mypam「ぷかバッジ(PopBadge)」電子ペーパー採用の推し活バッジは液晶派と何が違う?常時表示の魅力と技術的ハードル

[更新]2026年7月14日

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推しの写真は、たいていスマホの中で眠っています。フォルダを開けば会えるけれど、閉じれば見えなくなる。それを、ずっと表示したままにできる小さな板があったらどうでしょう。しかも、電池を気にせず。今回登場したのは、電子ペーパーを使ったバッジ型のガジェットです。ここで面白いのは、実はよく似た「デジタル缶バッジ」が半年前にも出ていて、そちらは液晶を使っている、という点でした。同じように見えて、中身がまるで違う。動く一枚を選ぶのか、静かに灯り続ける一枚を選ぶのか。その分かれ道の話を、少しだけ丁寧にたどってみます。


「推しを持ち歩く」を掲げる電子ペーパー採用のガジェット型バッジ「ぷかバッジPopBadge」が、応援購入サービス「Makuake」に登場した。実行者はエスイレブン合同会社で、メーカー紹介として中国のDl Materials Co., Ltd.が掲載されている。

専用アプリからスマホ経由で画像を転送・表示でき、電子ペーパーの特性により表示中はディスプレイ部の電力をほぼ使わないとされる。マグネットで金属面に装着でき、スマホスタンドとしても使用可能。専用の日本語アプリはiOS 14.0以上/Android 9.0以上への対応と無料提供が予定されており、2026年7月10日時点ではストア申請中と案内されている。

プロジェクトはAll in型で目標金額は100,000円、決済時に安心システム利用料2.2%(税抜)がかかる。リターンは1個5,999円(一般販売予定価格11,000円)から用意された。

From: 映した瞬間、”推し”になる。ぷかバッジPopBadge「推し活×ガジェット」

【参考動画】

【編集部解説】

なぜ今、いち推し活グッズのクラウドファンディングを取り上げるのか。理由は、この小さなバッジが「電子ペーパーの民主化」という大きな潮流の延長線上に置けるからです。そして同時に、その言葉の使われ方に、消費者が知っておくべき技術的な曖昧さが潜んでいるからでもあります。

まず整理しておきたいのが、今回比較する代表的な二つの製品が、それぞれ異なる表示方式を採るという点です。今回の「ぷかバッジ(PopBadge)」は電子ペーパーを、2025年12月に先行して登場した「E-Badge」(オスカージャパンが販売)はカラー液晶(IPS)を採用しています。ITmediaの報道によれば、E-Badgeは直径57mm、重量45gの缶バッジ型の本体に、タッチスクリーン付きのIPS液晶ディスプレイを搭載し、内蔵メモリに保存したJPEG、GIF、PNGを表示する。3秒程度の動画も表示できるとされています。動画をなめらかに再生できることは、一般的な電気泳動式電子ペーパーと比較した場合の液晶の強みです。なお、推し活バッジ全体がこの二方式に限られるわけではなく、原理的にはメモリー液晶や有機ELなど他の選択肢も存在します。

一方、電子ペーパーは仕組みが異なります。E Inkに代表される電気泳動式のディスプレイは、双安定性という性質を持ち、電源を切っても表示を保持し、画面を書き換えない間はディスプレイ部の電力をほとんど必要としません。PopBadgeも「表示後の電力がほぼ不要」と説明しています。ただし、同製品が採用する電子ペーパーの具体的な方式やパネルメーカーは公表されていません。また、仮に電気泳動式であっても、無消費なのはあくまでディスプレイ部の話で、Bluetooth通信や制御回路を含む製品全体が完全に無消費になるわけではありません。そして一般に、液晶のように動画をなめらかに再生することは、電気泳動式では不得手です。同じ「デジタル缶バッジ」でも、消費電力・動画対応・発色の傾向は異なる——ここは購入前に理解しておきたい分岐点です。

PopBadgeとの直接的な技術関係は確認できませんが、同じ時期、その周辺ではフルカラー電子ペーパーの実用化が進んでいます。象徴的な存在が、台湾のE Inkが2023年4月に発表した「Spectra 6」です。この技術は、赤・黄・青・白の4色の帯電顔料粒子を電圧で制御し、黒・白・赤・黄・青・緑の6原色表示を実現します(「6色の粒子を使う」と説明されることがありますが、正しくは4色の粒子で6原色を表現する仕組みです)。店頭POP向けの従来のSpectraシリーズが数色にとどまっていたのに対し、印刷物に近い色表現へと踏み込んだ、とメーカーは説明しています。2025年6月にはサムスン電子が32型のColor E-Paperを、シャープがA2サイズのePosterを発売するなど、大型サイネージ分野への製品投入が相次ぎました。

こうした用途拡大を背景に量産がさらに進めば、パネル単価が下がり、小型ガジェットへの転用を後押しする可能性があります——というのは、規模の経済としては起こり得るシナリオです。ただし、PopBadgeがSpectra 6や大型サイネージと同系統のパネルを使っているという証拠はなく、両者を直接つなぐ因果は確認できていません。これは事実ではなく、あくまで編集部が置く「背景仮説」として受け取ってください。それでも、割引価格5,999円で電子ペーパーを身につけて持ち歩ける選択肢が現れたこと自体は、注目に値すると考えます。

