SNS運用をAIにどこまで任せられる?成果につなげる8工程と人の役割

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「AIでSNS運用」と聞くと、投稿文や画像、動画をAIに作らせることを思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ、コンテンツを一つ作れることと、SNSアカウントを継続して伸ばせることは別です。

SNS運用で結果を出すには、外部で伸びている投稿を調べ、伸びた要素を抽出し、自社や商品の情報と掛け合わせて発信する必要があります。投稿後は結果を分析し、そのデータを次の企画へ戻します。AIが力を発揮するのは、この情報を蓄積し、組み合わせ、次の企画や台本へつなげる部分です。

一方で、アカウントの目的、ターゲット、コンセプトは人が決めます。Instagramリールなどのリサーチも、これまでの実務ではAIだけに任せるより、人が実際の投稿を見て選んだ方が精度の高い結果になっています。実在する人や商品、場所を映すなら、撮影も人が行わなければなりません。

この記事では、X、Threads、Instagram、TikTok、YouTubeなどに共通する考え方を扱います。撮影や編集については、InstagramリールやTikTok、YouTubeショートなどの動画投稿を想定して説明します。

SNS運用で蓄積するナレッジは3種類ある

私がSNS運用で重視しているのは、投稿を作ることよりも、運用するほど判断材料が増えていく状態を作ることです。蓄積する情報は、大きく3種類に分かれます。

ナレッジ 中身 主な入手先
外部のSNSナレッジ 伸びている投稿のテーマ、冒頭で指を止める言葉や映像、構成、画角、テンポ、投稿後の案内など 競合・参考アカウントのリサーチ
自社・商品のナレッジ 自社の強み、商品情報、顧客の悩み、実績、失敗、意見、現場で受けた質問 社内資料、担当者へのヒアリング、顧客対応
自社投稿のデータ 投稿ごとの表示、再生、保存、共有、クリック、問い合わせ、良かった点と悪かった点 投稿後の分析と記録

企画や台本は、次の掛け合わせから作ります。

外部で伸びている要素 × 自社・商品ナレッジ × 自社投稿の分析結果 × アカウントコンセプト

外部の投稿をそのまま書き換えるのではありません。伸びている理由をフックや構成などの要素に分解し、そこへ自社にしか出せない情報を入れます。さらに、自社で過去に反応が良かったテーマや構成が分かってきたら、その結果も次の企画へ反映します。

AIには、この3種類の情報を整理し、共通点を探し、企画案や台本の形へまとめる仕事を任せられます。運用を続けるほどAIへ渡せる材料が増えるため、次の企画も作りやすくなります。

SNS運用のナレッジ循環の図。外部のSNSナレッジ、自社・商品のナレッジ、自社投稿のデータの3つが「次の企画・台本」に集まり、投稿、分析・記録、次の企画へ反映と進んで、再び企画・台本へ戻る
図2:外部・自社のナレッジを、投稿後の分析から次の企画へ戻す流れ

SNS運用を8工程に分ける

私のSNS運用は、最初に一度決める「初期設計」と、投稿するたびに繰り返す「運用ループ」に分かれます。

区分 工程 人が担うこと AIに任せられること
初期設計 1. 目的・KGI・KPIを決める SNSを何のために使い、事業として何を優先するか決める 目的と指標の候補を整理する
初期設計 2. 媒体ごとにリサーチする ターゲット、競合、伸びている投稿を実際に見て判断する 収集後の文字起こし、分類、共通点の整理を補助する
初期設計 3. アカウントコンセプトを決める 誰に、どんな価値を、どんな発信で届け、どこへ案内するか決める プロフィールや発信テーマの案を作る
運用ループ 4. 外部投稿を調べてナレッジ化する 参考にする投稿を選び、真似する要素と使わない要素を判断する フック、構成、画角、テンポなどを分解して記録する
運用ループ 5. 企画・台本を作る 自社が伝える事実と意見を出し、採用する企画を決める 外部・自社・商品・分析ナレッジを掛け合わせて案を作る
運用ループ 6. コンテンツを制作する 必要に応じて撮影し、公開できる内容か確認する 画像・動画生成、撮影指示、編集、テロップ作成などを行う
運用ループ 7. 確認して投稿する 事実、権利、機密情報、表現を最終確認し、公開を承認する 確認項目の提示、投稿文の整形、予約投稿を補助する
運用ループ 8. 分析して次の企画へ戻す 数字の意味を判断し、次に何を変えるか決める 数値を集計・比較し、傾向と改善案を整理する
Infographic titled 'SNS運用を8工程で分ける' showing an eight-step social media workflow with teal (初期設計) and orange (運用ループ) panels and icons for each step.
図1:SNS運用の8工程と、人・AIの役割

