Google Picsは既定でオン|使えるかは契約プランで決まる

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Googleが新しい画像編集ツールを出した、と聞いてドライブを開いても、何も変わっていない人がいます。理由はプラン名です。しかも管理者が何もしなければ、この機能は既定でオンのまま社内に届きます。9月1日に一般提供が始まったGoogle Picsを、日本の職場の条件から読み解きます。


Googleは9月1日(米国時間)、画像の生成と編集を行うツール「Google Pics」の一般提供を開始した。画像モデル「Nano Banana」を基盤とし、Web版の単体アプリ(pics.new)と、GoogleドキュメントおよびGoogleスライドへの統合で提供する。Googleドライブの保存画像を開いて編集する機能は数週間以内に展開する。

オブジェクト単位の編集、画像内テキストの編集と翻訳、クロップ、2Kまたは4Kへのアップスケール、バージョン履歴に対応する。対象はWorkspaceのBusiness Standard以上の4プラン、Google AI ProとUltra、Google AI Pro for Educationなど。生成と編集は日本語を含む29言語に対応する。

From: 文献リンクTry Google Pics: Easy image creation and editing in Google Workspace

【参考動画】

【編集部解説】

Workspaceで画像を生成したり編集したりできるのは、今回が初めてではありません。Googleスライドでは2025年9月から、画像を選んでプロンプトを打てば、ほかの部分をそのままに一部だけを直せるようになっていました。Googleドキュメントにも2026年7月、既存の画像や図を自然な言葉で調整する機能が加わっています。今回の発表で新しいのは、画像編集そのものではありません。オブジェクトを直接つかむ編集、画像内の文字の書き換え、バージョン履歴、共同編集をひとつにまとめた独立したアプリが、Workspaceの中にできたことです。

これまでWorkspaceに入っていたAI画像編集は、画像に対してプロンプトで指示を出す形が中心でした。Google Picsでは、画像の中の物体をひとつ選び、ほかの部分を変えずに動かしたり変えたりできます。Workspaceブログが冒頭で挙げている企業側の悩みは、結果のばらつき、終わらない試行錯誤のプロンプト、複数アプリをまたぐ手間の3つでした。画質はいまも訴求の中心にありますが、そこに「出た絵をどれだけ早く仕上げられるか」という視点が加わりました。編集の粒度が上がり、独立した作業場が加わった。ここが、この発表の大きな意味のひとつだと考えます。

日本語で使える

日本の読者にとって実務的に重要な事実がひとつあります。生成と編集に対応する29言語に、日本語が含まれています。提供地域も、Google Workspaceアカウントが使えるすべての国と地域です。

画像内に埋め込まれた文字を、デザインやフォントを崩さずに書き換えたり、別の言語に置き換えたりできる機能は、日本語の資料づくりでこそ効きます。イベントのチラシ、SNS用のバナー、製品写真に載せた注記。日付や価格をひとつ直すためにデザイナーへ戻していた作業が、その場で終わる可能性があります。海外向けに同じ素材を英語版へ差し替える、という使い方も同じ延長線上にあります。

現時点での動作環境はデスクトップです。スマートフォンで撮った写真をその場で加工する用途は、当面Googleフォトやほかのツールが担うことになります。

自社で使えるかどうかは、契約プランとアドオンで決まる

対象はWorkspaceのBusiness Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plusと、個人向けのGoogle AI Pro、Google AI Ultra、教育機関向けのGoogle AI Pro for Education、そしてAI Expanded Accessです。提供が終了しているAI Ultra Access、Gemini Business、Gemini Enterpriseの各アドオンでも利用できます。

この一覧にBusiness Starterは入っていません。Business StarterはWorkspaceの入門プランで、費用を抑えたい組織が最初に選びやすいものです。「Googleが画像編集ツールを出した」という見出しだけを見て自社のドライブを開いても、そこに現れない場合があります。使えるかどうかを確かめる最短の道は、管理コンソールで契約中のプランとアドオンを確認することです。

