廃プラを混ぜた舗装のほうが、丈夫になる。鹿島グループの比較図では、動的安定度は一般的な舗装の7,880回/mmに対し21,000回/mmでした。環境のために性能を我慢する、という構図が崩れています。廃棄物が性能の担い手になるとき、道路は何に変わるのでしょうか。
鹿島建設と鹿島道路は2026年7月31日、建設現場で発生する廃プラスチック(建設廃プラ)を再利用した資源循環型の高耐久アスファルト舗装「サーキュラプラス舗装TM」を開発したと発表した。
鹿島道路が「環境配慮型AKD舗装」として商品化している技術を基礎とし、添加する改質材の一部を建設廃プラ由来に置き換えた。改質材は鹿島の建設現場で発生した建設廃プラから製造し、鹿島道路のアスファルト合材製造プラントで添加する。鹿島道路の技術開発総合センター構内で、改質材の約50%を建設廃プラ由来とした試験施工を実施し、動的安定度の測定によるわだち掘れ抵抗性を検証した結果、一般的なアスファルト舗装に比べて耐久性が向上することを確認した。
背景として、2022年4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されている。
From:
建設現場の廃プラを活用した資源循環型の高耐久アスファルト舗装を開発
【編集部解説】
「サーキュラプラス舗装」を読み解く鍵は、ベースになった技術の素性にあります。
鹿島道路のAKD舗装は、Anti Kerosene and Durability pavementの頭文字を取った高耐久型アスファルト混合物です。通常の混合物に専用添加材を加えるだけで製造でき、特別な設備を必要としません。同社が環境配慮型として公開しているAKD-Rは、花王が2020年12月に発売した廃PET由来の改質剤「ニュートラック5000」を使い、約1%の配合で耐久性が約5倍に向上するとされています。
リリースにある「環境配慮型AKD舗装」がこのAKD-Rを指すとすれば、今回の製品はその改質剤の一部を建設廃プラ由来に置き換えたものだと整理できます。両社は製品名を明示していないため、ここは公表資料を突き合わせた編集部の推定です。
いずれにせよ確かなのは、この系列においてプラスチックが単なる充填材ではなく、性能を担う改質材だという点です。少なくともわだち掘れ抵抗性については、環境対応と性能向上が両立しています。ただし、置き換えた建設廃プラ由来の部分そのものの寄与を分離した比較試験は公表されていません。
難所はどこか。リリースが検証項目に挙げた「建設廃プラのばらつき等の影響」という一文が手がかりです。分別と選別を経た廃PETボトルが比較的均質なのに対し、建設現場の廃プラは養生シート、梱包材、電線被覆、配管材などが入り混じり、汚れも付着します。海外の公的研究でも、樹脂種や純度、汚染の違いが性能の再現性と仕様化を難しくすると指摘されてきました。ただし相溶性、配合設計、混合温度、施工性なども同時に成立させる必要があり、分別は重要な条件の一つであって唯一の関門ではありません。
数値の読み方にも注意が要ります。リリース本文に記載はありませんが、比較図には一般的なアスファルト舗装が7,880回/mm、サーキュラプラス舗装が21,000回/mmと示されています。単純な比では約2.66倍。ただし日本改質アスファルト協会は、動的安定度が6,000回/mmに達するあたりから試験精度そのものに問題が生じると注意を促しており、今回の2つの値はいずれもその領域より上にあります。この比率を実路での寿命の倍率と読み替えることはできません。
なぜ、いまなのか。2022年4月施行のプラスチック資源循環促進法が、燃やして熱を取る方式から材料として使い直す方式への転換を促しています。国土交通省の建設リサイクル推進計画2020は、2017年時点の建材由来の廃プラを約62万トン、全排出量903万トンの約7%と整理し、その約3割が最終処分されていると推定しました。燃やす以外の出口が、大量かつ継続的に要る。舗装はその条件に合う有力な用途の一つです。
そして編集部は、この発表にもうひとつの意味を見ています。トレーサビリティです。
