生成AIやノーコードツールの登場で、Webサイトを「作る」ことのハードルは、かつてないほど下がりました。プロンプトを入力すれば数分でデザインが生成され、コードを書かずにページを公開できる時代です。しかしその一方で、「作れた」サイトが事業の資産として機能しているケースは、思いのほか少ないかもしれません。独自ドメインの設定、セキュリティ対応、AI検索への最適化——制作ツールが肩代わりしてくれない領域は、依然として残っています。「作る」の先に何があるのか。大阪のブランディング会社が同時リリースした2つのサービスを入口に、その構造を読み解きます。
株式会社ディレクトリー(大阪市、代表:峯松 大治)は2026年6月15日、AIおよびノーコードツールで作成したウェブサイトを対象とした3つのサービスを同時リリースした。公開支援スポットサービス「SitePolish™」(初期29,800円税別〜)と、月額サブスクリプション型の運用サービス「DIRELTA™」(初期30,000円〜100,000円+月額29,800円〜、税別)がその中心2サービスだ。
あわせて無料診断ツール「DIRELTA CHECK™」も公開し、URLを入力するだけで90秒以内にサイトの資産性・安全性・成果性をスコアリングし、稟議用PDFレポートを発行する。同社は創業2007年のブランディング会社で、AI制作サイトの「公開」にとどまらず「資産化」まで専門家が伴走することに価値を置く。サービスの対象は個人事業主・小規模事業者から法人まで幅広く、法人には最初からDIRELTA™の利用を推奨している。
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「AI・ノーコードで作ったサイトを「公開」から「資産化」へ 株式会社ディレクトリー、SitePolish™ / DIRELTA™ を6月15日に同時リリース|PR TIMES
【編集部解説】
「作れる」と「使える」はまったく別の話です。
生成AIやノーコードツールの普及によって、Webサイトの制作そのものは誰にでも手の届くものになりました。プロンプトを入力すれば数分でデザインが生成され、Wix・STUDIO・Squarespaceといったプラットフォームを使えばコードを書かずにページを組み立てられます。ノーコード/ローコード市場は、2025年に350〜500億ドル、2026年に450〜660億ドルと年平均成長率27〜32%で成長しており、制作のハードルは確実に下がり続けています。
しかし、「作れる」ことと「事業で使える状態にある」ことの間には、依然として大きな溝があります。独自ドメインの設定、SSL証明書の取得と更新、サーバー環境の構築、フォームのセキュリティ対応、モバイル表示の最適化——これらは、デザインの生成とはまったく異なる専門領域です。AIがビジュアルを作り出せても、それを公開インフラとして成立させるための技術的なステップは、ツールが肩代わりしてくれるわけではありません。今回リリースされたSitePolish™は、この「最初の壁」を支援するサービスです。
ただし、公開が終着点ではないというのが、このサービスが提示するもう一つの問いかけです。
サイトを公開した後、それが事業の資産として機能しているかどうかは、また別の問題です。更新が止まり、セキュリティパッチが当たらず、ノーコードプラットフォームのAPIに依存したまま運用コストが肥大化する——こうした「公開後の劣化」は、制作のハードルが下がった結果として静かに広がっています。
同社が「DIRELTA™」のサービス要素として掲げる「AIO最適化」は、この文脈で注目に値する概念です。AIO(AI最適化)とは、従来のSEOがキーワード配置やリンク構築を中心としていたのに対し、AIの情報取得・評価プロセスそのものに着目したアプローチです。AIは複数のサブクエリを自動生成し、複数のページから情報を収集して回答を生成するため、AIに「参照される情報」として選ばれる状態を作ることが重要とされています。つまり、Google検索の上位に表示されることだけでなく、ChatGPTやGeminiといったAI回答エンジンに情報源として引用されるかどうかが、サイトの可視性を左右するフェーズに入りつつあります。
この変化は、AI制作ツールで作られたサイトに特有の問題を生みます。生成AIが量産するコンテンツは、構造的・意味的に均質化しやすく、AIに「選ばれる」情報としての独自性や信頼性を持ちにくい傾向があります。「誰でも作れる」ことの裏側で、「何を伝えるか」という情報設計の質が、かつてないほど重要になっているとも言えます。
SitePolish™とDIRELTA™の設計から読み取れるのは、「プロの介在価値は制作工程の上流にあるのではなく、公開後の運用と情報設計にある」という判断です。制作そのものはAIに任せ、人間の専門性は「作ったものが事業として機能しているか」を継続的に診断・調整する役割に集中させる——この役割分担のモデルは、Web制作業界がAI時代に向けて模索している一つの答え方です。もちろん、このモデルが市場で支持されるかどうかはこれからの話であり、同社のサービスは今日リリースされたばかりです。
