Last Updated on 2025-04-21 12:28 by admin
ロケーションベースVR体験施設を運営するSandbox VRは、累計売上高が2億ドル(約300億円)を突破したと発表した。同社は2025年中に29の新拠点をオープンする計画で、これは総拠点数の約50%増加に相当する。
2016年に設立されたSandbox VRは、2020年のCOVID-19パンデミック中にチャプター11破産を経験したが、その後急速に回復した。2024年だけで7,500万ドル(約112億円)の売上を達成し、140万人以上のプレイヤーを集めた。2024年の月間平均来場者数は117,000人で、2025年には150,000人に増加すると予測している。
同社の成功の大きな要因は自社開発コンテンツにある。特に2023年に発売された「Squid Game」(イカゲーム)VRアトラクションは、発売以来3,000万ドル(約45億円)の収益を生み出した。Sandbox VRの体験は一人あたり50〜60ドル(約7,500〜9,000円)で、一度に最大6人が参加できる。
2024年初めから、Sandbox VRは83のフランチャイズユニットを販売し、現在34の運営者と共に開発中の総ユニット数は約150に達している。これは過去12ヶ月間の契約締結数が6倍に増加したことを示している。
同社の60番目の拠点はペンシルバニア州フィラデルフィアで今月オープンする予定である。
Sandbox VRのCEOであり創設者のSteve Zhao氏は「累計売上高2億ドルの達成は、人々を結びつける没入型のソーシャルVR体験を提供するという私たちの使命を実証するものだ」と述べている。
2025年のターゲット市場には、アメリカ、ヨーロッパ諸国、UAE、サウジアラビア、バーレーン、カタール、クウェート、エジプト、カナダ、マレーシア、インド、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、タイ、ベトナム、南アフリカ、韓国、メキシコ、チリ、トルコが含まれている。
【編集部解説】
Sandbox VRの急成長は、VR業界全体の動向を考える上で非常に示唆に富んでいます。同社は2020年のパンデミック時にチャプター11破産を経験しながらも、わずか数年で累計売上高2億ドルを達成するという驚異的な回復を遂げました。この成功は、ロケーションベースVRの可能性と、適切なビジネスモデルの重要性を示しています。
特筆すべきは、Sandbox VRがフランチャイズモデルへと戦略をシフトさせた点です。これにより自社の資本支出を抑えながら、コンテンツ開発に注力できるようになりました。このビジネスモデルの転換が、急速な拠点拡大を可能にしている要因の一つと考えられます。
コンテンツ面では、Netflixの人気シリーズ「Squid Game」をベースにしたVRアトラクションが大きな成功を収めています。このようなIP活用は、VR体験の訴求力を高める重要な戦略となっています。
Sandbox VRの体験の特徴は、手首、足首、胸、頭などに複数のセンサーを装着することで実現する精密なフルボディトラッキングにあります。これにより、プレイヤーは同じ空間に物理的に存在しているかのような感覚を得ることができます。この技術は、単なるゲーム体験を超えた社会的交流の場を創出しています。
VR業界全体が課題に直面する中、Sandbox VRの成長は注目に値します。多くのVR開発者が苦戦を強いられている状況で、同社は店舗数の増加によって有機的な成長を達成しています。高品質な没入型体験を提供するという明確な方向性が、成功の鍵となっているようです。
日本市場においても、このようなロケーションベースVRの可能性は大きいと考えられます。日本特有のIP(知的財産)と組み合わせることで、独自の体験価値を創出できる可能性があります。
一方で、課題も存在します。高品質なVR体験には相応のコストがかかるため、価格設定と体験価値のバランスが重要になります。また、技術の進化に伴い、家庭用VRとの差別化をどう図っていくかも長期的な課題となるでしょう。
Sandbox VRの事例は、テクノロジーの進化だけでなく、ビジネスモデルの革新とコンテンツ戦略の重要性を示しています。VR技術が進化し続ける中、人々を結びつける社会的体験としての価値を提供できるかどうかが、今後のVRビジネスの成否を分ける鍵となるでしょう。
【用語解説】
ロケーションベースVR:特定の実店舗や施設に設置された専用機器を使用するVR体験のこと。家庭用VRとは異なり、より広いスペースや高性能な機器を使用した没入感の高い体験を提供する。日本でいえば、VRアーケードや「VR ZONE」のような施設がこれにあたる。
チャプター11破産:米国連邦破産法第11章に基づく再建型破産手続き。日本の民事再生法に近い制度で、企業が事業を継続しながら債務を整理し、再建を図ることができる。完全な清算(第7章破産)とは異なり、「企業の第二のチャンス」を与える制度である。
フランチャイズモデル:本部企業(フランチャイザー)が、加盟店(フランチャイジー)に対してブランド名や経営ノウハウを提供し、その対価としてロイヤリティを受け取るビジネスモデル。日本でいえば、コンビニエンスストアや牛丼チェーン店などがこの形態で展開していることが多い。
フルボディトラッキング:VR体験において、頭部だけでなく手足や胴体など全身の動きを追跡する技術。Sandbox VRでは、手首、足首、胸、頭などに複数のセンサーを装着することで実現している。これにより、自分の全身がVR空間内に正確に反映され、より没入感の高い体験が可能になる。
【参考リンク】
Sandbox VR公式サイト(外部)Sandbox VRの公式サイト。提供されているVR体験やロケーション情報を確認できる
Sandbox VRフランチャイズ情報(外部)Sandbox VRのフランチャイズに関する詳細情報が掲載されているページ