Last Updated on 2025-05-01 17:26 by admin
国際宇宙ステーション(ISS)は2025年4月30日午後6時10分(米東部時間)、宇宙ゴミとの衝突リスクを回避するため軌道修正を実施した。
ロシアのProgress 91補給船のスラスターを3分33秒間噴射し、ISSの軌道を上昇させた。回避対象は約20年前に打ち上げられた中国の長征ロケットの破片で、NASAによれば軌道修正を行わなければISSから約0.4マイル(約640メートル)まで接近する可能性があった。
このマヌーバはNASA、ロスコスモス、その他のパートナーによって事前に調整されたもので、ISSの通常運用や翌日の船外活動には影響しなかった。ISSは運用開始から25年以上が経過しているが、これまで大きな衝突被害はなく、回避システムが有効に機能している。
from:The ISS just dodged part of a 20-year-old Chinese rocket
【編集部解説】
今回のISSによる軌道修正は、宇宙ゴミ問題の深刻さと、国際協力による安全管理の重要性を改めて示すものです。ISSは秒速約7.7kmで地球を周回しており、たとえ数センチの破片でも衝突すれば致命的な損傷を受ける可能性があります。
NASAやロスコスモスなどのパートナーは、地上から数十万個の宇宙ゴミを常時監視し、リスクが一定以上と判断されれば軌道修正を実施します。
宇宙ゴミの多くは、退役した衛星やロケットの部品、過去の衛星破壊実験などが原因です。2007年の中国による衛星破壊実験や2021年のロシアによる反衛星ミサイル実験は、大量のデブリを発生させました。こうした問題はISSだけでなく、商用衛星や将来の宇宙インフラにも影響を及ぼします。
ISSが25年以上も大きな衝突被害を受けていないのは、監視・回避技術の進化によるものです。しかし、10cm未満の小さなデブリは依然として監視が難しく、今後はデブリ除去技術や国際的な規制強化が不可欠です。宇宙ゴミ問題の解決は、今後の宇宙産業の持続的発展と人類の宇宙進出に直結する課題です。
【用語解説】
国際宇宙ステーション(ISS):
地球の上空約400kmを周回する国際的な有人実験施設。サッカー場ほどの大きさで、宇宙の「国際研究拠点」と例えられる。
スペースデブリ(宇宙ゴミ):
使い終えた人工衛星やロケットの破片など、宇宙空間を高速で漂う不要な人工物。宇宙の「ゴミ問題」だ。
長征ロケット:
中国が開発・運用する人工衛星打ち上げ用ロケットシリーズ。英語では「Long March」。
Progress補給船:
ロシアが開発した無人の宇宙ステーション補給船。ISSに物資を運び、役目を終えると大気圏で燃え尽きる。
【参考リンク】
NASA(外部)
アメリカの宇宙開発を担う政府機関。ISSや宇宙探査など多岐にわたる活動を行う。
ロスコスモス(外部)
ロシアの宇宙開発全般を担当する国営企業。有人・無人宇宙ミッションを実施。
アストロスケール(外部)宇宙ゴミ除去や軌道上サービスの技術開発を行う日本発の民間企業。
【参考動画】
【編集部後記】
宇宙ゴミの問題が、私たちの未来の宇宙利用にどんな影響を与えるのか、考えたことはありますか?
もし自分が宇宙飛行士だったら、どんな安全対策や技術に期待したいでしょうか。
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