【用語解説】
ノーコードツール
プログラミングの知識なしにWebサイトやアプリを構築できるツールの総称。Wix・STUDIO・Squarespace・Webflowなどが代表例。ドラッグ&ドロップ操作と視覚的なインターフェースで制作を完結できる。
AIO(AI Optimization)
AI検索エンジンやAIアシスタント(ChatGPT・Geminiなど)に情報源として引用・参照される状態を作るための最適化手法の総称。GEO(生成エンジン最適化)・AEO(アンサーエンジン最適化)・LLMO(大規模言語モデル最適化)とも呼ばれる。従来のSEOがキーワードやリンク構築を中心としていたのに対し、AIの情報評価プロセスに適した情報設計・コンテンツの独自性・信頼性を重視する点が異なる。
SSL(Secure Sockets Layer)
Webサイトとユーザー間の通信を暗号化するプロトコル。現在は後継のTLSが主流だが、総称としてSSLと呼ばれることが多い。独自ドメインでサイトを運用する際の基本的なセキュリティ要件であり、ブラウザでの「鍵マーク」表示に直結する。
サブスクリプション型サービス
月額または年額の定額料金を支払い、継続的にサービスを利用する形態。スポット(単発)契約と対比される。
【参考リンク】
SitePolish™ 公式サイト(外部)
AIおよびノーコードツールで制作したWebサイトをビジネス利用可能な状態に整えるスポット型支援サービスの公式ページ。料金・対応範囲・申込方法を確認できる。
DIRELTA™ 公式サイト(外部)
Webサイトの資産化・継続運用を支援する月額サブスクリプション型サービスの公式ページ。プラン比較・サービス詳細を掲載。
DIRELTA CHECK™(無料診断ツール)(外部)
URLを入力するだけで90秒以内にサイトの資産性・安全性・成果性をスコアリングし、稟議用PDFレポートを発行する無料ツール。
株式会社ディレクトリー(外部)
2007年創業の大阪発ブランディング会社。SitePolish™・DIRELTA™の提供元。ブランディング・リブランディング・採用企画・Web開発を主事業とし、AI時代のサイト公開・資産化サービスを新たに展開。
【参考記事】
SEOからAIOへ:AI時代の新たなコンテンツ最適化戦略|EXPACT(外部)
2025年後半から本格化したAI検索の仕組みと、従来のSEOとの違いを解説した記事。AIOの概念、クエリファンアウトの仕組み、コンテンツ品質が重要になる背景をまとめている。
2026年、今までのSEOは通用するのか?「AIO(AI最適化)」の最前線と、AIがWebサイトに与える真の影響|Web担当者Forum(外部)
AI検索がサブクエリを自動生成し複数ページから情報を収集する仕組み(クエリファンアウト)を詳述。AIOで「AIに引用される情報」として選ばれるための情報設計の考え方を解説している。
「ノーコード vs コード」論争の終わりに気づいてました?AI時代のサイト構築の判断軸を考える|note(外部)
ノーコード/ローコード市場の規模推計とGartner予測を引用しながら、AI機能を取り込むノーコードプラットフォームの現状と課題を整理した記事。
【関連記事】
Google公式が示した生成AI検索のSEO新ガイド、AEO・GEOは「依然SEO」
AI検索への最適化をめぐっては、Google自身が公式ガイドで整理した立場があります。AEO・GEOはSEOの外側にある別物なのか——その答えをまとめた記事も合わせてご覧ください。
ノーコードパスポート サファイア改定、生成AI領域を追加|AIエージェント時代の業務アプリ内製化スキルとは
ノーコードで作れる人が増えるなか、業界が求めるスキルの定義も変わりつつあります。資格・認定制度の最新動向をまとめた記事もあわせてどうぞ。
GoogleのAI検索が変える2025年のSEO――ChatGPT・Perplexityとの競合で失われるトラフィック
サイトを資産として育てる重要性が増す一方、AI検索によってサイトへの流入自体が変質しつつあります。トラフィック変化のデータをまとめた記事もご参照ください。
【編集部後記】
「作れる時代」に何が変わり、何が変わらないのかを、私たちはまだ整理しきれていないかもしれません。ツールが進化するほど、「それで何を伝えるか」という問いは軽くなるどころか、重くなっていくように感じます。AIが生成するサイトが増えるほど、情報の信頼性や独自性をどう担保するかは、作り手だけでなく使い手にとっても問われる課題になっていきます。制作のハードルが下がった分だけ、「何のために作るのか」という問いに向き合う時間が増えたとも言えます。今回取り上げたサービスが示すのは、AIと人間の役割分担の一つの答え方です。それが正解かどうかは市場が決めることですが、「公開の先を誰が担うか」という問いは、これからのWeb制作の核心であり続けるように思います。












