バックアップの画面に「ドライブを再接続してください」と表示されたら、たいていはケーブルかドライブを疑います。ところがMicrosoftによれば、そのドライブは正常に動いています。9月のWindows更新で、ファイル履歴は壊れていないものを指さすようになりました。
Microsoftは2026年9月19日、同月8日に配信したWindowsセキュリティ更新プログラムの既知の問題として、ファイル履歴がバックアップを作成・更新できなくなる事象を追加した。対象の端末では、ドライブが正常に接続され動作していても「ドライブを再接続してください」と表示される場合がある。「最終バックアップ」の日時が更新されない、以前バックアップしたファイルが「以前のバージョンはありません」と表示されるといった症状も記載されている。
イベントビューアーにFileHistory.exeとKERNELBASE.dllを参照するアプリケーションクラッシュが記録されることもある。Microsoftは原因を説明しておらず、回避策も示していない。解決は今後の更新で対応するとしている。
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Microsoft Confirms September 2026 Windows Updates Break File History Backups
【編集部解説】
バックアップが止まるとき、いちばん厄介なのは、止まったことが別の顔をして現れる場合です。今回の事象がそれにあたります。
ファイル履歴(File History)は、コントロール パネルの「システムとセキュリティ」から使うWindows標準のバックアップ機能です。指定したフォルダを外付けドライブやネットワーク上の場所へ定期的にコピーし、以前のバージョンを残しておきます。誤って上書きした資料や、消してしまった写真を取り戻すための仕組みです。
Microsoftが挙げている症状は、バックアップの作成・更新ができないこと、対応するドライブが接続され正常に動作していても「ドライブを再接続してください」と誤って表示されること、「最終バックアップ」の日時が更新されないこと、以前バックアップしたファイルが「以前のバージョンはありません」と表示されることです。あわせて、イベントビューアーにFileHistory.exeとKERNELBASE.dllを参照するクラッシュが記録される場合があるとしています。
読みどころは、Microsoftが「誤って表示される」と書いている点です。画面に出るのは、ドライブをつなぎ直せという指示です。ところが、つなぎ直すべきドライブのほうは正常に動いている。警告は出ているのに、指している先が違う。この表示を額面どおりに受け取ると、ケーブルやドライブを疑うほうへ時間を使うことになります。
もう一つの、見落としやすい手がかりがあります。「最終バックアップ」の日時です。Microsoftは、この日時が更新されない場合があるとしています。日時は画面を開かなければ見えません。自分から確認しにいかなければ、バックアップが止まっていることに気づけないままになります。
9月の更新に起きたことの順番
時系列を並べると、この問題の位置づけが見えてきます。
9月8日に月例のセキュリティ更新が配信され、11日にHyper-V上のLinux仮想マシンでの共有フォルダの問題、12日にUSB音声機器とリモートデスクトップサービスの問題が、それぞれ既知の問題として追加されました。14日には定例外の更新プログラムが公開され、このうちいくつかが解決しています。
ファイル履歴の問題が追加されたのは、その定例外更新から5日後の9月19日です。つまり14日の更新を当てても、この事象は解決しません。Microsoftのサポート文書にも、今後のWindows更新で対応すると書かれています。緊急の更新が出たからもう収まった、という理解は、今回は当てはまりません。
自分が対象かどうかの確かめ方
自分の環境が対象かどうかは、使っているバージョンの9月の更新プログラムのページで確かめられます。この既知の問題は9月19日付で、Windows 11 26H1のKB5124012、25H2と24H2のKB5124008、23H2のKB5122880に追加されました。Windows 10の22H2と21H2、そしてLTSC・LTSB系に向けた9月の更新プログラムのページにも、同じ項目が掲載されています。
ただし、どのページを開いても、症状の本文はKB5124008を名指ししています。23H2のページにも、Windows 10向けのページにも、同じ文面がそのまま置かれている。対象のバージョンは本文のKB番号ではなく、ページ冒頭の「Applies To」で読む必要があります。
更新プログラムをアンインストールするとファイル履歴が復旧した、という利用者報告を伝えるメディアもあります。ただし報告の出どころまでは確認できず、Microsoftが回避策として示したものでもありません。
9月の更新には、実際に悪用が確認されたものを含む多数の脆弱性修正が入っています。バックアップ機能を取り戻すために更新を外せば、その修正も同時に手放すことになります。データを守るために、データを狙う攻撃への防御を外す。この交換は割に合いません。
この秋、日本でも重なるもの
日本の読者にとって、時期が重なっているのが気になるところです。
Windows 11 24H2のHomeとProは、2026年10月13日に更新プログラムの提供を終えます。移行の前には、データを別の場所へ退避しておくことが勧められます。ファイル履歴を使って外付けドライブへ退避している端末では、その作業がいま空振りしている可能性があります。
専用のバックアップ製品やジョブの監視を備えていない環境では、ファイル履歴が主要な退避手段になっている場合があります。そうした環境ほど、異常に気づくための仕組みが薄くなります。
いま手元でできること
いま手元でできることは、そう多くありません。
コントロール パネルから「システムとセキュリティ」、「ファイル履歴」と進み、最終バックアップの日時を見ます。日付が止まっていれば、今回の不具合を含む、何らかのバックアップ異常の手がかりになります。この症状だけで原因が決まるわけではありません。復元画面から実際に数個のファイルを開き、過去のバージョンを取り出せるかを確かめます。イベントビューアーに、FileHistory.exeとKERNELBASE.dllを参照するクラッシュが記録されていないかも見ておきます。
修正が届くまでのあいだは、別の手段で控えを取っておくことになります。フォルダを手動で丸ごとコピーするだけでも、何もない状態からは大きく前進します。組織であれば、ジョブが成功したという表示だけを見るのではなく、復元を試すところまでを点検の範囲に入れておきたいところです。
