Samsung初スマートグラス、7月22日Unpackedで初披露か|韓国サングラスメーカーGentle Monsterとコラボ

[更新]2026年5月14日

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スマートグラス市場が、にわかに動き始めています。Ray-Ban Metaが切り拓いた「ディスプレイなし・AI搭載」という新しい形が市場に定着しつつあるなか、Samsungがついにこの戦線に参戦する日が近づいてきました。Googleの新OS「Android XR」を軸に組み上げられたパートナーシップは、単なる製品の追加を超え、スマートグラスの覇権をめぐる構図そのものを塗り替えようとしています。7月22日——その日に何が発表されるのか、注目です。


韓国メディアのソウル経済日報が5月11日に報じたところによれば、Samsungは7月22日にロンドンで開催するGalaxy Unpackedにて同社初のスマートグラスを初公開する予定だ。同イベントでは「Galaxy Z Fold8」「Flip8」、「Galaxy Watch9」シリーズも発表される見込み。

スマートグラスはGoogleのAndroid XRを搭載し、韓国系アイウェアブランド「Gentle Monster」がデザインを担当。初期モデルはディスプレイなしのオーディオ特化型で、カメラ・マイク・スピーカー・AI搭載を予定、スペックはRay-Ban Meta(Gen 2)に近いとされる。発売はQ3 2026年が見込まれ、SamsungのAIエコシステムを補完する「コアエッジデバイス」と位置づけられる。スマートフォンやSmartThings家電との連携も計画されている。

From: 文献リンクSamsung Reportedly to Debut First Smart Glasses at Galaxy Unpacked on July 22nd

【編集部解説】

7月22日に注目すべきは、「新しいスマートグラスが追加される」ことではありません。Samsungがこの製品をどう呼ぶか——その言葉そのものが、スマートグラスというカテゴリーの意味を書き換えうるからです。

「エッジデバイス」と呼んだ瞬間、製品の意味が変わる

ソウル経済日報の報道で目を引いたのは、Samsungがこのデバイスを「単なるウェアラブルではなく、AIエコシステムを完成させる核となる『エッジデバイス』」と位置づけている点です。

エッジデバイスとは本来、ネットワークの末端でデータを処理する端末を指す技術用語です。クラウドに対する「端末側」という意味合いで、IoTの文脈でセンサーや産業機器を呼ぶときに使われてきました。それをSamsungが、ユーザーが顔につけるグラスに対して使った。この言葉選びは戦略の表明です。

スマートグラスを「スマートフォンの周辺機器」と呼ぶか、「AIの入口」と呼ぶかで、製品の意味は変わります。前者は便利な追加デバイスですが、後者は——少なくともSamsungの意図の上では——スマートフォンと並ぶか、ゆくゆくは置き換わりうる存在です。GoogleのDemis Hassabis氏が2026年1月のダボス会議で、スマートフォンはAI時代に最適な形態ではなく、AIグラスが有力な次世代コンピューティング形態になりうると述べたように、その言葉は単なるビジョンではなく、製品ロードマップの裏打ちを得つつあることが見えてきます。

Meta一強市場——「70%超」というスタートライン

Samsungが乗り込もうとしている市場の実像を確認しておきましょう。

Counterpoint Researchによれば、2025年上半期の世界スマートグラス出荷台数は前年同期比110%増。そのうちMetaのシェアは70%を超えました。EssilorLuxotticaは2025年1年間だけでAIグラスを700万台超販売しました。これは、Ray-Ban Meta発売以降2024年末までの累計販売台数約200万台を大きく上回る規模で、同社の通期決算(2026年2月)で公表されています。

二番手以降は中国勢が占めます。Xiaomiは2025年6月にAI Glassesをローンチし(¥1,999、約$275)、ローンチから12時間で1万台を売り上げました。Huawei、RayNeo(TCL)も参入しており、2025年だけで36メーカーが50以上のAIグラスを発売したと報じられています。

Samsungはこの段階で、Meta一強と中国勢の「2.5強」の構図に、第三勢力として割り込もうとしています。しかも、単独で割り込むのではない——そこが今回の核心です。

Android XR連合:プラットフォーム戦略としての布陣

Googleは2025年5月のI/Oで、Android XR向けスマートグラスの初期アイウェアパートナーとしてGentle MonsterおよびWarby Parkerを発表し、Kering Eyewear(Gucciなどを擁する仏ラグジュアリーコングロマリット)との将来的な協力にも言及しました。SamsungはAndroid XRプラットフォームのソフトウェア・リファレンスハードウェア基盤を共同構築するパートナーとして位置づけられています。さらにXREALとのProject Aura(有線XRグラス)も別建てで進行中です。

この布陣は、明確に「Androidモデル」の再演です。Googleがプラットフォーム層(Android XR + Gemini)を提供し、Samsungがフラッグシップ・リファレンスとして製品化を担う。その横で、アイウェアブランド各社が異なる価格帯・スタイル・顧客層に対応した派生製品を出す。スマートフォン市場でGoogleとSamsungがHTC・Sony・LGらと組んだ構図と相似形です。

