Apple Vision Pro、ティムクックCEOが初めて市場戦略を明言 ─ アーリーアダプター向け製品と位置づけ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

The Wall Street Journalのインタビューで、AppleのCEO:ティム・クックApple Vision Proについて以下のように語った。Vision Proは3,500ドル(約53万円)という価格から、マス市場向け製品ではなく、アーリーアダプター向け製品である。現在の販売状況について「より多くの製品を販売したい」としながらも、エコシステムの構築という観点では成功していると評価している。

技術仕様
– 2枚の切手サイズのディスプレイに合計2,300万ピクセルを搭載
– 重量は600〜650g
– バッテリー駆動時間は通常使用で最大2時間、ビデオ視聴で最大2.5時間

発売状況
– 2024年2月2日:米国発売開始
– 2024年6月28日:中国本土、香港、日本、シンガポール
– 2024年7月12日:オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イギリス
– 日本価格:599,800円(税込)から

from Tim Cook On Apple Vision Pro’s Success: “At $3500, It’s Not A Mass-Market Product”

編集部解説

Apple Vision Proの市場での位置づけについて、ティムクックCEOが率直な見解を示しました。この発言は、製品戦略に関する重要な示唆を含んでいます。

まず注目すべきは、Vision Proを「アーリーアダプター向け製品」と明確に定義したことです。3,500ドル(日本では約53万円)という価格設定は、大衆市場を狙ったものではなく、「明日のテクノロジーを今日体験したい」というユーザー層をターゲットにしていることを示しています

現在のVision Proの販売状況については、IDCの分析によると2024年の販売台数は50万台を下回る見込みです。しかし、これはAppleにとって想定内の数字であり、むしろエコシステムの構築に注力している段階だと考えられます。

注目すべき点として、すでに2,500以上のネイティブアプリケーションが開発されており、150万以上のiOSアプリも互換性を持っています。これは、空間コンピューティングプラットフォームとしての基盤が着実に形成されていることを示しています。

技術面では、マイクロOLEDパネルやLiDARセンサー、視線追跡システムなど、最先端のテクノロジーが搭載されています。特に空間認識能力は、仮想オブジェクトの配置や操作において高い精度を実現しています。

一方で、重量(600-650g)やバッテリー寿命(約2時間)といった課題も指摘されています。これらは次世代モデルでの改善が期待される部分です。

将来的な展開として、2025年には約半額の2,000ドル程度の普及版モデルの投入が予想されています。また、2026年にはM5チップを搭載した次世代Vision Proの登場も報じられています。

このように、Vision Proは単なるVRヘッドセットではなく、空間コンピューティングという新しいコンピューティングパラダイムを確立するための戦略的製品として位置づけられています。

現時点での評価は時期尚早であり、長期的な視点での観察が必要でしょう。

参考情報

【用語解説】

スパティアルコンピューティング
空間を利用したコンピューティングの新しい形態。従来の2次元的なディスプレイ上での作業から、3次元空間全体を作業環境として活用する概念です。例えるなら、「机の上」から「部屋全体」へと作業スペースが拡大するようなものです。

【関連サイト】

  1. Apple Vision Pro 公式サイト(外部)
    Apple初のスパティアルコンピュータの製品紹介と詳細な技術仕様を確認できます
  2. The Wall Street Journal Tech(外部)
    ティム・クックCEOの詳細なインタビューを掲載した技術セクション

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