今回の事案が思い出させてくれるのは、ずっと言われてきた一つの作法です。バックアップは、取った時点ではなく、戻せた時点で成立する。
ジョブが成功と表示されること。ドライブが接続されていること。設定が有効になっていること。これらはどれも、復元できることの証明ではありません。実際に戻してみたときにだけ、そのバックアップは初めてバックアップになります。
頻度はデータの重要度や更新の多さで決まりますが、たとえば四半期に一度、数個のファイルを戻してみる。最終バックアップの日時を見にいく。手間のかかる話ではありません。異常の見え方が分かりにくいと分かったいま、その確認を習慣の側に置いておく価値は、十分にあります。
【関連記事】
Windows 11 KB5124008でドメイン信頼が切れる|回避策公開
同じKB5124008で報告された別の既知の問題。ドメインとの信頼関係が切れる事象と、Microsoftが公表した回避策を扱った記事。
Microsoft KB5083769、Windows 11のバックアップ機能に障害──Acronis・Macriumなど主要製品で発生
2026年4月の更新でAcronisやMacriumなどのバックアップ製品が動かなくなった事案。原因は後日公式に説明された。
【編集部後記】
自分の端末でも、最終バックアップの日時を開いてみました。止まってはいませんでした。ただ、その日時を前回いつ見たのかは思い出せません。
バックアップは、動いていることを前提にしてしまう仕組みです。動いていないかもしれないと疑う習慣は、今回のような出来事がなければ始まらないのかもしれません。次に日時を見にいく日を、ひとまずカレンダーに入れておくことにしました。三か月後です。
【用語解説】
ファイル履歴(File History)
Windowsに標準搭載されたバックアップ機能。指定したフォルダを外付けドライブやネットワーク上の場所へ定期的にコピーし、過去のバージョンを保持する。Windows 8で導入され、コントロール パネルから利用する。
既知の問題(Known issue)
更新プログラムの配信後に判明した不具合を、Microsoftが公式に認めてサポート文書へ記載したもの。症状、対象、回避策、解決の見込みが段階的に追記される。
月例のセキュリティ更新
Microsoftが毎月第2火曜日(米国時間)に配信する定例の更新プログラム。日本時間では水曜未明にあたる。Patch Tuesdayとも呼ばれる。
定例外の更新プログラム(Out-of-band update)
月例の配信を待たずに緊急で公開される更新プログラム。深刻な不具合や、悪用が進む脆弱性への対応で用いられる。帯域外アップデートとも訳される。
Applies To
Microsoftのサポート文書の冒頭に置かれ、その更新プログラムが適用されるWindowsのバージョンとエディションを示す欄。
以前のバージョン
ファイルのプロパティから開ける、過去の状態を一覧する機能。ファイル履歴が保存した世代を、ここから取り出す。
イベントビューアー
Windowsがシステムやアプリケーションの動作記録を蓄積するツール。障害の発生時刻や、異常終了したプログラム名を確認できる。
KERNELBASE.dll
Windowsの中核的なAPIを提供するシステムファイル。アプリケーションが異常終了した際、クラッシュの記録に頻出するため、原因の特定には他の情報とあわせて読む必要がある。
LTSC/LTSB(Long-Term Servicing Channel/Branch)
機能追加を抑え、長期間セキュリティ更新のみを提供するWindowsの提供形態。産業機器、医療機器、ATMなど、環境を変えにくい用途で使われる。
リモートデスクトップサービス(RDS)
離れた場所にあるWindowsへ接続して操作する仕組み。企業の業務端末やサーバの運用で広く使われている。
【参考リンク】
September 8, 2026—KB5124008(Microsoft)(外部)
2026年9月8日公開のWindows 11 24H2/25H2向け更新プログラム。9月19日にファイル履歴の既知の問題が追加された。
September 8, 2026—KB5124012(Microsoft)(外部)
Windows 11 26H1向けの9月8日公開分。症状の本文はKB5124008を名指ししており、対象は「Applies To」で読む。
September 8, 2026—KB5122880(Microsoft)(外部)
Windows 11 23H2向けの9月8日公開分。同じ既知の問題が9月19日付で掲載され、変更履歴からも追加日を確認できる。
Windows release health(Microsoft)(外部)
Windowsの各バージョンについて、既知の問題や更新の提供状況、サポートの期限をまとめて一覧できるMicrosoftの公式ページ。
Security Update Guide 2026年9月(Microsoft)(外部)
2026年9月に修正された脆弱性の一覧。悪用が確認されたものを含め、件数や深刻度をこのページで確認できる。CVE単位で追える。
Windows 11 Home and Pro ライフサイクル(Microsoft)(外部)
Windows 11 HomeとProの提供終了日を示す公式ページ。24H2は2026年10月13日に更新の提供を終える。
【参考記事】
Microsoft: September updates break File History backup feature(外部)
管理者向けの通知をもとに、影響するWindowsの範囲を10の21H2以降、LTSC 2016/2019、11の23H2以降と伝えた記事。
Microsoft admits Windows 11 KB5124008 is breaking multiple features, days after it warned users not to delay updates(外部)
Microsoftが公表する前の9月12日、利用者から寄せられたファイル履歴の不具合を報じた記事。証言を多数収録している。
September 2026 updates: investigate KB5123099, WinGet and backup problems(外部)
9月19日に既知の問題が追加された事実を記録し、9月14日の定例外更新がこの問題の修正として確認されていない点を明記している。
Microsoft’s September Windows Updates Are Breaking File History Backups(外部)
対象となるWindowsのバージョンを整理し、イベントビューアーに残るクラッシュの記録を、確認の手がかりとして紹介している記事。


