ここから、それぞれの工程を詳しく説明します。

初期設計は人が中心になって決める

1. 目的・KGI・KPIを決める

最初に決めるのは、SNSを使う目的です。認知を増やすのか、問い合わせを増やすのか、採用につなげるのかによって、ターゲットも発信内容も見る数字も変わります。最終的に達成したい目標をKGI、その途中で確認する指標をKPIとして決めます。

たとえば、経営者からAI研修の相談を増やしたいアカウントと、求職者へ会社の雰囲気を伝える採用アカウントでは、同じ会社でもコンセプトを分けた方が運用しやすくなります。誰に何を売りたいのか、投稿を見た人に最終的にどう行動してほしいのかまで決めます。

AIはKGIやKPIの候補を整理できますが、売上、問い合わせ、採用、認知のどれを優先するかは決められません。ここは事業を理解している人が決める工程です。

2. 媒体ごとにリサーチする

「SNS」と一括りにせず、運用する媒体ごとにリサーチします。XやThreadsでは、書き出し、文章構成、引用や画像の使い方が重要です。Instagramリール、TikTok、YouTubeショートでは、冒頭の映像、話す順番、画角、カット、テロップ、BGM、テンポまで見ます。

特にInstagramリールは、投稿を実際に見なければ分からない要素が多くあります。これまでの運用では、AIに候補を集めさせるより、人が発見タブや参考アカウントを見て、フォロワー数に対して再生数が高い投稿を選んだ方が、結果的に良い企画につながりました。

AIを使わないという意味ではありません。人が選んだ投稿を文字起こしし、冒頭のフック、構成、画角、テンポ、投稿後の案内などに分解して、比較できる形へ整理する仕事はAIに向いています。

この段階のリサーチは、どの市場で、どんなターゲットに、どの立ち位置で発信するかを決めるために行います。運用開始後は、工程4で外部の伸びている投稿を継続的に集め、企画の材料を更新します。

3. アカウントコンセプトを決める

リサーチ結果を踏まえ、アカウントコンセプトを決めます。最低限、次の内容を言葉にします。

  • ターゲットは誰か
  • どんな悩みや欲求に応えるか
  • 何を発信するアカウントか
  • 自社だから出せる情報は何か
  • 投稿を見た人に、どこへ進んでほしいか

AIに複数案を出させることはできますが、どのターゲットと商品を優先するか、自社がどの立ち位置で発信するかは人が決めます。この初期設計が終わっていない状態でAIに投稿を量産させても、誰に何を届けるアカウントなのかが定まりません。

私自身、自社の発信で投稿文を作る作業から先に始め、文章はできたのに運用が始まらなかった経験があります。目的別のアカウント設計、売る商品、発信者としての考え、参考にする過去投稿、投稿後の記録先が揃っていなかったことが原因でした。

運用ループでは、外部と内部のナレッジを増やし続ける

4. 外部投稿を調べてナレッジ化する

初期設計が終わった後も、外部リサーチは続けます。Instagramリールであれば、再生数が伸びている動画を見つけ、次のような要素に分けます。

  • どの言葉や映像で指を止めているか
  • どの順番で話しているか
  • どこで画角や映像を変えているか
  • テロップ、BGM、効果音をどう使っているか
  • 保存、共有、フォロー、問い合わせへどうつなげているか

ここで集めるのは投稿そのものではなく、伸びた要素です。構成やセリフをそのまま使うのではなく、「最初に損失を伝えている」「結論を見せてから理由を話している」「実物を見せながら説明している」といった形に抽象化し、外部のSNSナレッジとして残します。

