Last Updated on 2025-04-24 16:55 by admin
2025年4月23日、EUの執行機関である欧州委員会は、AppleとMetaに対し、デジタル市場法(DMA)違反を理由に合計7億ユーロ(約1,130億円)の制裁金を科した。Appleには5億ユーロ(約810億円)、Metaには2億ユーロ(約324億円)が課された。
Appleは、App Storeを通じてアプリを配信する開発者が、ユーザーに対してアプリストア外での安価な購入方法やオファーを案内することを妨げていたと認定された。これにより消費者がより安価な選択肢を知る機会が奪われていた。
Metaは、2023年11月からFacebookおよびInstagramのEUユーザーに対し、「個人情報の広告利用に同意する」か「広告なしの有料プラン(月額10ユーロ以上)」を選ぶよう強制していたが、この「同意か支払いか」モデルがユーザーに十分な選択肢を与えていないと判断された。
両社には60日以内の是正措置が命じられており、対応が不十分な場合は追加の制裁金が科される可能性がある。今回の措置は、EUが巨大テック企業の市場支配力を抑制し、公正な競争環境を確保するための取り組みの一環であり、米国とEU間の経済摩擦が高まる中で発表された。
from:Apple, Meta Fined by EU, Ordered to Comply With Tech Competition Rules
【編集部解説】
今回のEUによるAppleとMetaへの制裁は、DMA施行後に初めて本格的に適用された象徴的な事例です。DMAは、巨大テック企業が市場で持つ支配力を抑制し、公正な競争と消費者の利益を守ることを目的に制定されました。今回の制裁は、単なる罰金にとどまらず、今後のデジタル経済のルール作りに大きな影響を与えるものです。
Appleに対する指摘は、App Storeを利用する開発者がユーザーに対して、他の安価な決済手段やオファーを案内することを制限していた点です。これは、消費者がより安い選択肢を知る機会を奪うものであり、EUは競争の阻害と判断しました。これまでAppleは自社のエコシステムを守るためにこうした制限を設けてきましたが、今後は開発者や消費者にとってよりオープンな環境が求められることになります。
Metaについては、FacebookやInstagramのEUユーザーに対して、「個人情報の広告利用に同意する」か「広告なしの有料プラン(月額10ユーロ以上)」を選ばせる「同意か支払いか」モデルが問題となりました。この仕組みは一見ユーザーに選択肢を与えているように見えますが、EUは「十分な選択肢とは言えない」と判断しました。特に、個人情報の取り扱いに関しては、欧州で強いプライバシー保護意識があるため、今後も同様のモデルが厳しく問われる可能性があります。
今回の制裁は、欧州委員会がデジタル市場での公正な競争を本気で実現しようとしている姿勢の表れです。AppleやMetaのような巨大企業が市場で独占的な地位を利用して消費者や開発者に不利益を与えることを防ぐため、今後も厳しい監視と規制が続くでしょう。一方で、企業側はコンプライアンス対応のコスト増や、ビジネスモデルの見直しを迫られることになり、特に中小規模のデベロッパーにとっては新たな機会と課題が生まれる可能性があります。
また、この動きは米国とEU間の経済摩擦をさらに高める要因にもなっています。米国側はEUの規制を「米企業狙い撃ち」と批判しており、今後の国際的なテック規制のあり方にも注目が集まります。長期的には、こうした規制強化がイノベーションを促進するのか、それとも抑制するのか、欧州だけでなく世界中のテクノロジー業界が注視しています。
【用語解説】
欧州委員会(European Commission):
EUの執行機関。EUの法律提案や施行、競争政策の監督などを担う。ブリュッセルに本部がある。
デジタル市場法(DMA:Digital Markets Act):
EUが2022年に制定し、2024年に施行した法律。巨大テック企業(ゲートキーパー)が市場支配力を乱用することを防ぎ、公正な競争を確保することを目的とする。
【参考リンク】
Apple(日本公式サイト)(外部)
iPhoneやiPad、MacなどApple製品の情報や購入、サポート情報を掲載。
Meta(企業公式サイト)(外部)
Meta Platformsの公式企業サイト。事業内容や最新ニュース、サービス情報を掲載。
Digital Markets Act(DMA)公式説明(外部)
EUのデジタル市場法(DMA)に関する公式情報ページ。法律の概要や目的を解説。