AIに仕事を手伝わせるたび、その都度「どこまで進めたか」を説明する必要はなくなるのでしょうか。ChatGPT for Macの新機能「Computer History」は、Mac上の作業履歴をAIの文脈として活用し、仕事の再開や自動化につなげる新しい入口を示しています。
OpenAIは、macOS版ChatGPTに、アプリやWebサイトでの操作履歴を記録してChatGPTとCodexから利用できる「Computer History」を追加した。従来の「Chronicle」を置き換える機能で、スクリーンショットではなくmacOSのアクセシビリティ機能からクリックや入力などの操作イベントを取得する。
ChatGPT Pro、Business、Enterprise向けにオプトインで提供され、操作イベントはMac上に最大48時間一時保存される。履歴検索や作業要約のほか、反復作業からSkillsやAutomationsを提案する機能も備える。
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ChatGPT for Mac adds opt-in Computer History feature, replacing Chronicle
【編集部解説】
Computer Historyで注目したいのは、単に過去の操作を検索できることではありません。ChatGPTが、ユーザーがMac上で進めていた仕事の文脈を後から参照できるようになる点です。
OpenAIはComputer Historyについて、ユーザーが選択したアプリやWebサイトでの活動をChatGPTとCodexが参照し、細かな状況を再説明しなくても作業を続けられる機能と説明しています。
従来、生成AIに途中から仕事を引き継がせる場合、「どの資料を見ていたか」「何を調べたか」「どこまで作業したか」をユーザーがプロンプトとして入力する必要がありました。Computer Historyは、この準備作業の一部をMac上の操作履歴から補う仕組みです。
たとえば、複数のWebページや文書を行き来しながら調査したあとで、「さっき調べていた内容を整理して」と頼むような使い方が考えられます。Computer Historyが十分な文脈を保持していれば、AIとの会話を始める前に情報を一から渡す必要が少なくなります。
さらに興味深いのが、Computer HistoryがSkillsやAutomationsにつながる点です。元記事によれば、ChatGPTは繰り返されている作業を認識し、それをSkillsやAutomationsに変換する提案を行う場合があります。
OpenAIはSkillsを、特定の作業を一貫した方法で実行するための再利用可能なワークフローと説明しています。Skillには指示、例、コードなどを含めることができ、必要な場面でChatGPTが利用できます。
ここには、ChatGPTのデスクトップ利用に対する設計思想の変化が読み取れます。これまではユーザーが「AIに何をさせるか」を先に定義する使い方が中心でした。一方、Computer Historyでは、普段の仕事をAIが参照し、その中から繰り返し発生する手順を見つけ、再利用可能な処理へ移していく方向が見えてきます。
つまり、「プロンプトを書く → AIが作業する」という関係から、「人間が普段行っている仕事をAIが理解する → 必要な部分をAIのワークフローに変える」という流れへ広がる可能性があります。これは公式が明言した将来像ではなく、Computer HistoryとSkillsの機能構成から読み取れる編集部の解釈です。
一方、作業履歴をAIが参照する以上、導入時にはプライバシーの確認が欠かせません。
Computer Historyはデフォルトで無効になっており、ユーザーが明示的に有効化するオプトイン方式です。対象となるアプリやWebサイトを選択できるほか、一時停止、タイムラインの確認、個別項目の削除も可能です。また、スクリーンショット、画面録画、マイク入力、システムオーディオは記録せず、プライベートブラウジングも対象外です。
対象となるアプリやWebサイトをユーザーが選択できる設計になっており、AIにどの範囲まで仕事を見せるかを利用者側で調整できます。
仕事で利用する場合は、単に機能をオンにするだけでなく、機密情報を扱うアプリを対象から除外することが推奨されています。特にBusinessとEnterpriseでは、管理者がアクセスを許可したうえで、各ユーザーが個別にオプトインする仕組みです。
なお、通常のChatGPT macOSアプリにおけるチャットやアップロードファイルなどのデータ保持については、Computer History固有の履歴処理とは別にOpenAIの既存データポリシーが適用されます。