教育機関向けにGoogle AI Pro for Educationが含まれている点も、見落とされやすいところです。新学期の教材や掲示物をつくる場面で、そのまま使える環境にある学校があります。

既定でオン、という設計

情報システム部門にとって、今回の発表でいちばん先に読むべきなのはここでしょう。Google Picsは既定でオンの状態で展開され、ドメイン、組織部門、グループの単位で管理者が無効化できます。

展開は段階的です。Rapid Releaseに設定されたドメインは9月1日から、Scheduled Releaseのドメインは9月15日から始まり、いずれも表示されるまで最大15日かかります。社内から「メニューに出てこない」という問い合わせが来ても、設定の不具合とは限らないということです。

先に配られてから方針を決めるのか、届く前に線を引いておくのか。Scheduled Releaseに設定している組織なら、9月15日の開始までの2週間を社内ルールの確認に充てられます。Rapid Releaseの組織ではすでに展開が始まっているため、確認を急ぐことになります。画像の権利の扱い、社外に出す素材への使用可否、承認フロー。既存の規程がテキスト生成だけを想定して書かれている場合は、いま読み直しておく価値があります。

上限には期限がついている

生成AI機能の利用には上限があり、Googleは少なくとも2027年2月28日までは高い上限を提供し、以降については変更前に通知するとしています。またSlidesなどWorkspaceのほかの画面から呼び出したときは、従来の画像生成の上限が適用されます。

つまり、いま試して感じる快適さは、期限が明示された条件の上に成り立っています。本格導入を検討するなら、その期間内にどれだけの枚数を実際に使うのかを記録しておくと、条件が変わったときの判断材料になります。発表者自身が期日を示して知らせている部分であり、これから整えられていく領域です。

CanvaやAdobeの置き換えではない

今回の発表を、既存のデザインツールとの勝敗として読む向きもあります。ただ、Googleは競合の名前を挙げていません。2つのブログで繰り返し書かれているのは、アプリやタブを切り替えなくてよい、ということでした。

Picsが示しているのは、生成、オブジェクト単位の編集、文字の編集と翻訳、クロップ、アップスケール、バージョン履歴、そして共同編集です。一方で、ブランドキットによる色やフォントの統制、膨大なテンプレート、印刷入稿を前提とした仕様は、専用ツールが長い時間をかけて積み上げてきた領域です。両者は同じ「画像をつくる」という言葉で括られていても、担っている工程が違います。

多くの現場で起きるのは、どちらかが消えることではなく、境界の引き直しでしょう。スライドに貼る図をその場で直す作業はWorkspaceの中で完結し、ブランドを背負う制作物は引き続き専用ツールとデザイナーの手に残る。この線が動いたとき、時間が返ってきそうなのは、これまで「ちょっとした画像の直し」を誰かに頼んでいた人たちです。

タブを切り替えない、というのは地味な変化に見えます。けれど、切り替えの手間がなくなれば、人が「やろう」と思う回数も増えるかもしれません。資料に図を1枚足すかどうか。チラシの文字をもう一度直すかどうか。手間を理由に諦めていた小さな改善が、通りやすくなる。

Google Picsが本当に変えるのは、画像の質ではなく、画像に手を入れる回数なのかもしれません。この9月、日本の職場のドライブにも、その選択肢が静かに現れます。

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【編集部後記】

製品ページに並ぶデモ動画を順に見ていくと、題材が地味なことに気づきます。芝刈り機の商品写真を、背景のない状態から屋外の風景に置き直す。企業ギフトボックスの試作を4Kに上げて、企画書に貼る。イベントのチラシの文字を、最後にもう一度だけ直す。華やかな作例ではなく、どこかの会社で誰かが金曜の夕方にやっている作業ばかりです。Googleがこのツールで狙っている場所は、たぶんそこです。


