Last Updated on 2025-05-14 14:49 by admin
TikTokを運営するByteDanceは2025年5月13日(現地時間、日本時間5月14日)、新機能「AI Alive」の提供を開始したと発表した。AI Aliveは、TikTok Storiesのカメラ機能内で利用でき、ユーザーがアップロードした静止写真をAIが自動的に解析し、動きや環境音、エフェクトを加えた最大数秒のショート動画へと変換する。ユーザーはプロンプト(指示文)を入力することで、写真にどのような動きを加えるかを指定できる。
生成された動画にはAI生成であることを示すラベルが付与され、さらにC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)準拠のメタデータが自動的に埋め込まれることで、コンテンツの信頼性や透明性が担保されている。安全対策としては、画像アップロード時と動画公開前の二段階でAIと人によるモデレーション(審査)が行われ、不適切なプロンプトや生成物が公開されないよう配慮されている。
この機能は、TikTokが2023年に導入したテキストから画像を生成するAI機能の進化版と位置付けられている。競合のSnapchatも類似機能の開発を表明しているが、現時点で一般公開されているのはTikTokのみである。TikTokは10億人を超えるグローバルユーザーを有しており、今回のAI Alive導入によって、より多くのユーザーが手軽にクリエイティブな動画コンテンツを制作できる環境を整えた。
References:
TikTok’s new AI Alive feature turns photos into videos | The Verge
TikTok launches AI Alive, a new image-to-video tool | TechCrunch
Introducing TikTok AI Alive | TikTok Newsroom
TikTok AI Alive filter turns photos into videos | 9to5Mac
TikTok just added an AI-powered image-to-video feature | Engadget
【編集部解説】
TikTokが発表した「AI Alive」は、静止画から動画を自動生成するAI技術の実用化において画期的な進展です。従来、動画編集やアニメーション制作には専門的な知識や高度なソフトウェアが必要でしたが、この機能により誰でも直感的に写真を動きのある映像に変換できるようになりました。特にプロンプト入力による細やかな演出指定が可能な点は、クリエイティブ表現の幅を大きく広げます。
AI Aliveの普及によって、日常の写真がよりダイナミックな形で記録・共有されるようになるでしょう。例えば、旅行やイベントの写真に動きや音を加えて臨場感を演出したり、思い出の一枚をアニメーション化してSNSで発信するなど、これまでにない体験が一般化すると考えられます。TikTokというグローバル規模のプラットフォームでこの機能が提供されることで、AI生成コンテンツが一気に拡大する可能性も高いです。
一方で、AIによる画像・動画生成にはリスクも伴います。意図しない表情や動作の改変、さらにはディープフェイク技術の悪用など、社会的な懸念も根強く存在します。TikTokはこうしたリスクに対し、AI生成ラベルの表示やC2PA準拠のメタデータ埋め込み、二段階のモデレーション体制を導入することで透明性と安全性の確保を図っています。とはいえ、The Vergeなどのレビューでも指摘されたように、現時点ではAIの解釈が意図通りに働かないケースや、メタデータが削除された場合の追跡困難といった課題も残されています。
規制や業界標準の観点では、C2PAメタデータの採用が今後のAI生成コンテンツの信頼性担保に向けた重要な一歩となります。しかし、メタデータの改ざんや削除への対策、そしてユーザー教育の必要性など、解決すべき課題も多いのが現状です。
長期的には、AI Aliveのようなツールが普及することで、プロとアマチュアの境界が曖昧になり、誰もが簡単に高品質な映像作品を生み出せる時代が到来するでしょう。その一方で、著作権や収益分配、フェイクコンテンツ対策といった新たな社会的ルールの整備が急務となります。TikTokの今回の取り組みは、単なる新機能の追加にとどまらず、AI時代のクリエイティブと社会のあり方を問い直す契機となるはずです。
【用語解説】
AI Alive:
TikTokが提供するAI画像生成機能。静止写真をAIが解析し、動きやエフェクト、環境音を加えて短い動画に変換する。
C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity):
コンテンツの来歴や真正性を証明する国際的な技術標準。AI生成コンテンツにメタデータを埋め込むことで透明性を高める。
モデレーション:
投稿画像や生成動画、プロンプト内容をAIや人間が審査し、不適切なコンテンツを排除する仕組み。
【参考リンク】
TikTok(外部)
世界中で10億人以上が利用するショート動画プラットフォーム。AI Aliveなど最先端のクリエイティブ機能を提供している。
TikTok Newsroom(AI Alive公式発表)(外部)
TikTokがAI Aliveのリリースを公式に発表したページ。機能の詳細や安全対策、今後の展望などが解説されている。
ByteDance(外部)
TikTokを運営する中国発のテクノロジー企業。グローバルで多様なインターネットサービスを展開している。
C2PA公式サイト(外部)
コンテンツの信頼性と来歴証明を目的とした国際団体。AI生成コンテンツの透明性向上を推進している。