「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスが明らかになって12日。説明は公式サイトの報告や社長のブログ、SNSを通じて重ねられてきましたが、報道陣の質問を受ける場は、本日が初めてです。犯人は誰なのか、補償はどう進むのか、なぜ対応が十分でなかったのか。会見の前に、分かっていることと、まだ分かっていないことを整理します。
GMOインターネットグループは11月2日15時30分から、東京都内で記者会見を開く。「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスについて、経緯、顧客への対応、今後の取り組みを説明し、質疑応答を行う。同社は10月21日に全プランのサーバーを停止しており、影響の可能性があるサーバーは2万6739件にのぼる。ただし、これは実際に被害を受けた件数ではない。24日には、全利用者への一律5,000円の見舞金と、不正取引による損失の補償を決めている。出席は熊谷正寿会長兼社長らの見通し。会場に入れるのは事前登録した報道機関に限られ、それ以外はYouTubeの配信で視聴する形になる。配信URLは特設サイトで案内されるという。問題の発生後、同社が会見を開くのは初めてだ。
開始時刻は一部の報道で15時と伝えられたが、15時30分に訂正されている(弁護士ドットコムニュース、11月2日14時26分付の訂正)。以下は、会見開始前の時点で確認できた情報をもとにまとめている。
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重要なお知らせ|GMOインターネットグループ株式会社
※2026年11月2日更新:「GMOトラスト・ログイン」の公表時期(誤「公表まで約7週間」→正「判明の2日後に第一報」)、片山金融担当相の発言の内容、脅迫の形式(メール)と金額の出典、ホワイトハッカーチームに関する記述を修正しました。
※2026年11月2日更新:編集部解説の文体を敬体に統一し、用語解説・参考リンク・関連記事を追加しました。
【生配信で見る】
会見は15時30分開始。GMOの広報は、配信URLを特設サイトで案内すると説明している(弁護士ドットコムニュースへの回答)。確認できた視聴先を並べる。配信が確認できたものは随時加える。
① GMO公式のYouTube配信(下に埋め込み)
GMOの特設サイトで案内されている配信。会場に入れない報道機関・一般向けの公式の視聴手段。
② NHK ONE ニュース「【ライブ予定】GMO 熊谷社長ら2日午後記者会見」
ライブ配信の予定ページ。表示にはNHK ONEの利用意向の確認が必要。
③ 山陰中央新報「【午後3時半からライブ配信】」
共同通信配信の記事枠でのライブ配信。
【編集部解説】
これまでに分かっていること
発覚から全面停止まで。GMOの公表によると、10月19日に顧客から問い合わせがあり、20日に一部顧客のサーバー環境で不正なプログラムの設置を確認しました。21日4時からは全プランのサーバーを順次停止しています。影響の可能性があるサーバーは2万6739件です。これは「影響の可能性がある」サーバーの数であり、実際に被害を受けた人の数ではありません。サーバー内に保存されていた証券会社やFX会社の取引口座のログイン情報が取得され、不正に利用された可能性があります。
脅迫と捜査。21日、攻撃者とみられる者から、約80億円(Impress Watchによると5000万ドル)を要求する脅迫メールが届きました。GMOは要求に応じない方針で、22日13時に警察へ相談したとしています。共同通信によると、警視庁が不正アクセス禁止法違反容疑などで捜査しています。攻撃者は27日12時を期限に、お客様の情報の公開とランサムウェア攻撃を行うと予告していました(GMO第8報)。Impress Watchは、その対象を利用者のPCと報じています。ただし、GMOは第10報(27日13時55分時点)で、ランサムウェア攻撃は確認されていないとしています。
情報の公開と、その後。GMOは、27日12時30分に、攻撃者とみられる者が同社や顧客に関する情報と称するものを公開したことを確認しました(第10報)。共同通信は、顧客のものと称する1人分の個人情報だったと報じています。GMOは内容を確認中で、事実と異なる内容が含まれるおそれにも触れています。28日には、この情報を載せたサイトのドメインが同日午前4時ごろに停止されたことを確認したと発表しました(第13報)。
補償と見舞金。24日、サービスの全利用者に一律5,000円の見舞金を支払い、不正アクセスが原因と認められた取引で生じた損失を補償する方針を公表しました。27日には、犯人に公開された情報に自分の情報が含まれていると同社が確認した顧客に、区分ごとに10,000円(基本情報)、15,000円(取引口座のIDやパスワードなど)、25,000円(機微情報など)の「特別お見舞金」を、1公開につき上限300万円で支払うと発表しました。30日には、見舞金の受け取り手続きと代替サービスについて、契約者への直接連絡を始めたと案内しています。ただし、受け付けの具体的な開始時期は、この案内には書かれていません。