5. 外部ナレッジと自社情報から企画・台本を作る

企画・台本を作る担当者には、外部で伸びている投稿のナレッジだけでなく、自社の発信コンセプト、商品情報、顧客から受けた質問、実績、失敗、過去投稿の分析結果も渡します。

たとえば、参考にしたリールの冒頭が「知らないと損する〇〇」という構成だったとしても、その言葉をそのまま使うわけではありません。自社のターゲットが本当に困っていることと、自社が実際に答えられる内容を入れ、別の企画として作ります。

AIは、この掛け合わせを大量に試すことができます。同じ外部の型から複数の企画を出したり、過去に反応の良かったテーマを別の切り口へ変えたり、企画から動画台本、撮影カット、テロップ案までつなげたりできます。

企画・台本をAIに作らせるときは、少なくとも次の情報を渡します。

  • アカウントの目的とコンセプト
  • ターゲットと、投稿後に取ってほしい行動
  • 商品・サービスの内容
  • 参考にする外部投稿と、そこから抽出した伸びた要素
  • 自社の経験、実績、意見、顧客から受けた質問
  • 過去の自社投稿で良かった点と悪かった点
  • 公開できない情報と使わない表現
  • 今回作るものが、企画、台本、撮影指示のどこまでか

この材料がなければ、AIはどの会社にも当てはまる一般的な投稿しか作れません。反対に、外部と内部のナレッジが整理されていれば、企画・台本担当のAIは同じ判断材料を繰り返し使えます。

自社投稿のデータがまだない段階では、外部のSNSナレッジと自社・商品ナレッジから始めます。投稿と分析を重ねると内部データが増え、「このターゲットには、このテーマ、この冒頭、この構成が反応されやすい」という自社独自の判断材料が加わります。

6. コンテンツを制作する

コンテンツ制作でAIに任せられる範囲は、作る投稿の形式によって変わります。

投稿形式 撮影 編集・制作でAIに任せられること 人が必要なこと
X・Threadsなどの文章投稿 不要 投稿文の初稿、言い換え、画像案の作成 事実、意見、最終表現の確認
人や商品、店舗を映す動画 必要 台本、撮影カット、テロップ、カット編集などの補助 実際の撮影、出演、現場判断、最終確認
すべて生成AIで作る動画 不要 映像、音声、画像、編集済み動画の生成 企画、事実、権利、品質の確認
実写とAIを組み合わせる動画 必要 実写素材の編集、字幕、音声、追加素材の生成 必要な実写素材の撮影、完成形の確認

実在する人物や商品、場所を撮る作業はAIにはできません。自社の人が出演する動画や、店舗・商品の実物を見せる動画なら、人が撮影する必要があります。

一方で、すべてを生成AIで作る動画なら撮影そのものが不要です。人が撮影した動画でも、編集AIの進化により、カット、テロップ、音声の整理などは実用できる範囲が広がっています。撮影が必要か、編集をどこまでAIへ任せるかは、発信したい内容と求める品質から決めます。

7. 確認して投稿する

完成した投稿は、公開前に人が確認します。最低限見るのは、次の5点です。

  1. 数字、商品名、人物名などの事実に誤りがないか
  2. 顧客情報、個人情報、社内情報が入っていないか
  3. 画像、音楽、文章、商標を公開できるか
  4. 自社の経験や意見が入り、一般論だけになっていないか
  5. ターゲットと読後の行動が一つに絞られているか

予約投稿や投稿文の整形はAIや自動化で補助できます。ただし、公開の責任はAIではなく運用する会社にあります。最終承認は人が行います。

8. 分析結果を記録し、次の企画へ戻す

投稿した後は、数字を見て終わりではなく、投稿の内容と結果をセットで記録します。

  • どの目的とターゲットに向けた投稿か
  • 参考にした外部投稿と、取り入れた要素は何か
  • どのテーマ、冒頭、構成、投稿形式を使ったか
  • 表示、再生、保存、共有、クリック、問い合わせなどの結果
  • 良かった点と悪かった点
  • 次の投稿で何を一つ変えるか