対するMeta陣営は、EssilorLuxotticaという世界最大のアイウェア企業との垂直統合的アライアンスで先行しています。Ray-Ban、Oakley、そして9月に発表されたディスプレイ付きRay-Ban Meta Displayまで、すべて同じグループ傘下のブランドで揃えてきた。これは「勝っているプレイヤー同士の同盟」です。

Google×Samsung連合の戦略は、垂直統合のスピードと一貫性で勝るMeta陣営に対し、「ブランドの多様性」と「価格帯のレンジ」で勝負する構図と読めます。Gentle Monsterで$300-500帯、Warby Parkerで処方箋対応の中価格帯、Keringのラグジュアリー帯——同じプラットフォーム上に複数の入口を用意する。これはAndroidがiPhoneに対して取った戦略そのものです。

なぜGentle Monsterだったのか

Samsungが「デザインと実用的な競争力を高める」ためにGentle Monsterを起用したという事実は、それだけで一つの示唆を含みます。

Gentle Monsterは2011年韓国創業のアイウェアブランドで、ファッションコレクションやK-POPアーティストとの連携を通じて、テック企業が自前では獲得しにくい「身につけるもの」としての文化的正統性を蓄積してきました。

2015年のGoogle Glassが失敗した本質的な理由は、技術的欠陥ではなく社会的拒絶でした。顔にカメラをつけた人々は「Glasshole(グラスホール)」と揶揄され、飲食店から入店を断られる事態にまで至りました。この記憶は、現在のあらゆるスマートグラス戦略を規定しています。Ray-Ban Metaが市場を切り拓けたのは、AI機能の優劣以前に、それが「Ray-Banに見える」からです。

Samsungが自前のデザインで突き進まず、Gentle Monsterに頭を下げてデザインを委ねるという選択は、「顔の上に乗せられる正統性は、テック企業が自分では作れない」という認識の表明です。これはエンジニアリングの問題ではなく、文化の問題だと、Samsungは正しく理解しています。

ディスプレイなしという「制約」の戦略性

第一弾がオーディオ特化型——マイク・カメラ・スピーカー・AI搭載で、ディスプレイなし。SamMobileの報道では、12MPカメラを搭載し、処理はペアリングしたスマートフォン側に委ねる設計とされます。

これは技術的な妥協ではなく、明らかに段階的な市場形成戦略です。Android Headlinesの報道では、Samsungは「Jinju」(AIスマートグラス、ディスプレイなし)と「Haean」(ディスプレイ搭載、2027年予定)の2モデルを並行開発中とされます。

ディスプレイなしの第一弾には、いくつもの戦略的合理性があります。ひとつは価格——MetaのRay-Ban Display($799)に対して、ディスプレイなしモデルは数百ドル台に収まり、メインストリーム製品として位置づけられます。もうひとつはバッテリーと熱——常時表示するディスプレイは消費電力と発熱の両面で大きな負荷で、これが「一日中つけていられるグラス」という条件を阻みます。さらに、社会的受容——周囲から見て「画面が光っているグラス」は依然として違和感を伴うため、まずはオーディオ特化型で市場に受け入れさせ、ディスプレイ付きへ段階的に移行させます。

これはMetaが2023年のRay-Ban Meta初代(ディスプレイなし)から2025年9月のRay-Ban Meta Display(ディスプレイ付き)へとたどった道筋と完全に重なります。後発のSamsungは、Metaが切り開いた市場形成のシナリオを、同じ順序でなぞろうとしています。

価格か、AIか、それとも——

注目点は三つです。

価格——Ray-Ban Meta(Gen 2)($379-459)と同等か、それより低く設定できるか。

Geminiの差別化——Android XRに統合されたGeminiが、Metaの専用AIに対して「Androidユーザーにとって意味のある差」を提示できるか、SamsungのスマートフォンやSmartThings対応家電との連携の深さも、ここに収斂します。

そして日本市場の扱い——Ray-Ban Metaは2025年秋にようやく日本上陸し、Meta Quest Storeでは即時に売り切れる状態が続きましたが、Unpackedをロンドンで開催するSamsungが欧州を初期重点市場と見ているなら、私たちの手元に届くまでのタイムラインもまた、7月22日に問われる問いの一つです。

7月22日に発表されることを心待ちにしながら、その日を待ちたいと思います。

【用語解説】

Android XR
Googleが開発した、スマートグラスやXRヘッドセット向けのオペレーティングシステム。Gemini AIとの深い統合を特徴とし、音声・カメラ・テキストによるマルチモーダルな操作が可能。2024年12月に発表され、Samsung・XREAL・Warby Parker・Gentle Monster・Keringをパートナーに擁する。

Gentle Monster(ジェントルモンスター)
2011年に韓国・ソウルで創業したアイウェアブランド。ファッション寄りのデザインコンセプトとK-POPアーティストとのコラボレーションで知られる。「顔につける」プロダクトとしての文化的正統性を持つことから、テクノロジー企業のスマートグラス戦略においてデザインパートナーとして注目されている。GoogleのAndroid XRグラスでもSamsungと協力関係にある。

