Google Earth フライトシミュレーター、ついにブラウザで無料に—アプリ不要で世界の空へ

[更新]2026年6月16日

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お昼休み、ブラウザをひとつ開くだけで、世界中の空を飛べるとしたら——。Google Earthが、長らくデスクトップに隠れていたフライトシミュレーターを、ついにWeb版で全世界に無料開放しました。アプリのインストールも難しい設定もいりません。パソコンのブラウザで地球を開いて、ツールからフライトシミュレータを選べば、もうそこは操縦席。エッフェル塔の上空でも、見慣れた自宅の真上でも、行き先はあなた次第です。次の休憩は、ちょっとだけ空の旅に出かけてみませんか。


2026年6月13日、Google Earth公式アカウントが、フライトシミュレーター機能をWeb版で全世界のすべてのユーザー向けに開放したと発表した。これまでもWeb版には標高プロファイルや新しいインポート形式といったデスクトップ機能が追加されてきており、今回のフライトシミュレーターもその一つである。

同機能は2007年にGoogle Earth 4.2の隠し機能として登場し、Windowsでは Ctrl+Alt+A、Macでは Command+Option+A で起動するものだった。以後は長らくデスクトップ版のみで利用でき、ブラウザから利用できるのは今回が初となる。2026年6月13日時点で、この投稿の表示数は約945万件である。

From: 文献リンクGoogle Earth(@googleearth)「Flight simulator is now available globally on web to all users.」

筆者が操作すると4秒後に背面飛行(意図せず)になってそのあと墜落

【編集部解説】

今回の発表は、新機能の登場というより「20年近く隠れていた機能の解放」と捉えると、その意味がよく見えてきます。フライトシミュレーター自体は目新しいものではありません。新しいのは、それが置かれた「場所」なのです。

これまでこの機能は、ダウンロード版のGoogle Earthにキー操作で呼び出す隠し機能として眠っていました。Googleは今回の機能を「実験的(experimental)」と位置づけており、これは仕様が予告なく変わり得ることを意味します。手放しで「定着した正式機能」と受け取るのは早計でしょう。

利用環境にも一つ押さえどころがあります。公式手順はパソコンのブラウザでearth.google.comを開くことを前提としており、モバイルでアクセスするとアプリのダウンロードを促されます。今のところ「パソコンで楽しむ体験」と考えておくのが正確です。

なお、現時点のWeb版は実験段階のためか、最小限の構成にとどまっています。かつてデスクトップ版では起動時にSR22やF-16といった機体を選べましたが、Web版の公式手順に機種選択の項目はなく、ToolsメニューからそのままシンプルなUIで飛ぶ設計です。「まずは気軽に飛ばしてみる」ことに振り切った、入り口らしい作りだと言えます。

技術的に知っておきたいのは、飛行体験の質がインターネット回線に左右される点です。Google Earthは3Dの建物や高解像度の地形をリアルタイムで読み込むため、極端な速度や低帯域では一時的な読み込み遅延が起こります。高速で都市の上空を飛ばすと、回線によっては風景がぼやけて見えることもあるでしょう。逆に十分な回線があれば、エッフェル塔やグランドキャニオン、自宅の上空を低空で飛んでも見応えは保たれます。

操作感についても期待値を整えておくとよいでしょう。物理挙動はあえて簡略化されており、横風補正や失速の再現といった本格的な操縦訓練の要素は想定されていません。これは精密な訓練ではなく、観光気分の空の散歩だと考えるのが実態に近いです。「飛ばしにくい」という声があるのも、この割り切りの裏返しと言えます。

ここで一歩引いて、別の視点を示してみます。コミュニティでは、3Dタイルを使った個人開発のシミュレーターが見られる一方、商用利用ではAPIコストが重くのしかかるという議論がありました。Microsoft Flight SimulatorがBing Mapsの3Dデータ上で動くのに対し、Google公式が無料で全公開したことを「APIクレジットを燃やさずに済む」流れと重ねて見る向きもあります。これは観測筋の見立てで、Googleが公式に語った理由ではない点には留意が必要です。

長期的に効いてくるのは、この「遊び」がどこへ接続しているかという構図です。Google Earthは2025年にGoogle Maps Platformの一員となり、Geminiを活用したプロ向けの地理空間プラットフォームへ軸足を移してきました。無料で楽しいフライトシムは、その入り口に置かれた最も親しみやすい看板でもあるわけです(これは編集部としての見方です)。

規制やリスクの面では、現時点で大きな論点は見当たりません。ただ、実在の都市や施設の上空を誰でも俯瞰できる体験が一般化すれば、プライバシーや施設情報の扱いをめぐる議論が将来的に浮上する可能性は残ります。今は純粋な楽しさが先行していますが、地図と現実が地続きになるほど、その境界の引き方が問われていくはずです。

【用語解説】

フライトシミュレーター(飛行シミュレーター)とは、コンピューター上で航空機の操縦を疑似体験する仕組みである。今回のGoogle Earth版は地球全体の衛星画像と地形の上を飛べる点が特徴で、精密な操縦訓練ではなく観光的な探索を主眼とする。

