションを行う技術。

CADシステム:Computer-Aided Design(コンピュータ支援設計)の略。建築、機械、電子回路などの設計を支援するソフトウェアシステム。

ファウンデーションモデル:大規模なデータセットで事前学習された汎用的なAIモデル。様々な下流タスクに転用・応用できる基盤となるモデル。

シード資金調達:スタートアップの初期段階で行われる資金調達ラウンド。製品開発やチーム拡大のための資金を確保する段階。

【参考リンク】

Synthesia(外部)AIアバター生成技術を提供するロンドン拠点のスタートアップ。テキストから人間のようなAIアバターが話す動画を自動生成できる。評価額21億ドル。

Earlybird Venture Capital(外部)1997年設立のヨーロッパ有数のベンチャーキャピタル。UiPathやPeakGamesなどへの投資実績を持つ。総運用資産25億ユーロ。

ミュンヘン工科大学(TUM)(外部)ドイツの名門工科大学。ニースナー教授が所属するVisual Computing Labでは3D技術とAIの研究を行っている。

World Labs(外部)AI研究者フェイフェイ・リーが2024年に設立したSpatial AI企業。2億3000万ドルを調達し、3D世界生成技術を開発している。

Speedinvest(外部)ヨーロッパを拠点とするベンチャーキャピタル。初期段階のテクノロジー企業への投資を専門とする。

Black Forest Labs(外部)画像・動画生成AI技術を開発するドイツのスタートアップ。CEOのロビン・ロンバッハがSpAItialのエンジェル投資家として参加。

【参考動画】

【参考記事】

 - innovaTopia - (イノベトピア)SpAItial emerges from stealth with $13M Seed for AI-native 3D applications | Tech.eu

 - innovaTopia - (イノベトピア)Synthesia cofounder raises $13m seed for new startup SpAItial | Sifted

 - innovaTopia - (イノベトピア)SpAItial, led by Synthesia co-founder, launches with $13M | TechFunding News

【編集部後記】

画像生成と動画生成AIの発展は加速している印象があったのですが、3D空間の生成AIに関してはNVIDIAのCosmosの話題が去年あたりに出て以降、あまりニュース自体聞くことがなかったのですが、新しいニュースを聞けて嬉しいです。SFMがゲーム制作にどのような影響を与えるのかが楽しみです。インディーズゲーム業界にも新たな影響を与えてくれそうです!

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乗杉 海
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