今週のガジェット・VR/AR界隈は、「モノをどう所有するか」と「身体がどう技術とつながるか」という二つの軸で動きが目立った一週間でした。ソニーはPlayStationのディスク生産終了という「所有」の形そのものに踏み込む決定を下し、Samsungはロール式スマートフォンという次のフォームファクターの壁に挑もうとしています。一方でDiver-XのVRグローブは、VR空間の手をロボティクスへとつなぐインターフェースへと姿を変えつつあります。5本の記事を通じて、今週の動きを振り返ります。
【今週の注目記事】
① Diver-Xのグローブ型VRコントローラー「ContactGlove3」予約開始|EMFによる高精度トラッキングで人と技術の境界を溶かす
Diver-X株式会社(現:Melt Interface Technologies株式会社)は、VRグローブ「ContactGlove3」と、ロボティクス・研究開発向けの「ContactGlove3 Pro」を発表しました。電磁場(EMF)センシングにより5指すべてを6DoFで独立追従し、位置誤差0.5mm・角度誤差0.4°という高精度トラッキングを実現しています。一般向けは99,800円で2026年10月発売予定、Pro版はロボットの遠隔操作や模倣学習向けのデータグローブとして498,000円からとなります。トヨタ紡織との共同開発も明らかになりました。
② Samsung ロール式スマートフォン|フォルダブルシェア27%に低下、Samsungが「次の技術の壁」に踏み込む理由
韓国メディアの報道によれば、Samsung Displayは2028年上半期発売目標のロール式スマートフォン(非公式名「Galaxy Z Slide」)へのパネル供給に向けて協議中とのことです。10インチ・440.6ppiのOLEDをスライド機構で展開する設計とみられます。背景には、SamsungのフォルダブルパネルシェアがQ4 2025の41.8%からQ1 2026には27%へ急落したことがあります。中国メーカーが追随しにくい技術的難易度の高い領域で、次の差異化軸を築こうとする狙いが読み取れます。
③ ソニー、PlayStationディスク生産を2028年終了へ|デジタル所有という問い
Sony Interactive Entertainmentは、PlayStation向け新作タイトルの物理ディスク生産を2028年1月に終了すると発表しました。以降の新作はデジタル形式のみでの提供となります。ソニーは「消費者の嗜好の自然な変化」と説明していますが、アナリストからはコスト削減や中古市場排除を狙ったプラットフォーム主導の決定という見方も出ています。かつてBlu-ray規格戦争を制してディスクを普及させた張本人が、今度はディスクに幕を引く決定を下した格好です。
④ AIエージェントのショートカットは「身体知」になるか|OpenAI×Work LouderのCodexハードウェア
OpenAIは、コーディングエージェント「Codex」のショートカット操作に特化したハードウェアデバイスを7月15日に発表すると予告しました。カナダのキーボードメーカーWork Louderとの協業とみられ、同社の「Creator Micro 2」をベースにしたマクロパッド型デバイスと報じられています。生成・テスト・PR作成とエージェントの操作対象が広がるほど、UIの切り替えコストも積み重なります——その課題への物理的な回答として読むことができます。
⑤ Apple「iRing」開発中か?|Eddy Cue体制下のヘルス戦略とスマートリング市場の現在地
リーカーのKosutami氏が、AppleがOura RingやGalaxy Ringと競合するスマートリング「iRing」を開発中だと主張しました。詳細は不明ですが、2024年にBloombergのマーク・ガーマン氏が「開発の計画なし」と報じた内容とは食い違っています。2025年10月にヘルス部門がEddy Cue氏の管轄に移ったことや、Ouraの評価額110億ドルでのIPO申請など、市場環境の変化がこのタイミングでの参入を後押しする文脈として指摘されています。
【編集部後記】
所有からアクセスへ、そして身体からインターフェースへ。今週の5本を並べると、「モノを持つ」ことの意味が静かに書き換えられていることに気づきます。ディスクを手放すこと、指先の動きをロボットへ渡すこと、リングやマクロパッドを新しい接点として迎え入れること。それぞれ別々の判断のようでいて、私たちが技術とどう触れ合うのかという同じ問いにつながっているのかもしれません。












