IMMENS|Epic Gamesの元開発者らが挑む「AIネイティブ」ゲームエンジン、開発基盤そのものを再設計

[最終更新]

Googleで優先するソースとして追加するボタン

生成AIをゲーム制作に取り入れる動きが広がる一方で、IMMENSは既存エンジンにAI機能を追加するだけではなく、AIエージェントとの協働を前提に開発基盤そのものを設計しています。その試みから、ゲーム制作ツールの次の形が見えてきます。


2026年8月18日、Epic Games、Guerrilla Games、Boss Key Productions、Appleなどでゲームエンジン開発に携わったベテランらによる、新しいゲームエンジン「IMMENS」の開発構想が報じられた。AIを活用し、開発チームがエンジンやツールを柔軟に拡張・カスタマイズできることを狙う。

プロンプトから完成したゲームを一括生成することよりも、AIがコードベースを理解し、開発ツールの作成やプロジェクトごとのエンジン調整を支援する設計を掲げている。

From: 文献リンクThree Epic veterans are building an AI-powered game engine to break the industry’s doom cycle

【編集部解説】

「AIゲームエンジン」は、ゲームを自動生成するためのものではない

IMMENSが興味深いのは、生成AIに「こんなゲームを作って」と指示すれば完成品が出てくる、という方向を前面に出しているわけではない点です。公式サイトが示しているのは、ゲームを構成するアセットやシステムをAIエージェントが理解し、人間がその結果を確認しながら継続的に編集できる開発環境です。

公式サイトでは、開発者がエージェントに一つの作業を指示し、その結果を確認して修正し、次の作業へ進むという「continuous loop」を想定しています。また、各アセットやシステムには構造化された機械可読なコンテキストを持たせ、変更履歴の由来も追跡できる設計を掲げています。

ここから読み取れるのは、AIをゲーム開発者の代わりに置くのではなく、ゲームエンジンの内部をAIが操作しやすい形に作り直すという発想です。従来型のゲームエンジンにAI機能を後付けするだけではなく、エンジン側のデータ構造やツール群を、最初から人間とAIの双方が扱える状態にする設計思想が見えます。

AIが扱いやすいよう、エンジン側を「開く」

その思想を支えているのが、IMMENSのモジュール型・拡張可能・オープンな設計です。公式サイトによれば、テキストベースのオープン標準形式を採用し、APIとMCP(Model Context Protocol)による相互運用性を提供する方針です。外部ツールを接続したり、新しいツールを作ったり、ゲームコンテンツを直接編集したりできる構造を掲げています。

エディターやコンテンツパイプラインについても、Pythonや標準的なアセット形式を広く使い、必要に応じてエディターそのものを組み替えられることを特徴としています。

これはAIとの相性という点で重要です。AIエージェントが開発作業に深く関与するには、「画面上のボタンを押す」だけでは足りません。どのオブジェクトが何を意味し、どの設定を変更すると何が起きるのかを、機械が読み取れる形で取得し、APIなどを通じて操作できる必要があります。

IMMENSは、AIモデルそのものの性能を競うというより、AIがゲーム開発環境へアクセスするための土台をエンジン側から整えることに重点を置いていると読み取れます。

巨大な統合環境を使うのではなく、必要な道具を作る

現在の主要なゲームエンジンは、レンダリング、物理演算、アニメーション、レベル制作、シェーダー、アセット管理など膨大な機能を一つの環境にまとめています。一方、IMMENSは自らを「monolith(巨大な一枚岩)」と対比し、開発チームが必要なワークフローに合わせてエディターやツールを構成できることを打ち出しています。

ここにAIが入ることで、「エンジンに用意された機能を探して使う」という開発から、「必要なツールをその場で作り、既存の環境へ接続する」という開発へ重心が移る可能性があります。

たとえば特定のゲームにしか必要のない編集ツールがあった場合、従来はエンジニアが専用ツールを設計・実装する必要がありました。IMMENSが掲げる構造では、AIエージェントがコードやゲームデータの構造を理解しながら、こうしたツール開発に関与する余地があります。ただし、AI自身がどこまで自動的にツールを生成・変更できるかは、現時点の公開情報だけでは判断できません。

実用性を判断するには、まだ情報が足りない

IMMENSは現時点で「Pre-alpha」とされ、公式サイトも「still in its early days」と説明しています。

そのため、一般開発者がすぐに既存のゲームエンジンから移行できる段階とは言えません。公開されている公式サイトでは、具体的な一般提供日、料金体系、日本向け提供条件などは確認できません。

一方で、レンダリング面ではリアルタイムGI、ニューラル超解像、レイトレーシングなどを掲げ、AAA向けコンソールからモバイルまでを想定したクロスプラットフォーム設計も示しています。さらに、大規模なシミュレーションや高速な起動、ホットリロードなど、AI以外のゲームエンジンとしての基盤性能も重視しています。

開発メンバーには、Unreal Engine 5やFortniteの開発・製品管理に携わったArjan Brussee氏、Unreal Engineのコア技術チームを率いたMichal Valient氏、長年Unreal Engineの開発者支援に携わったSjoerd “Hourences” De Jong氏が名を連ねています。

だからといって、IMMENSがUnreal EngineやUnityに置き換わると現段階で判断することはできません。ゲームエンジンには、技術性能だけでなく、ドキュメント、プラグイン、アセット、教育資源、開発者コミュニティ、長期的な互換性といったエコシステムが必要だからです。