AIは、投稿ごとの記録を集計し、反応の良いテーマ、冒頭、構成、尺、見せ方の傾向を探せます。人は、その数字が事業の目的にとって何を意味するかを判断し、次に試す内容を決めます。

ここで得た結果が、自社アカウントのナレッジになります。次の企画では、外部で伸びている要素に、自社・商品の情報と自社投稿の分析結果を掛け合わせます。この循環を続けることで、企画や台本を作る担当者は、勘だけではなく、外部と内部の両方のデータを使って次の投稿を作れるようになります。

AIを組み込んだSNS運用で、実際に結果は出るのか

AIを使ってコンテンツを作っても、本当に数字が伸びるのか。ここが一番気になる方も多いと思います。

個別のアカウント名や投稿ごとのデータは守秘義務のため公開できませんが、AIを中心に運用した事例では、3カ月でフォロワーが約7,000人増え、インプレッション(表示回数)は500万超、リーチ(届いたアカウント数)は300万超という結果が出ています。

もちろん、AIを使えば同じ数字が出るという意味ではありません。アカウントのジャンル、開始時点、投稿内容、投稿量、プラットフォームの状況によって結果は変わります。ただ、AIで作ったコンテンツだから伸びない、という段階ではなくなっています。

結果を分けるのは、AIで投稿を作ったかどうかより、何をナレッジとして渡し、公開後の結果を次の企画へ戻せているかだと考えています。

これから始める企業が最初に行うこと

初めてAIをSNS運用へ組み込む場合は、次の順番で進めると全体がつながりやすくなります。

  1. 運用する媒体とアカウントの目的を決める
  2. ターゲット、商品、投稿後に取ってほしい行動、見る数字を決める
  3. 媒体内で伸びている投稿を人がリサーチする
  4. 伸びた要素を分解し、外部のSNSナレッジとして残す
  5. 自社・商品のナレッジを整理する
  6. AIへ外部・自社・商品ナレッジを渡し、企画と台本を作る
  7. 投稿形式に合わせて撮影、AI生成、編集を行う
  8. 投稿結果を記録し、次の企画へ戻す

複数の媒体やアカウントを同時に進めても構いません。自動化できる工程を最初から自動化することもできます。ただし、目的、リサーチ、アカウントコンセプトが決まっていない状態で、AIに投稿だけを量産させないことが重要です。

AIへ任せる仕事を増やすこと自体が目的ではありません。外部のリサーチと自社の結果がナレッジとして増え、そのナレッジを使って次の企画の精度を上げられる状態を作ることが、AIをSNS運用へ取り入れる意味だと思っています。

自社のSNS運用をAIと一緒に整理したい方へ

ここまで読んでも、「自社の場合は何をAIに任せられるのか」「誰がどこを確認すればよいのか」は、SNSの運用目的、KPI、商品、担当人数、使っている媒体等によって変わります。

株式会社ノビシロでは、SNS運用とAI活用の両方を扱い、発信目的の整理から、リサーチ、企画、原稿作成、確認、分析までの仕組みづくりを支援しています。AI法人研修、AI顧問、SNS運用支援の中から、現在の状況に合う進め方を一緒に整理します。

まだ依頼内容が決まっていない段階でも問題ありません。まずは、現在どのようにSNSを運用していて、どこに時間がかかっているかをお聞かせください。

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藤本 直弥
株式会社ノビシロ 代表取締役。「世の中に成長のキッカケを」をミッションに、SNSとAIを活用し、企業が持つ価値と伸びしろを成果につなげる支援を行っている。 SNSアカウントの初期設計から企画・制作、分析までを一貫して支援。これまでに支援したSNSアカウントの累計フォロワーは1,200万人を超える。リール1本で5,900万再生を記録したほか、100万再生超の動画を100本以上制作支援。 「社内にSNSのプロを育てるSNS法人研修」や「AI担当者を育成するAI法人研修」を通じて、企業が自社で運用を続けられる人材と仕組みづくりにも取り組んでいる。 AIを中心に運用したSNSでは、3カ月でフォロワー約7,000人増、インプレッション500万超、リーチ300万超の事例も生まれている。 SNSで価値を届け、AIで時間を生み出す。企業ごとの課題に合わせ、運用設計から社内人材の育成まで支援している。

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