舗装業界は2024年、契約で新規骨材が指定された工事に再生骨材入りの合材が使われていた問題に直面しました。国土交通省の全国調査では、対象1,104件のうち72件で混入が確認され、41件は欠測で確認できていません。鹿島道路も対象企業のひとつで、2025年4月11日付で指名停止措置を受けました。期間は発注機関により異なり、最長4か月でした。国の有識者委員会は中間報告で、引き渡し時の品質管理基準を満たし、現状で変状等もないことから、当面の使用における安全性には直ちに問題があるわけではないとの評価を示しました。一方で、長期耐久性については知見が不足しているとして、経過観察を求めています。
この問題で主たる争点となったのは、再生材そのものの是非よりも、契約内容と実際に使われた材料の不一致でした。加えて、何をどれだけ使ったかを追跡し、性能を検証・公表できる体制も問われました。排出から改質材の製造、添加、施工までがグループ内でつながる今回のスキームは、素性のわからない再生材が紛れ込む余地を減らしやすい構造です。隠して使う再生材から、掲げて使う再生材へ。この移行こそが、いま報じる価値のある変化だと考えます。
留保も記しておきます。マイクロプラスチックの放出量は市販のポリマー改質アスファルトと同程度とする研究がありますが、対象樹脂と配合方式に限った結果であり、環境中への放出に普遍的な基準値は存在しません。廃プラ改質では耐水性が5〜22%低下した報告もあり、わだち掘れ以外の性能まで含めた評価は公表情報からは判断できない。実交通下の長期追跡結果も、2026年8月1日時点で公表が確認できません。
寿命を迎えた後の再々利用も残ります。複数回の再利用は実験室で可能性が示され始めた段階で、品質規格や産業規模の仕組みは確立途上です。それでも、道路という巨大な人工物が廃棄物の行き先ではなく素材の貯蔵庫になっていく。その入口に、私たちはいま立っています。
【関連記事】
PBTリサイクル新手法、東北大とAstemoが劣化樹脂の引張強さを初期比94%まで回復|分子量から予測する設計指針
劣化した樹脂を材料として使い直す試み。原料のばらつきをどう設計で御すかという論点が、今回の建設廃プラと重なる。
三菱電機、世界最高効率のマイクロ波プラスチック分解技術を開発 – 従来比5倍の分解効率でケミカルリサイクルを変革
マテリアル、サーマル、ケミカルという三つのリサイクル手法の違いを整理した記事。今回の舗装が立つ位置がわかる。
10月20日【今日は何の日?】「リサイクルの日」 — AIと人間が織りなす循環型社会の最前線
日本の廃プラ850万トンのうちマテリアルリサイクルは22%という現実。建設分野の数字を全体像の中に置き直せる。
コーヒーかすでコンクリート強度30%向上、RMIT大学が熱分解技術で実現
廃棄物を建設材料へ混ぜ、かえって性能を高めた事例。「循環する建設」という同じ構図を先に示している。
【編集部後記】
面白いのは、改質材の約50%を建設廃プラに置き換えた、というその「約50%」です。ベース技術が廃PET由来の改質剤を使っていることを踏まえると、素性の揃った原料で足場を固めながら、扱いにくい建設廃プラをどこまで引き受けられるか、その第一歩を刻んだ比率にも読めます。
ならば次は、半分を超えられるか。日本の道路の総延長を思えば、この比率が動くたびに行き先を得る廃プラの量は跳ね上がります。
【用語解説】
建設廃プラ(建設廃プラスチック)
建設現場から排出される廃プラスチックの総称。養生シート、梱包材、配管材、電線被覆材など材質も汚れ具合も多様で、分別を経た廃PETボトルとは性質が大きく異なる。
アスファルト改質材(改質剤)
アスファルト混合物に少量添加し、耐久性や耐流動性などの性能を高める材料。ポリマー系のものが広く使われている。
アスファルト合材(アスファルト混合物)
骨材、石粉、アスファルトなどを加熱混合した舗装材料。専用の製造プラントでつくられ、現場へ運ばれて敷き均される。
動的安定度(DS)
