2026年7月15日、GMOペパボは新サービス「ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ」の発表会を開催しました。これにより、AIエージェントを作る「ロリポップ!AIエージェントクラウド」、作ったものを公開する「ロリポップ!デプロイナウ」に続き、それらを安全につなぐ「ロリポップ!ゼロトラストリンク」が加わり、3つのサービスが出そろいました。
innovaTopia編集部はこの発表会に参加し、GMOペパボが認識している、AI時代の課題と、それに対してどういうソリューションを提供していくのかを聞いてきました。
「AIを作る」から「AIを使う」への転換
取締役の渕野氏は、AI関連の投資の重心が変化しつつあると説明しました。AIモデルそのものの開発には兆円規模の投資が続く一方、GMOペパボが力を入れるのは、その進化したAIを実際の業務でどう使うかという活用インフラの領域だといいます。海外では複数の事例を踏まえ、AIを使いこなすためのインフラサービスへの投資や事業成長がすでに進んでいる一方、日本市場ではこの領域の担い手がまだ定まっていないというのが渕野氏の課題認識です。GMOペパボは、この空白地帯に自社を位置づけていく方針を示しました。
何を、なぜ守ろうとしているのか
CEOの佐藤氏は、AIエージェントの普及に伴う懸念を語りました。AIエージェントに任せれば、ウェブサイトの構築先やサービスの選定まで自動的に進んでしまうため、日本のユーザーであっても知らないうちに海外のサービスへ流れてしまう可能性がある、という指摘です。この状況に対し、GMOペパボは日本語サポート、円建て課金、国内でのデータ管理という3点を軸に、国内でインフラを提供する意義を説明しました。特に強調されたのは、データが国内で管理され、誰がどのような目的で使っているかを把握できる状態を作ることです。
企業インフラは「個人のアウトプット」を増やすか
佐藤氏は、GMOペパボの事業の歩みを、レンタルサーバー事業から、スマートフォン普及後のECプラットフォーム「minne」へ、そして現在のAIエージェントインフラへと続く一貫した流れとして位置づけました。「人類のアウトプットを増やす」というミッションのもと、AIを使った新しい表現活動にサービスを向けていきたいという説明です。
このミッションを体現する例として紹介されたのが、CTOの栗林氏による個人利用のデモンストレーションです。自宅でスキャンした蔵書データを、クラウド上で稼働するAIエージェントが検索する仕組みを実演し、データをインターネット上に公開せず、著作権や機密情報を守りながら活用できる点を示しました。ゼロトラストリンク自体はアクセス制御やサブネットルーティングといった、本来は企業の情報システム部門が扱う機能を備えた製品ですが、このデモは、その機能が個人の手元でも同じように使えることを示すものでした。
加えて、AIキャラクター「白羽リノ」(公式サイト:https://shiraharino.com/)の存在も例に出した。エージェントが自動的に、SNSやサイトの更新を行い、VTuberのように、アバターを動かし、合成音声で話すことも自動でできると説明した。

3つのサービスがそろって見えてくるもの
3つの論点を重ね合わせると、GMOペパボが取り除こうとしているのは、AIを使ってものを作るときに人がぶつかる「迷い」と「不安」なのだと見えてきます。
AIエージェントに何かを任せるとき、私たちはいくつもの分からなさの前に立たされます。困ってエージェントに聞いた結果、選ばれた選択肢は、本当に安心できるのか。要件を満たすのか。サポートは受けられるのか。AIの判断基準は、多くの場合、利用者には見えませんし、AI自身もよくわかっていないことが多いです。
GMOペパボが用意したのは、その迷いを消すための一本の道です。作る場所(AIエージェントクラウド)、公開する場所(デプロイナウ)、安全につなぐ経路(ゼロトラストリンク)が揃っていて、それらが連携することが保証されている。使えるかどうかを自分で検証する必要がなく、サポートは日本語で受けられ、料金は円建てで見通しが立ち、データは国内にある。
「どこで作って、どこで完成させて、どこに置くのか」という、今のAI活用にまだ色濃く残る実務的・心理的・経済的なハードルを、可能な限り低くしようとする設計です。しかも重要なのは、この3つがそれぞれ独立して使える点です。組み合わせれば効果は高まりますが、強制はされていません。他社のサービスと混ぜてもいい。GMOペパボが取ろうとしているのは、「迷ったらこれを選べば間違いない」という初期設定の位置なのでしょう。
これは、GMOペパボが20年以上続けてきた事業の、必然的な現在地でもあります。同社はブロードバンドの黎明期に、専門家のものだったウェブサーバーを、個人が数百円で持てる環境へと開きました。スマートフォンの時代には、店舗や流通を持たない個人のクリエイターが、minneを通じてものを売れるようにしました。