Computer HistoryによってChatGPTそのものが文書編集ソフトやブラウザを置き換えるわけではありません。今回追加されたのは、それらのアプリを横断して「ユーザーが何をしていたか」という文脈をChatGPTとCodexへ渡す層です。
ここが今回の機能の重要なポイントです。生成AIを使うために仕事をChatGPTへ移すのではなく、すでに行っている仕事の側へChatGPTが近づいています。
さらに、その履歴がSkillsやAutomationsへの入口になるなら、Computer Historyは単なる「過去を思い出す機能」ではなく、人間の日常的な操作から自動化できる仕事を発見する仕組みにもなり得ます。
現時点ではChatGPT Pro、Business、Enterpriseが対象で、EEA、英国、スイスでは提供されていません。そのため、すべてのMacユーザーがすぐ利用できる機能ではありません。
それでも、AIに毎回仕事を説明する段階から、AIが仕事の継続的な文脈を持つ段階へ進み始めたことは、デスクトップAIの使い方を考えるうえで重要な変化といえます。
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【編集部後記】
今回のComputer Historyを見て、ChatGPTが「使うときだけ呼び出すAI」から、日々の仕事の流れを理解する存在へ近づいていると感じました。
特に興味深いのは、履歴を残すこと自体より、そこから反復作業を見つけてSkillsやAutomationsへつなげようとしている点です。自分でも気づいていない「毎回同じことをしている作業」が、AIによって可視化される場面は増えていきそうです。
一方で、仕事の文脈をAIに渡すほど、どこまで記録を許可するかという判断も重要になります。
便利さとプライバシーを切り離さずに考えることが、これからのデスクトップAIでは当たり前になっていくのかもしれません。
【用語解説】
Computer History(コンピューター履歴)
ChatGPT macOSアプリで、ユーザーが選択したアプリやWebサイトでの操作イベントを記録し、ChatGPTやCodexが過去の作業文脈を参照できるようにするオプトイン機能。スクリーンショットや画面録画、マイク入力、システムオーディオは記録対象外。
Chronicle(クロニクル)
Computer History以前にOpenAIが研究プレビューとして提供していた、コンピューター上の活動履歴をAIから利用するための実験的機能。今回Computer Historyへ置き換えられた。
Skills(スキル)
特定の作業をChatGPTが一貫した方法で実行するための再利用・共有可能なワークフロー。指示、例、コードなどを含めることができ、必要な場面でChatGPTが利用する仕組み。
Automations(オートメーション)
繰り返し行う作業を自動実行するためのワークフロー。Computer Historyでは、ユーザーの反復作業を検出した際に、SkillsやAutomationsとして再利用することを提案する場合がある。
Codex(コーデックス)
OpenAIが提供するソフトウェア開発向けAIエージェント。Computer HistoryではChatGPTとともに、ユーザーが許可したMac上の活動履歴を参照できる。
【参考リンク】
OpenAI(外部)
ChatGPT、Codexなどを開発・提供するAI企業。製品情報、研究、安全性への取り組みなどを公開。
ChatGPT(外部)
OpenAIが提供するAIサービス。Computer HistoryはmacOS版ChatGPTの対象プランで利用できる機能として提供。
ChatGPT macOSアプリ(外部)
ChatGPTをMac上から利用するためのOpenAI公式デスクトップアプリ案内ページ。
【参考記事】
Computer History|ChatGPT Learn(外部)
Computer Historyの公式説明。対象プラン、オプトイン方式、対象アプリの選択、記録される情報と除外される情報、地域制限などを確認できる。
Skills in ChatGPT|OpenAI Help Center(外部)
ChatGPTのSkillsを再利用可能なワークフローとして説明する公式ドキュメント。指示、例、コードなどを組み合わせて特定の作業方法を定義できる。
How is data retained in the macOS app?|OpenAI Help Center(外部)
ChatGPT macOSアプリにおける会話やアップロードファイルなどの保持方針を解説する公式文書。Computer History固有の履歴処理とは分けて確認する必要がある。


