犯人の特定に向けて。28日12時から、総額100万米ドル(約1億5000万円)を上限とする懸賞金の情報提供の受け付けを始めました。29日には、GMOが「犯人の特定につながると考えられる有力な情報」を入手し、同日中に警察などへ提出すると発表しています。一部はグループのホワイトハッカーチームが独自に調べて得た情報とされています(ビジネス+IT)。提供情報は29日11時30分時点で270件(GMO第15報)、30日18時時点で累計428件(GMO第16報、AdverTimes)です。一方、共同通信は11月1日、「北朝鮮ハッカーか」と見出しに掲げた独自記事を配信しました。私たちは見出しまでしか確認できておらず、GMOや捜査当局が公式に認めた内容は見つけられていません。
対応の遅れをめぐって。熊谷氏は25日のブログで、社内のホワイトハッカーから事前に「改善すべき課題」が現場へ指摘されていたと認め、「対応の深度とスピードが十分ではなく、攻撃者にその間隙を突かれてしまいました」と述べています。日本経済新聞は、GMO子会社のセキュリティー企業が2024年4月時点でシステムの欠陥を指摘していたにもかかわらず、十分な対応がされてこなかったとGMO幹部への取材で報じました。NHKも、2年前の子会社による指摘を関係者への取材で伝えています。ブログの「社内のホワイトハッカー」と、報道の「子会社のセキュリティー企業」が同じ指摘を指すのかは、現時点の報道からは分かりません。
国の動き。24日、GMOは「能動的サイバー防御」の適用を国に緊急要請しました。適用されれば、10月1日の関連法施行後で初めてになるといいます(共同通信)。時事通信は、総務省が攻撃者のものとみられるサイトへの接続遮断を、業界団体を通じて通信事業者に要請したと報じましたが、各社が実施したかどうかは明らかにされていません(ビジネス+IT経由)。片山金融担当相は27日の閣議後会見で、金融庁が先週木曜日(22日)に金融先物取引業協会を通じて全FX業者へ、顧客への注意喚起や取引の監視強化などを要請したと述べました。
まだ分かっていないこと
私たちが確認できた範囲では、次の点は公表されていません。具体的な侵入経路、実際に認証情報が取得された利用者の数、不正取引の件数と被害総額、公開された情報の真偽と範囲、預かった利用者PCの解析結果です。10月24日の共同通信の報道は「被害規模は明らかになっていない」と伝えており、サーバー停止後の再開時期も、10月23日の第3報の時点では未定とされていました。会見でこれらにどこまで答えが出るかが、最初の見どころになります。
会見で明らかにしてほしいこと
① 犯人の特定。「有力な情報」の中身そのものは捜査上語れないとしても、何が分かっていて何を言えないのか、その線引きを聞きたいところです。報じられた北朝鮮関与の見方への認識も、語れる範囲で確認したいと思います。
② 補償の内容。申請はいつ、どこから始まるのでしょうか。「不正アクセスが原因」と誰が、何を根拠に認定するのでしょうか。証拠が残らない場合はどうなるのでしょうか。補償の範囲に、間接的な損害や利用者PCに生じた損害は含まれるのでしょうか。取引口座を持つFX会社や証券会社との役割分担も知りたいところです。
③ 対応が遅れた理由。いつ、誰が、何を指摘し、なぜ優先順位が下がったのでしょうか。先に挙げたブログの指摘と報道の指摘は同じものなのでしょうか。指摘された内容は、今回の侵入口と同じなのでしょうか。順に確かめたい点です。
④ 今後の取り組み。再発防止の具体策と時期、第三者による検証の有無と報告書の公表、サービス再開の見通し、経営としての責任の取り方を知りたいところです。
この4点に加えて、次の4点も確認したいと思います。
⑤ 被害の全体像。2万6739件のうち、実際に認証情報が取られた件数、不正取引の件数と総額、公開された情報の対象者への連絡状況です。
⑥ 利用者のPC。攻撃者側は、FXに関する情報だけでなく個人のパソコン内の情報も読み取ったと主張しています(共同通信)。預かった端末の解析で何が分かったのか、利用者が自分のPCの安全を確かめる方法は何か、の2点を知りたいところです。
⑦ 公表の判断とグループ全体の点検。19日の問い合わせから21日の公表まで、何をどう判断したのでしょうか。また、ID管理サービス「GMOトラスト・ログイン」では、顧客企業2,492社の4万5030人分の個人情報が、設定ミスで2017年11月から2026年9月15日まで外部から取得できる状態だったと、10月30日の第三報で公表されました。判明は9月14日、第一報は9月16日で、当初の暫定値(2,007社・3万7747人)から、第三報で対象が増えています。デスクトップクラウドとは別の事案ですが、グループ全体の点検と公表の基準をどう考えているのかも聞きたいところです。
⑧ 社会への還元。能動的サイバー防御を要請した意図と、政府とのやり取りを聞きたいところです。この経験から得た知見を、自社と顧客の利益にとどめず、日本のインターネット全体にどう生かすのかを知りたいところです。インフラを支えてきた企業だからこそ、その発信に私たちは注目したいと思います。
なお、会見は経営と報道の関心に沿って進みやすいものです。被害に遭った利用者が最も知りたい「自分は対象か」「いつ、何を受け取れるのか」といった手続きの話は、質問から漏れやすい点にも注意が必要です。会見後にここまで確認できたかを、あらためて見ていきます。
【用語解説】
お名前.com デスクトップクラウド