ホイールトラッキング試験で得られる耐流動性の指標。規定寸法の供試体上で小型のゴム車輪を規定の温度・時間・速度で往復走行させ、単位時間あたりの変形量から算出する。単位は回/mmで、変形量1mmあたりの走行回数にあたり、値が大きいほどわだち掘れに強い。高温時の性能を評価する標準的な試験温度として60℃が用いられる。
再生骨材
既存の舗装を剥がして得られたアスファルト塊などを再加工した骨材。品質基準を満たせば正規の材料だが、契約で新規骨材が指定された工事に用いることは契約違反にあたる。
【参考リンク】
鹿島建設(外部)
1840年創業の総合建設会社。土木、建築、開発、エンジニアリング、環境の各事業を国内外で展開し、鹿島グループの中核を担う。
鹿島道路(外部)
舗装を中核とする鹿島グループの道路建設会社。舗装工事のほか、一般土木、アスファルト合材の製造・販売、建築事業も手がける。
鹿島道路「AKD舗装(高耐久型アスファルト混合物)」(外部)
今回の技術のベースとなる高耐久型アスファルト混合物の解説ページ。耐流動性、耐油性、ねじり抵抗性に優れ、専用設備も要らない。
鹿島道路「AKD-R」(外部)
AKD舗装の環境配慮型にあたる製品ページ。廃PET由来の特殊添加剤ニュートラック5000を用い、リサイクルと高耐久化を両立させる。
花王ケミカル「ニュートラック 5000」(外部)
廃PETを原料とする高耐久アスファルト改質剤の公式ページ。約1%の配合で耐久性が約5倍向上するとされ、NETISにも登録されている。
国土交通省「建設リサイクル推進計画2020」(本文PDF)(外部)
2020年9月策定の計画本文。建材由来の廃プラ排出量や最終処分の推定、再生資材の将来的な再リサイクルにも言及している。
国土交通省「アスファルト合材への再生骨材混入に関する全国調査について」(外部)
アスファルト合材への再生骨材混入に関する全国調査の結果。対象1,104件のうち72件で混入を確認し、41件は欠測で確認できなかった。
国土交通省「アスファルト合材の不正納入に関する有識者委員会 中間報告書」(外部)
当面の使用における安全性には直ちに問題があるわけではないとしつつ、長期耐久性は知見が不足するとして経過観察を求めた中間報告。
国土交通省九州地方整備局「令和7年度 指名停止一覧」(外部)
鹿島道路への指名停止措置が、令和7年4月11日から同年8月10日までの4か月間であったことを確認できる発注機関の公表一覧である。
日本改質アスファルト協会 用語解説(外部)
動的安定度やホイールトラッキング試験など、舗装材料の専門用語をまとめた解説ページ。数値の取り扱いに関する注意も付されている。
【参考記事】
Evaluation of Post-Consumer Recycled Plastics in Asphalt Mixtures via the Dry Process(外部)
米国の公的研究プログラムによる報告書。樹脂種や純度、汚染の違いが性能の再現性と仕様化を難しくする点を詳細に検討している。
Engineering properties, microplastics and emissions assessment of recycled plastic modified asphalt mixtures(外部)
LDPEやPE・PP系の再生プラスチックを用いた評価。疲労抵抗性は最大150%向上した一方、耐水性は5〜22%低下したとする。
Paving roads with recycled plastics: Microplastic pollution or eco-friendly solution?(外部)
廃プラ改質アスファルトからのマイクロプラスチック放出量を定量化した研究。環境中への放出に普遍的なしきい値がないと指摘する。
Multi-recyclability of asphalt mixtures modified with recycled plastics(外部)
廃プラで改質した混合物を複数回にわたり再利用した場合の性能を評価した研究。50%の再生率を含め、循環の二巡目以降を扱う検証事例の一つ。