なお、PopBadgeが具体的にどの電子ペーパー技術(パネルメーカー・色数・解像度・書き換え速度)を採用しているかは、Makuakeページの公開情報からは確認できませんでした。これらの性能は、実機レビューや専用アプリの正式リリースを待って判断するのが確実です。

ポジティブな側面ばかりではありません。まず、Makuakeページの製品仕様は多くが画像で提示されており、テキストとして検索・引用しにくい構造です(画像内には1.7型、幅44mm、約48g、80mAhといった記載が読み取れる一方、解像度・表示色数・更新時間は見当たりません)。特にSpectra 6のような一部の多色電気泳動式電子ペーパーは、書き換えに時間を要します。たとえば同じSpectra 6を使う7.3型でも、Waveshareの生パネル/HATはフルリフレッシュ約25秒、完成品のPhotoPainter (B)は公称約12秒と、製品や制御回路によって速度が異なります。バッジ用パネルの書き換え速度は非公表のため、性能上の問題があると断定はできませんが、購入前に確かめたい評価軸ではあります。

もう一点は、供給体制です。ページには製品者(国):中国、製造者(国):中国と記載され、実行者のエスイレブン合同会社は輸入販売代理店の立場です。クラウドファンディングは「応援購入」であって完成品の店頭購入とは異なり、仕様変更・出荷遅延といったリスクが構造的に残ります。実行者はリスク&チャレンジの項で、これらに加え、正規以外での並行輸入品が市場に出回る可能性にも触れており、支援者側にも一定のリテラシーが求められます。

なお、専用の日本語アプリは、2026年7月10日時点のMakuake記載では「ストア申請中」であり、iOS 14.0以上/Android 9.0以上への対応と無料提供が「予定」として案内されています。リターン到着までに正式リリース予定とされていますが、現時点で提供済みではない点は押さえておきたいところです。

社会への影響という観点では、電子ペーパーバッジが画像を表示する装置でもある点に、ささやかな注意を促しておきたいと思います。権利者の許諾なく入手・複製した画像を使う場合や、公衆向け・営利目的で表示する場合には、著作権その他の権利が問題になることがあります。人物写真については、写真自体の著作権に加え、表示の態様や目的によって肖像権・パブリシティ権への配慮も必要になる場合があります。反対に、自分自身や風景を撮影した写真、または表示用途まで許諾された画像を、個人的・家庭内等の限られた範囲で楽しむ場合には、通常は大きな問題になりにくいでしょう。ただし、写真に他人や著作物が写っている場合や、許諾条件が限定されている場合などは、別途注意が必要です。手軽さが増すほど、こうした線引きが利用者一人ひとりの手元に近づいてくる、ということです。

長期的な視点で見れば、この製品カテゴリーが指し示す方向はもっと広いはずです。省電力で常時表示できる小型ディスプレイを「身につける」という発想は、名札や店舗POPといった既存の用途例にとどまらず、電子名刺やウェアラブル通知へと展開する可能性も秘めています(これらは実際の製品計画ではなく、あくまで技術的な展望です)。推し活という熱量の高い市場を入り口に、電子ペーパーが日常のさまざまな「見せる面」へ広がっていく——ぷかバッジ(PopBadge)を、その一歩手前のサンプルとして眺めると、見え方が少し変わってくるかもしれません。

【関連記事】

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【編集部後記】

最初にこの製品を見たとき、私は「電子ペーパーのバッジ」という一言で分かったつもりになっていました。E Inkなら省電力、それだけの話だろう、と。

けれど調べていくうちに、その「分かったつもり」がいくつも崩れていきました。Spectra 6は6色の粒子を使う——そう説明している記事はいくつもあるのですが、公式の資料に当たると、粒子は4色で、その組み合わせから6原色を出しているのだと分かります。同じ7.3型の製品でも、パネル単体なら書き換えに25秒、完成品なら12秒と、数字が倍近く違う。断定できることと、できないことの境界線は、思っていたよりずっと手前にありました。

そしてもうひとつ、意外だったことがあります。バッジサイズのカラー電子ペーパーは、実はPopBadgeだけのものではありませんでした。海外に目を向けると、Good DisplayやWaveshareがSpectra 6を使った3.6型のバッジ用パネル(600×400)をすでに部材として売っており、名刺サイズのSpectra 6名札を個人が買って、カラーチャートを表示させて再現性を検証したレビューまで公開されています。法人向けには、Joanが1枚99.99ドル(約1万5000円/1ドル150円換算)の電子ペーパーバッジを2026年5月から出荷しています。つまり技術の土台は、もうとっくに敷かれていたわけです。

そう考えると、PopBadgeが挑んでいるのは、技術そのものの発明ではないのかもしれません。すでにある部材を、「推し活」という日本にしかない熱量の高さに接続すること。名札でも棚札でもなく、「好きなものを見せたい」という、ごく私的な欲求の側から電子ペーパーを引っ張り出すこと。そこにこそ、この製品の賭けがあるように思えてきました。