【用語解説】

Nano Banana
Googleの画像生成・編集モデルの呼称。Google Picsの基盤に用いられている。今回の発表でGoogleは世代名を示しておらず、「Nano Banana」とだけ説明している。

オブジェクト単位の編集
画像の中の物体をひとつ選び、ほかの部分に影響を与えずに動かしたり変えたりする編集方法。画像全体にプロンプトを与えて作り直す方式と対になる考え方である。

アップスケール
すでにある画像の解像度を上げて拡大する処理。Google Picsは2Kまたは4Kへの変換に対応する。印刷やデジタルサイネージなど、大きく表示する用途で必要になる。

バージョン履歴
編集の過程を段階的に保存し、任意の時点へ戻せるようにする仕組み。GoogleドキュメントやGoogleスライドでは以前から使われてきた考え方で、画像編集にも持ち込まれた。

Rapid Release / Scheduled Release
Google Workspaceの新機能を受け取るタイミングの設定。Rapid Releaseは公開後すぐに、Scheduled Releaseは約2週間遅れて配信される。管理者が組織ごとに選択する。

組織部門
Google Workspaceの管理コンソールで、利用者を部署や拠点ごとに分けて設定を変えるための単位。英語ではOrganizational Unit(OU)と呼ばれる。

AI Expanded Access
Google Workspaceのアドオンのひとつ。基本プランに加えて契約することで、生成AI機能の対象範囲が広がる。

ブランドキット
企業のロゴ、指定色、書体などを登録しておき、制作物全体で見た目を揃えるための機能。デザインツールが備えていることが多い。

【参考リンク】

Google Pics(製品ページ)(外部)
Google Workspaceの画像生成・編集ツールの公式紹介ページ。用途別のデモ動画と提供条件のFAQを掲載している。

Google Pics(Webアプリ)(外部)
単体アプリとしてのGoogle Picsにアクセスする入口となるURL。対象プランを契約したアカウントでサインインすれば利用できる。

Google Pics の提供状況(ヘルプセンター)(外部)
対象アカウントの種類、対応言語、提供地域、生成AI機能の利用上限をまとめた公式ページ。自社で使えるかを確かめる一次資料になる。

Google Pics の使い方(ヘルプセンター)(外部)
画像の生成から編集、共有までの操作手順を解説したGoogle公式のヘルプページ。はじめて触れるときの手引きとして使える。

ユーザーの Google Pics をオンまたはオフにする(外部)
管理コンソールから、ドメインや組織部門、グループの単位でGoogle Picsの提供を制御する手順を説明した管理者向けの案内。

Google Workspace 料金プラン(外部)
Business StarterからEnterpriseまで、Google Workspace各プランの内容と価格を比較できる公式ページ。

Google AI プラン(外部)
個人向けのGoogle AI ProとGoogle AI Ultraについて、含まれる機能と料金を案内するGoogleの公式ページ。

【参考記事】

Google Pics brings pro-level AI image creation and editing to Google Workspace(外部)
法人利用における課題を3点に整理したうえで、対象となる4つのプランと編集機能を列挙したGoogle Workspace公式ブログの発表。

Google Pics brings pro-level AI image creation and editing to Google Workspace(外部)
既定でオンの状態で展開されること、2種類の展開日程、2027年2月28日までの利用上限の扱いを記した管理者向けの案内である。

Use Nano Banana to edit images in Google Slides and Vids(外部)
GoogleスライドとGoogle Vidsの画像編集モデルをNano Bananaへ更新したことを伝える2025年9月の告知。今回の前史にあたる。

Generate and edit visuals with Gemini in Google Docs(外部)
Googleドキュメント内で画像や図を生成し、既存の画像を自然な言葉で調整できるようにしたことを伝える2026年7月の告知。

Google、AI画像生成・編集ツール「Google Pics」提供開始 特定オブジェクトの編集や文字翻訳も可能(外部)
提供の対象と主要な機能、そしてGoogleフォトとの違いを簡潔にまとめた、日本語での第一報にあたるニュース記事となっている。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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