イースターエッグ(隠し機能)とは、ソフトウェアに開発者が忍ばせた、通常の操作では表に出てこない機能や遊び心のことである。Google Earthのフライトシミュレーターは長らくこの形で提供されてきた。

標高プロファイル(Elevation profiles)とは、指定した経路に沿って地表の高さの変化を断面図のように表示する機能である。地形の起伏や勾配を把握する用途で使われる。

実験的(experimental)ラベルとは、Googleが正式版になる前の機能に付ける位置づけである。サポートが限定され、仕様が予告なく変わる可能性があることを示す。

3Dタイルとは、建物や地形の立体データを細かな区画(タイル)に分けて配信する仕組みである。ブラウザ上で都市の3D表現を表示する際の基盤技術にあたる。

API(クレジット)とは、外部のサービスやデータを呼び出すための窓口がAPIであり、その利用量に応じて発生する費用や使用枠がクレジットである。3Dデータを大量に呼び出すと費用がかさむ点が、開発者の間で議論されてきた。

SR22/F-16とは、デスクトップ版Google Earth Proのフライトシミュレーターで選べた2機種である。SR22はシーラス社の単発プロペラ機で初心者向け、F-16は戦闘機で高速・機敏な飛行に向く。なお、今回のWeb版(実験的)の公式手順には機種選択の記載はなく、機体を選ぶ機能は確認できない。

【参考リンク】

Google Earth(外部)
衛星画像と3D地形で地球を閲覧できるGoogleのサービス。今回のフライトシミュレーターはWeb版のToolsメニューから起動できる。

Fly around the world (Experimental)|Google for Developers(外部)
Web版フライトシミュレーターの公式ドキュメント。起動手順や対応環境、簡略化された物理挙動などの制限事項を記載している。

Bring more of your data to Google Earth|Google Maps Platform Blog(外部)
標高プロファイルや3Dモデル・シェープファイルのインポートなど、デスクトップ機能がWeb版に追加された流れを説明する公式ブログ。

Google Maps Platform(外部)
地理空間データと分析ツールを統合提供するGoogleのプラットフォーム。2025年にGoogle Earthもこの一員となった公式サイト。

Gemini(外部)
GoogleのAIサービス。プロ向けのGoogle Earthが取り込みを進めている対話型AI機能の公式窓口にあたるサイトである。

Microsoft Flight Simulator(外部)
Microsoftによる本格的なフライトシミュレーションゲームの公式サイト。今回のGoogle Earth版と対比して言及した。

Bing Maps(外部)
Microsoftの地図サービス。Microsoft Flight Simulatorの3D地形データの基盤となっている地図プラットフォームである。

【参考動画】

【参考記事】

Google Earth’s flight simulator is now available in your browser(The Verge)(外部)
金曜にGoogleが発表し、アプリのダウンロード不要でブラウザから使える点と、過去はデスクトップ版の隠し機能だった経緯を報じる。

Google Earth now has a free flight simulator in your browser(gagadget)(外部)
6月12日にWeb開放されたと報じ、無料・アプリ不要・実験的扱い、回線速度が描画を左右する点を実例で整理している。

Google brings its legacy Earth Pro Flight Simulator to the browser(Digg)(外部)
2007年来のデスクトップ限定機能が無料の全世界Web体験になった経緯を、利用者の反応やMicrosoftとの対比とともに紹介。

Google Just Brought Its Beloved Flight Simulator to the Web(iPhone in Canada)(外部)
2007年のGoogle Earth 4.2に隠し機能として登場した歴史と、起動手順や従来の機種(F-16/SR22)を分かりやすく説明している。

You Can Now Fly Around Google Earth in an Airplane(PetaPixel)(外部)
全世界展開が金曜だったことや、矢印キー・速度調整など操作面を実際に試した所感とともに具体的に紹介している。

Google Maps Platform Innovators Newsletter(Google for Developers)(外部)
2025年4月にGoogle EarthがGoogle Maps Platformファミリーの一部となったことを伝える公式ニュースレター。

Google Earth Adds Flight Simulator Mode To Web Version(Lowyat.NET)(外部)
モバイルではアプリのダウンロードを促される=実質デスクトップブラウザ向けである点にも触れている。

【編集部後記】

正直に告白すると、私もさっそく飛ばしてみたのですが、ものの数秒で機体がくるりと背面飛行になり、そのまま真っ逆さまに墜落しました。操縦、思っていた10倍むずかしいです。地面に激突して「You crashed!」と出たときの気まずさといったら……。でも不思議と悔しくて、つい「もう一回」と再挑戦してしまうんですよね。

それでも、自分の生まれ育った街の上空をかすめた瞬間は、ちょっと感動しました。見慣れたはずの通りが、空から見るとまるで知らない場所みたいで。墜落の合間に、ぜひあなたの街の上も飛んでみてください。うまく着陸できた人がいたら、コツをこっそり教えてほしいくらいです。次はどこの空で墜ちましょうか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。