ただし、フルカラーはタダではありません。電子棚札の市場を見ると、4.2型のSpectra 6ラベルが14〜18ドルなのに対し、黒・白・赤・黄の4色ラベルは5〜7ドル。2〜3倍の開きがあります。電池寿命も、4色なら1日1回の更新で8〜10年もつところ、Spectra 6は4〜6年に縮むとされます。色を増やすほど、コストと電池を差し出すことになる。PopBadgeがどのグレードのパネルを選んだのかは公表されていませんが、5,999円という価格を前にしたとき、この相場感は静かに効いてくる数字だと思います。

歯切れの悪い記事になったかもしれません。方式は分からない。書き換え速度も分からない。それでも、分からないことを分からないまま渡すほうが、財布を開くかどうか迷っている人には誠実だろうと考えました。

最後にひとつだけ。もし手に取る機会があれば、書き換えのあの独特の間——画面が一瞬ちらついて、じわりと絵が立ち上がる感じ——を味わってみてください。液晶のなめらかさとは違う、少し不器用な動き。私はあの数秒が、けっこう好きです。皆さんはどう感じるでしょうか。よければ、聞かせてください。


【用語解説】

電子ペーパー(ePaper)
紙に近い見え方や低消費電力を目指したディスプレイ技術の総称である。電気泳動式、コレステリック液晶式など複数の方式があり、すべてが同一の原理というわけではない。バックライトを持たない反射型が多く、明所で見やすい点が特徴とされる。

電気泳動式電子ペーパー
電圧によって微細な帯電顔料粒子を移動させて表示する反射型ディスプレイ方式である。E Inkが代表例で、多くの製品は電源を切っても表示を保持する双安定性を持つ。

双安定性(バイステーブル)
電源を切っても表示内容を保持できる性質を指す。E Ink型電子ペーパーが「表示中は電力をほとんど使わない」と言われる根拠であり、画面を書き換えるときだけディスプレイ部に電力が必要となる。

Spectra 6(スペクトラ6)
E Ink社が2023年4月に発表したカラー電子ペーパー技術である。赤・黄・青・白の4色の帯電顔料粒子を制御し、黒・白・赤・黄・青・緑の6原色を表示する。店頭POPやサイネージ用途を主眼に開発され、サムスン電子やシャープの大型製品に採用されている。

リフレッシュ(書き換え/フルリフレッシュ)
ディスプレイが画面を更新する動作を指す。電気泳動式では顔料粒子を物理的に移動させるため、一部のカラー製品では1回の全画面更新に十数秒〜数十秒を要することがある。ただし白黒方式や高速更新モードなど、より速い製品も存在する。

All in型
クラウドファンディング(応援購入)の実施方式のひとつである。目標金額の達成有無にかかわらず、期間内に支払いが完了した時点で購入が成立する。目標未達なら不成立となる「All or Nothing型」と対になる概念である。

【参考リンク】

Makuake(マクアケ)(外部)
株式会社マクアケが運営し、新しい商品や体験を応援の気持ちを込めて購入できる「応援購入サービス」である。

E Ink(イーインク)日本語サイト(外部)
電子ペーパー技術の主要メーカー、台湾E Ink Holdingsの日本語公式サイト。各種電子ペーパー技術の詳細を確認できる。

E Ink Spectra 6 ブランドページ(外部)
カラー電子ペーパー「Spectra 6」の公式技術解説ページ。4色顔料による6原色表示の仕組みが説明されている。

エスイレブン合同会社 プロジェクト一覧(Makuake)(外部)
PopBadgeの実行者エスイレブン合同会社が、Makuake上で公開しているプロジェクトの一覧ページである。

【参考記事】

“推し”が動くデジタル缶バッジ、登場(ITmedia NEWS)(外部)
先行製品E-Badgeの仕様を報じた記事。57mm・45g・IPS液晶・16MB・3秒動画対応など、方式差検証の基準に用いた。

カラー電子ペーパー『ePoster』A2サイズを発売(シャープ)(外部)
2025年6月発売の公式発表。Spectra 6採用と動画非対応を明記し、静止表示向けの根拠とした。

Samsung Launches Color E-Paper(Samsung Global Newsroom)(外部)
2025年6月5日に32型Color E-Paperを世界発売した公式発表。大型サイネージ投入の事実を裏づけた。

E Ink Spectra 6採用の7.3型電子ペーパーが入荷(エルミタージュ秋葉原)(外部)
完成品PhotoPainter (B)(税込16,980円、800×480、6色、公称約12秒)の実データとして参照した。

7.3inch E Ink Spectra 6 Full Color E-Paper Display(Waveshare)(外部)
7.3型生パネル/HATの仕様ページ。フルリフレッシュ約25秒の出所を切り分けるために参照した。

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omote
デザイン、ライティング、Web制作を行っています。AI分野と、ワクワクするような進化を遂げるロボティクス分野について関心を持っています。AIについては私自身子を持つ親として、技術や芸術、または精神面におけるAIと人との共存について、読者の皆さんと共に学び、考えていけたらと思っています。