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6月3日【今日は何の日?】「なんもしない日」ー社会の変革が生んだ新時代の働き方

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Last Updated on 2025-06-03 12:48 by admin

なぜ今日は「なんもしない日」なのでしょうか

この日が特別な意味を持つようになったきっかけは、森本祥司さんが2018年に始めた「レンタルなんもしない人」というサービスでした
私も最初にこのサービスを知った時は「え、本当に何もしないの?」と驚いたのですが、よく考えてみると、これは現代社会の深いニーズに応えた画期的なアイデアだったんですね。

森本さんは文字通り「なんもしない」ことを商品として提供し、SNSを通じて依頼を受け付けるという発想で多くの人の注目を集めました。一見すると不思議なサービスに思えますが、実は現代社会の孤独感や、誰かがそばにいてくれるだけで安心できるという人間の根本的な欲求に応えたものだったのです。私は、森本さんが「ただそこにいるだけ」という価値を商品化したことで、従来の労働観に新しい視点をもたらしたと感じています。

SNS時代の新しいレンタルサービス

森本さんのように、SNSを活用して独創的なサービスを展開する方々が次々と現れているのを見ていると、時代の変化を実感します。

例えば、プロ奢られヤーさんは、奢られることを専門とするインフルエンサーとして活動されており、企業との協業や書籍出版など、「奢られる」という行為から多角的なビジネスを展開されています。私は彼の存在が、従来の「働いて対価を得る」という概念を見直すきっかけを与えてくれたと思っています。コミュニケーション自体に価値を見出す新しい経済モデルを示してくれたんですね。

また、メンチニキさんのストーリーも印象深いです。学生時代にバイト先でもらった廃棄予定のメンチカツを切るネタから始まって、”メンチ切り”という独特なパフォーマンスをSNSで展開されているんです。元々は趣味でネタツイートをされていたそうですが、メンチカツを切る動画がバズって、企業とのコラボやテレビ出演まで発展したというから驚きです。2025年3月には会社員を辞めて専業クリエイターになられたということで、一見シンプルなネタから本格的なビジネスを構築された現代の成功例だと感じています。

創作とプラットフォームの民主化について

私が最近特に注目しているのは、創作活動の環境が劇的に変化していることです。クリエイターエコノミー協会の調査によると、国内のクリエイター数は推計約822万人に達しており、新しい経済圏が形成されているんです。

プラットフォームが実現した直接収益化

個人クリエイターの成功例を見ていると、本当に時代が変わったなと感じます。Boothでは月35万円以上の売上を達成するクリエイターや、総売上1000万円を突破した事例が報告されているんです。音楽分野でも、Apple Musicが1再生あたり約1円をアーティストに支払い、年間100万ドル以上の収益を得るアーティストが2017年以降120%以上増加しているそうです。

私がこれらの変化で最も印象的だと感じるのは、従来の出版社や音楽レーベルといった中間業者を介さずに、創作者が直接消費者と繋がることが可能になったことです。この変化の根底にあるのは、SNSによる個人の発信力の向上だと思っています。TwitterやInstagram、TikTokなどを通じて、創作者は自分の作品を直接宣伝し、ファンとの関係を構築できるようになりました。編集者やプロデューサーが担っていた「発見」や「プロモーション」の機能が、個人レベルで実現可能になったのは本当にすごいことですね。

Z世代の新しい消費意識:「推し活」が生み出すパラダイムシフト

私がZ世代の消費行動について調べていて特に興味深いと感じたのは、彼らの「好きなものにお金を使って活動を存続してもらう」という意識の強さです。これは単なる消費ではなく、応援や投資に近い感覚なんですね。

データで見る「推し活」の経済圏

日本インフォメーションの調査を見ると、Z世代の半分以上が「推しがいる」と回答していて、特に大学生以下の女性の約7割以上が推しがいると答えているそうです。さらに詳細なZ総研の調査では、96.3%とほとんどのZ世代に推しがいることが分かったという驚異的な数字が示されています。