一貫していたのは、それまで資本や専門知識を持つ者だけに許されていたインフラを、中小企業や個人の手に届く価格と手軽さで開放してきたことです。AIエージェントクラウド、デプロイナウ、ゼロトラストリンクという3つのサービスは、その系譜の最新形に他なりません。かつてサーバーやECがたどった「専門家の道具から、誰もが使える道具へ」という道を、今度はAI活用インフラで再演しようとしているのです。
AIエージェントを使いこなす個人は、もはや個人の生産量にとどまりません。一人が、かつてはチームや一つの企業が総力を挙げて成し遂げていた量と質のアウトプットを、生み出しうる時代に入りつつあります。作る、公開する、安全に使うという一連の流れから迷いと障壁が取り除かれたとき、解き放たれるのはその個人の潜在的な生産力です。
「人類のアウトプットを増やす」というミッションは、標語ではなく、この構造を正確に射抜いた宣言だったと読むべきでしょう。AIという増幅装置を得た個人の創造力を、組織に匹敵する規模まで引き上げるための土台づくり。一連の事業は、そこに向かっています。
セキュリティという側面でも、同じ転換が起きています。かつて、堅牢なネットワーク防御を必要としていたのは、守るべき重要データを大量に抱えた大企業でした。しかし今、攻撃者が狙うのは、防御の手薄な末端であり、取引先を経由して本丸に至るサプライチェーンです。他社とデータをやり取りするすべての企業が、そして案件を受託し機密に触れるすべての個人が、標的になりうる時代になりました。セキュリティは、一部の大企業の課題から、ネットワークにつながって働くすべての人の課題へと移り変わっています。
ゼロトラストリンクが、専門の情報システム部門を持たない中小企業や個人でも、クレジットカード登録すら不要に導入できる形で提供されている意味は、ここにあります。どこにいても、誰であっても、安心して効率よく安全に働ける環境を配ること。それは、セキュリティの主役が末端へと移っていく時代に対する、インフラ事業者としての一つの回答です。
作る場所を開き、売る場所を開き、そして今、AIと安全につながる場所を開く。GMOペパボがやろうとしているのは、AIエージェント時代のインフラを、大企業のものにも、海外のものにも、専門家だけのものにもさせず、日本の個人と中小企業の手のなかに置くことです。その狙いが実を結んだとき目にするのは、一人の人間が思い描いたものを、迷わず、恐れず、そのまま世界に、あるいは自分たちだけの場所に、形にできる風景のはずです。3つのサービスがそろったことの本当の意味は、そこにあります。
「こういうものがあれば」と思いながら、知識がないから、うまく説明できないからと諦めてきた人は、きっと少なくないはずです。そのハードルが下がったとき、世に出るはずだったアウトプットや、価値のあるものはどれだけ増えるのでしょうか。私たちが目にする表現の総量が変わる、その入り口に立っているのかもしれません。
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【編集部後記】
デモンストレーションとして紹介された白羽リノは、栗林氏の趣味が強く反映されたキャラクターだそうです。
配信用のソフトは別途必要ですが、アバターの動き、合成音声、字幕の生成まで、全てロリポップ!上のエージェントが自動で実行しているので、デモの際も、事前に用意された映像ではなく、リアルタイムで生成されたものでした。
放っておくと、24時間絶え間なくしゃべり続けるそうなので、ほどほどのところで中断されましたが、どこかのパソコンをつけっぱなしにしなくても、ずっと動き続けるシステムと言うのには非常に魅力を感じました。
【参考リンク】
ロリポップ!ゼロトラストリンク byGMOペパボ(外部)
本記事の中心となる新サービスの公式サイト。料金プラン、対応OS、機能一覧を掲載。作る・公開する・つなぐの「つなぐ」を担う。
ロリポップ!AIエージェントクラウド byGMOペパボ(外部)
AIエージェントをブラウザ操作だけでクラウド上に構築・稼働できるサービスの公式サイト。3つのサービスのうち「作る」を担う。
ロリポップ!デプロイナウ byGMOペパボ(外部)
AIエージェントと作ったWebアプリをコマンド一つで公開できるホスティングサービスの公式サイト。3つのサービスのうち「公開する」を担う。
minne byGMOペパボ(外部)
GMOペパボが運営するハンドメイド作品のマーケットプレイス。個人のクリエイターがものを売れる場として、同社の事業史を象徴するサービス。
GMOペパボ 企業理念「人類のアウトプットを増やす」(外部)
本記事で軸とした同社のミッションを掲げる公式ページ。事業の一貫した方向性を示す。
GMOペパボ AI機能・サービス紹介ページ(外部)
GMOペパボが各サービスで展開するAI関連の取り組みをまとめた公式ページ。