IMMENSを見る上で当面注目すべきなのは、「AIでゲームを何本作れるか」ではありません。AIエージェントがソフトウェア開発の中心に入ることを前提にすると、ゲームエンジンそのものをどのような構造に作り直す必要があるのか。IMMENSは、その問いにゲーム開発側から答えようとしているプロジェクトだと捉えると、その特徴が見えやすくなります。

【関連記事】

Unity AIがオープンベータ公開、MCP Server標準対応で「クリエイター主権」のAI開発環境へ
Unityが2026年5月に公開したAI機能群を扱った記事。外部AIツールをMCP Server経由でゲームエンジンへ接続する点でIMMENSと共通する一方、既存エンジンへのAI統合と、AIを前提に新規設計するIMMENSという違いがある。

Aura AIがUnreal Engine向けに発表、VR開発を加速するAIエージェントが登場
Unreal Engineのプロジェクト文脈を理解し、実装やデバッグ、エディター操作を支援するAIエージェント「Aura」を扱った記事。IMMENSがエンジン側をAIネイティブに設計するのに対し、Auraは既存のUnreal Engine上へAIエージェントを組み込むアプローチ。

DreamCore Studio|AIと会話しながらゲームを作り込める国産ツール、提供開始
自然言語による対話からゲーム制作を進める国産AIゲーム制作ツールを扱った記事。制作インターフェース側からアプローチするDreamCore Studioに対し、IMMENSはゲームエンジンの基盤設計からAI対応を進める点が異なる。

【編集部後記】

今回のIMMENSの発表を見て、AIの進化はモデルそのものだけでなく、「AIが働くための道具側」をどう作り直すかという段階に入っていると感じました。ゲームを自動生成するという派手な方向ではなく、エンジン内部をAIが理解し、触れられる構造にする発想はかなり本質的です。特に興味深いのは、人間を置き換えるのではなく、人間とAIが同じ開発環境を共有することを前提にしている点です。今後は、AIの性能差以上に「どのソフトウェアがAIと協働しやすく設計されているか」が開発体験を左右するかもしれません。
まだPre-alpha段階ですが、ゲームエンジンという巨大な開発基盤を最初からAI前提で考え直す試みとして、今後の進展を追いたいところです。


【用語解説】

ゲームエンジン
ゲーム開発に必要な描画、物理演算、アニメーション、入力処理、アセット管理などの機能をまとめた開発基盤。代表例としてUnreal EngineやUnityがある。

AIエージェント
与えられた目的や指示に応じて、情報取得、ツール操作、コード編集など複数の処理を組み合わせながらタスクを実行するAIシステム。

MCP(Model Context Protocol)
AIアプリケーションと外部のデータ、ツール、ワークフローを接続するためのオープンプロトコル。ツール呼び出しや外部コンテキスト取得を共通方式で扱えるようにする仕組み。

リアルタイムGI(Global Illumination)
光が壁や床などで反射して生じる間接照明をリアルタイムで計算する技術。ゲーム内の光や影をより自然に表現するために利用される。

ニューラル超解像
機械学習を利用して低解像度の映像から高解像度の映像を推定・生成する技術。高い画質を維持しながら描画負荷を抑える目的などで使われる。

ホットリロード
アプリケーションやゲームエンジンを完全に終了・再起動することなく、コードやアセットなどの変更を実行中の環境へ反映する仕組み。

【参考リンク】

IMMENS(外部)
AIエージェントとの連携を前提に設計されたゲームエンジン「IMMENS」の公式サイト。モジュール型設計、API・MCP対応、レンダリング技術、開発チームなどを紹介。

Model Context Protocol(外部)
AIアプリケーションと外部ツールやデータを標準化された方式で接続するModel Context Protocol(MCP)の公式サイト。仕様や実装方法を公開。

Unreal Engine(外部)
Epic Gamesが提供するゲームエンジンの公式サイト。ゲーム、映像、リアルタイム3Dコンテンツ開発などで利用される。

Unity(外部)
Unityが提供するリアルタイム3D開発プラットフォームの公式サイト。ゲームを中心に幅広いインタラクティブコンテンツ制作に利用される。

【参考動画】

【参考記事】

IMMENS — The 3D Game Engine for the future|IMMENS(外部)
IMMENSの設計思想と主要機能を説明する公式ページ。モジュール型・拡張可能な構造、オープン標準形式、API・MCP対応、AIエージェントとの反復型ワークフローなどを確認できる。

Specification – Model Context Protocol|Model Context Protocol(外部)
MCPの公式仕様。AIクライアントと外部ツールやデータをどのように接続するかを定義しており、IMMENSが掲げるMCP相互運用性を理解するための一次情報。

Unreal MCP in Unreal Editor|Epic Games(外部)
Unreal Engine 5.8に実験的に搭載されたMCP機能の公式ドキュメント。AIエージェントからアクター配置やライティング設定などを操作できる。

Unity’s AI tools in beta: How to get started with MCP|Unity(外部)
Unity公式によるMCP Serverの解説。AIエージェントがシーン階層やGameObject、コンソール情報などへアクセスし、エディター操作を実行できる仕組みを説明。

Googleで優先するソースとして追加するボタン
投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

関連記事