私が注目したいのは、消費行動における優先順位が従来の世代とは大きく異なることです。お金の使い道の中では「推し活」の優先度が高く、推しとの関連商品を買うといった人も多い状況で、SHIBUYA109 lab.の調査ではZ世代の8割が何かしらの「推し活」「ヲタ活」をしており、年間平均で45,000円以上をこうした行動に使っているんです。文化放送の調査では「推し活」への毎月の消費は、「5,000円~30,000円」が最も多く、身の丈に合った範囲での継続的な支援が行われているのがわかります。

消費の意味論的転換

私が特に興味深いと感じているのは、従来の消費が「所有」や「体験」を目的としていたのに対し、Z世代の推し活消費は明確に異なる動機を持っていることです。電通の調査では、「アイドルやアニメなどの『推し』のためなら応援の気持ちで買い物をしてしまうことはありますか?」という質問について、経験がある(よくある、ときどきある)と答えたZ世代女子は72.3%に上ることが明らかになっています。

この背景には、「推しのグッズが欲しいから買うのではなく、応援したいから購入する」という価値観の転換があると私は考えています。特にコロナ禍では、直接応援できなくても、推しのグッズを購入することで間接的に応援するZ世代女子が増えている状況が生まれました。

SNSが生み出した新しい関係性と情報行動

Z世代の約6割が「新しいものを購入する際はSNSで口コミ等を調べてから購入する」「トレンドは主にSNSで把握している」と回答しており、情報収集から購買まで一貫してSNSを活用していることがわかります。推し活においても、「Twitterで調べる」が83.2%、「Instagramで調べる」が77.7%、「YouTubeで調べる」が63.4%という高い利用率を示しています。

私が感じるのは、この環境下で、ファンは作品だけでなく、創作者の人柄や努力の過程に価値を見出し、その継続を支援しようとしていることです。TwitterやInstagramでは「#推しのいる生活」というハッシュタグを付けて、購入した推しのグッズを投稿しているZ世代女子も増えているように、消費行為自体がコミュニケーションツールとなっているんですね。

この変化は、従来のスター制度とは異なる、より対等で親密な関係性を生み出していると私は思います。クリエイターエコノミー協会の調査では、クリエイター活動者の約半数が副業・趣味レベルでも数万円の収入を得ており、必ずしも大きな成功を目指さない多様な働き方が成立しているのがわかります。

AI時代の新しい仕事の創造

AIが社会に浸透していく中で、多くの従来の職業が変化や消失の危機に直面していますが、私は歴史を振り返れば、技術革新は常に新しい仕事を生み出してきたと考えています。

「レンタルなんもしない人」のような仕事は、AIには代替できない人間特有の価値を商品化した例だと私は捉えています。AIが効率性や論理性を追求する一方で、人間の非効率性や感情、存在そのものに価値を見出す新しい働き方が生まれているのです。

私は今後も、AIとの協働や、AIでは表現できない創造性、人間らしさを活かした職業が次々と生まれていくと思います。重要なのは、これらの新しい仕事が社会に受け入れられる土壌が、SNSによる価値観の多様化と民主化によって整備されているということですね。

社会適合性と個人の成功

「なんもしない日」が象徴するのは、従来の社会が規定する「価値ある労働」の概念から解放された新しい可能性だと私は感じています。森本さんの成功は、SNS社会という新しい環境に適合した発想と行動の結果だと思うんです。

ヘーゲルの言葉を借りれば、「個人は時代の子である」ということになりますが、現代のSNS社会では、従来の価値観では理解できなかった新しい働き方や価値創造が可能になっています。私が思うに、重要なのは、変化する社会の中で新しい価値を見出し、それに適応していく柔軟性なのではないでしょうか。

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野村貴之
理学と哲学が好きです。昔は研究とかしてました。