リモートデスクトップ接続で仮想PCを操作できるVPSサービス。24時間稼働できるため、FXの自動売買プログラム(MetaTraderなど)を動かす用途で使われることが多い。
能動的サイバー防御
警察や自衛隊が攻撃元のサーバーに入り込み、被害を防ぐ仕組み。関連法は10月1日に施行された。GMOは今回、国に適用を要請している。
ランサムウェア
感染したPCやサーバーのデータを暗号化して使えなくし、元に戻す見返りに金銭を要求する不正プログラム。
ホワイトハッカー
システムの弱点を見つけて直す側に、攻撃の技術を使う技術者。GMOグループには、社内のホワイトハッカーのチームがある。
【参考リンク】
重要なお知らせ|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
不正アクセスに関する第2報以降の公式発表の一覧。
第8報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
10月27日12時の攻撃予告(情報の公開とランサムウェア攻撃)と、利用者への依頼事項。
第10報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
攻撃者による情報公開の確認(27日12時30分)と、ランサムウェア攻撃が確認されていない旨。
第12報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
対応方針、特別お見舞金、懸賞金の概要と、10月27日19時10分時点の経緯一覧。
第13報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
情報を掲載していたサイトのドメイン停止の確認(28日午前4時ごろ)。
第15報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
犯人の特定につながると考えられる情報の入手と、警察などへの提出。懸賞金への情報提供270件(29日11時30分時点)。
第16報|GMOインターネットグループ株式会社(外部)
懸賞金への情報提供の件数の推移(30日18時時点で累計428件)。
GMOサイバー犯罪撲滅・懸賞金(外部)
犯人の特定や事件の解明につながる情報の受付窓口(総額上限100万米ドル)。
熊谷正寿ブログ(外部)
GMOグループ代表のブログ。社内のホワイトハッカーによる事前の指摘と、対応が十分でなかった旨を記載。
【重要】GMOトラスト・ログインにおけるお客様情報の漏えいに関するお詫びとお知らせ(第三報)(外部)
判明(9月14日)、第一報(9月16日)、対象2,492社・4万5030人、外部から取得できた期間などの経緯。
財務省 大臣閣議後記者会見(令和8年10月27日)(外部)
片山金融担当相の発言。金融庁による全FX業者への要請の内容。
【参考記事】
GMO、不正アクセス問題で2日午後に初会見、事前登録していないメディアには「YouTubeで確認を」 — 弁護士ドットコムニュース(外部)
弁護士ドットコムニュース。会見の開催時刻(15時30分への訂正)と、YouTube配信で視聴するというGMO広報の回答を伝えた記事。開催概要と配信方法を参照。
GMO、熊谷会長が2日に記者会見 一連の不正アクセス問題を説明へ — 日本経済新聞(外部)
日本経済新聞。会見の出席者と説明事項、2024年4月時点の脆弱性指摘に関する報道。出席者と指摘の時期を参照。
GMO 子会社がシステムぜい弱性を2年前に指摘 来週2日に会見へ — NHKニュース(外部)
NHK。子会社のセキュリティー企業による2年前の指摘を、関係者への取材で伝えた記事。指摘の経緯を参照。
GMO、不正アクセス公表から12日で初の記者会見 熊谷社長が説明へ — AdverTimes(外部)
AdverTimes。公表からの経緯と補償・懸賞金の整理。会見の出席者、初の会見である点、懸賞金の情報提供428件(30日18時時点)を参照。
GMO攻撃、「有力情報」を警察へ提出…懸賞金に270件、総務省は強制遮断を要請と報道 — ビジネス+IT(外部)
ビジネス+IT。第15報の内容と、時事通信による総務省の遮断要請の報道。ホワイトハッカーチームが独自に得た情報の位置づけ、270件の時点、遮断要請を参照。
GMO不正アクセス、犯人が27日12時の利用者PC攻撃を予告 80億円の金銭要求 — Impress Watch(外部)
Impress Watch。利用者PCへの攻撃予告と、利用者への呼びかけを整理した記事。要求額(5000万ドル・約80億円)、予告の期限、影響の可能性があるサーバー数を参照。
GMO、サイバー防御を緊急要請 不正アクセス確認、適用なら初 — 熊本日日新聞(共同通信配信)(外部)
共同通信配信の記事。能動的サイバー防御の適用要請(24日)、「適用なら初」の位置づけ、被害規模が明らかになっていない旨を参照。
【関連記事】
【編集部後記】
会見は、答えが出る場であると同時に、何が答えられなかったかが見える場でもあります。「調査中」「捜査に支障が出る」といった言葉が出たとき、それが何についての言葉なのか。質疑の多くが経営と報道の関心に寄るなかで、被害に遭った利用者が本当に知りたいことを、私たちは見落としていないか。会見後に分かったことを、この記事に加えていきます。