Galaxy Unpacked
Samsungが新製品を発表するために開催する大型イベント。年複数回行われ、Galaxy SシリーズやGalaxy Zシリーズ(折りたたみスマートフォン)など主要製品はここで世界初披露されることが多い。2026年7月22日はロンドンでの開催が報じられている。

エッジデバイス
ネットワークの末端(エッジ)でデータ処理を行う端末の総称。クラウドサーバーにデータを送ってから処理するのではなく、デバイス自身またはペアリングされた近傍の機器で処理することで低遅延・プライバシー保護を実現する設計思想。IoT文脈で産業用センサーに使われてきた概念を、Samsungがスマートグラスに適用したことで注目されている。

SmartThings
Samsungが提供するIoT(モノのインターネット)対応のスマートホームプラットフォーム。照明・エアコン・洗濯機・冷蔵庫など対応家電を一元管理できる。SamsungスマートグラスはこのSmartThingsエコシステムとも連携する計画とされており、「AIエッジデバイス」としての位置づけを具体的に支える基盤となる。

Kering(ケリング)
Gucci、Saint Laurent、Bottega Veneta、Balenciagaなどを傘下に持つフランスのラグジュアリーグループ。アイウェア部門「Kering Eyewear」がGoogleとのパートナーシップのもとAndroid XRスマートグラスの開発に参加。テック×ラグジュアリーの文脈でスマートグラス市場の高価格帯開拓を担う。

EssilorLuxottica
Ray-BanやOakleyなどのアイウェアブランドを傘下に持つ世界最大のアイウェア企業(仏・伊系)。MetaとのパートナーシップでRay-Ban Metaシリーズを展開しており、スマートグラス市場でMetaの最重要パートナーとして機能している。

【参考リンク】

Samsung Galaxy 公式サイト(外部)
Samsung Galaxy製品ラインの公式情報。Galaxy Glasses含む新製品の発売情報はこちらで随時更新される。

Android XR 開発者ページ(外部)
GoogleのAndroid XRプラットフォーム公式ドキュメント。API仕様や対応デバイスの最新情報を確認できる。

Gentle Monster 公式サイト(外部)
Samsung・Googleとスマートグラス開発に携わるアイウェアブランド。コレクションや世界観はこちらから。

Ray-Ban Meta スマートグラス 公式(外部)
現在市場をリードするスマートグラスの日本向け公式ページ。Samsung版との比較の起点として。

Warby Parker 公式サイト(外部)
処方箋レンズ対応で知られる米アイウェアブランド。Android XRスマートグラスのパートナーとして参加。

Samsung SmartThings(外部)
SamsungのIoTプラットフォーム。スマートグラスとの連携が予定されているエコシステムの全体像を確認できる。

【参考動画】

Google I/O 2026 The Smart Glasses Reveals Everyone’s Waiting For(Cas and Chary XR / YouTube)— Galaxy Glasses・Project Aura・Android XRの全体像を追う英語解説動画。

【参考記事】

Samsung to unveil new foldables, AI glasses at July Unpacked(外部)
本記事の元報道。7月22日ロンドン開催とSamsungスマートグラスの「エッジデバイス」定義を伝えたソウル経済日報の英語版記事。

Gemini on Android XR: Glasses and headsets(外部)
Google I/O 2025でのAndroid XRパートナーシップ正式発表。Gentle Monster・Warby Parker・Kering Eyewearが示されたページ。

Global Smart Glasses Shipments Soared 110% YoY in H1 2025(外部)
2025年上半期の世界スマートグラス市場データ。出荷台数前年比110%増、Metaシェア70%超の根拠となる調査レポート。

Samsung Galaxy Glasses Launch July 2026: Features, Privacy, and Tradeoffs(外部)
Galaxy Glassesの詳細スペック(12MPカメラ、スマホ依存処理、Gemini搭載など)と発売時期についての詳細記事。

New Google Smart Glasses Are Coming — Here’s What We Know So Far(外部)
SamsungのコードネームJinju(ディスプレイなし)とHaean(ディスプレイ付き・2027年)の2モデル開発を報じた記事。

Kering, Gentle Monster, Warby Parker partner with Google for smart eyewear(外部)
ファッション業界視点でGentle MonsterとKering Eyewearのスマートグラス参入背景を解説。Kering社長コメントも収録。

2026: Showtime for Android XR glasses(外部)
Android XRグラスが段階的市場形成戦略をたどる理由を詳述。スマートフォンとの処理分担とGeminiのユースケースを実機デモで考察。

【関連記事】

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【編集部後記】

顔に何を乗せるか——その問いに、私たちはこれから繰り返し向き合うことになりそうです。視力を補う道具だったメガネが、装いになり、いま、AIへの入口になろうとしています。7月22日、Samsungが見せるものに、製品としての完成度と同じくらい、その呼び名にも耳を澄ませたいと思います。エッジデバイスという言葉が、ガラスとフレームの向こうで何を意味するようになるのか。その輪郭が、少しずつ立ち上がってきています。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。