XR・メタバース総合展「∞ mugen」|キヤノン・シーメンス参画で全8社集結、コンシューマーと産業の二層構造が鮮明に

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XRデバイス市場は今、コンシューマー向けと産業向けという2つの層が同時進行で成長しています。その両方が一堂に集まる展示会が、来週東京で開幕します。8社の顔ぶれが示す市場の現在地を、読み解いてみませんか。


第6回XR・メタバース総合展(2026年6月17〜19日、東京ビッグサイト)の特別企画「∞ mugen」に、キヤノンとシーメンスの2社が新たに参画することが決定した。これにより、第一弾・第二弾で発表済みのHTC NIPPON、XREAL、Shiftall、NTTコノキューデバイス、Even Realities、PICOと合わせ、全8社が出揃った。

キヤノンは製造業向けMRシステム「MREAL」を軸に、導入・運用実績から見えた課題の共有と、開発中の小型・軽量MRデバイスのコンセプトモデルを展示・講演予定だ。シーメンスはデジタルツイン戦略の中核技術としてXRを位置づけ、自社ソフトウェアとXRを統合した製品ライフサイクル全体の効率化支援を訴求する。同展は主催のRX Japan合同会社が「日本最大級のXR専門展」と位置づけており、今回で第6回目を迎える。

From: 文献リンク世界のXRデバイスメーカーが集う特別企画「∞ mugen」にキヤノン、シーメンスが参加決定、全8社が一堂に集結|PR TIMES

【編集部解説】

2026年6月17〜19日に東京ビッグサイトで開催される第6回XR・メタバース総合展の特別企画「∞ mugen」に、キヤノンとシーメンスが加わり全8社が出揃いました。この顔ぶれを眺めると、XRデバイス市場の現在地がくっきりと浮かび上がります。

8社は大きく2つの層に分かれます。一方はXREAL、PICO、HTC NIPPON、Shiftall、Even Realitiesといったコンシューマー・デベロッパー向けの企業群。もう一方が、今回新たに加わったキヤノンとシーメンスを核とする産業向けの企業群です。この組み合わせは偶然ではなく、XRが「体験するもの」から「現場で使うもの」へと用途が広がりつつある状況をそのまま映しています。

コンシューマー側の動きを市場データで確認しておきます。IDCの調査によると、MR/VRヘッドセットの出荷台数は2025年に減少した一方、スマートグラスを含むXRグラス市場は2025〜2029年にかけてCAGR 29.3%での成長が予測されています。また2026〜2030年のXR市場全体のCAGRは26.5%とされており、成長をけん引するのはヘッドセットではなくグラス型デバイスだとされています。つまり、コンシューマー向けのXRはヘッドセットから軽量なグラス型へと軸足が移っている最中です。XREAL、PICO、Even Realitiesといった企業はまさにこの潮流の中心にいます。

産業向けは、また異なる論理で動いています。キヤノンのMRシステム「MREAL」は、製造業・建築・医療・教育といった現場での活用を軸に展開しており、四国電力など複数の企業への導入実績を持ちます。今回の展示では、開発中の小型・軽量MRデバイスのコンセプトモデルも披露予定とされており、「より多くの現場で使われる技術」へと間口を広げようとしていることが読み取れます。シーメンスは、デジタルツイン戦略の中核にXRを据え、製品ライフサイクル全体のデジタル化を進める立場からの参画です。産業向けXRの特徴は、コンシューマーのように「楽しいから使う」ではなく、「この工程でこれだけのコストと時間が削減できる」という明確なROIが求められる点にあります。それゆえ普及は遅いものの、一度導入されれば業務に深く組み込まれる傾向があります。

主催者自身も整理しているように、スマートグラス(日常×AI)とHMD(産業×デジタルツイン)という二層構造は、すでに業界の共通認識になりつつあります。一方で、この二層が今後も明確に分離したまま進むかどうかは定かではありません。キヤノンが「小型・軽量」を打ち出し、XREALが企業・パートナーとの共創を語るように、双方向への越境も始まっています。「∞ mugen」という場は、その境界線がどこにあるかを確かめる機会にもなりそうです。

【用語解説】

XR(クロスリアリティ)
VR(仮想現実)・AR(拡張現実)・MR(複合現実)を包括する技術の総称。現実世界と仮想世界を融合・拡張する技術全般を指す。

MR(複合現実)
現実空間に仮想のCGオブジェクトをリアルタイムで重ね合わせ、両者が相互に作用する技術。ARより高い空間認識精度が特徴で、製造業の設計検証や建築分野での活用が進む。

デジタルツイン
現実の設備・工場・製品などの情報を収集し、仮想空間上にリアルタイムで再現する技術。シミュレーションや遠隔監視・保全に活用される。製品ライフサイクル全体のデジタル管理にも応用される。

OpenXR
XRデバイスとアプリケーションの相互運用を実現する業界標準規格。Khronos Groupが策定し、キヤノンのMREALも2024年に対応した。

【参考リンク】

∞ mugen 特設ページ|XR・メタバース総合展(外部)
第6回XR・メタバース総合展の特別企画「∞ mugen」の公式ページ。全8社の参画企業情報や企画の趣旨を掲載。

キヤノンITソリューションズ MRソリューション(MREAL)(外部)
キヤノンのMRシステム「MREAL」の製品・ソリューション紹介ページ。製造・建築・医療・教育分野での活用事例や、アライアンスパートナー制度の詳細を掲載。

シーメンス 日本公式サイト(外部)
デジタル化と産業オートメーションを手がけるシーメンスの日本向け公式サイト。デジタルツインや製造DX関連のソリューション情報を掲載。

XREAL 公式サイト(外部)
コンシューマー向けARグラスを手がけるXREALの日本語公式サイト。製品ラインナップや購入情報を掲載。

PICO 公式サイト(外部)
ByteDance傘下のVRヘッドセットメーカーPICOの日本向け公式サイト。

【参考記事】

XR & Smart Glasses Market Statistics Report (2026)|Treeview(外部)
IDC・Counterpoint Researchのデータを集成したXR市場統計レポート。PICOの市場動向やXREALのシェアデータなどを掲載。68以上のソースを引用(2026年5月更新)。

Global XR Shipments Rebound Behind Glasses-First Momentum|IDC(外部)
IDCによるXR市場動向レポート。MR/VRヘッドセット出荷の減少とスマートグラス市場の拡大予測(CAGR 29.3%)を示す(2025年12月公開)。

XR Market Expands 44.4% in 2025 as Smart Glasses Take Center Stage|IDC(外部)
IDCによる2025年XR市場総括と2026〜2030年予測。グラス主導でCAGR 26.5%成長を見込む(2026年3月公開)。

【関連記事】

「XR Kaigi 2025」で見えた現場実装の最前線4社
XRの現場実装が具体的にどのような形で進んでいるか、出展企業の事例を通じて読み解いた記事もあわせてご覧ください。

日本のイマーシブテクノロジーの”今”を知る|XR・メタバース総合展、明日より開催
前回(第5回)の展示会を振り返った記事もあります。今回との出展傾向の変化を比較してみてください。

【編集部後記】

コンシューマーと産業、軽量グラスと産業用HMD。この2つの層がどう交差し、あるいは交差しないまま並走するのか、私たちが問い続けるべき問いはそこにあるかもしれません。XRの「実装フェーズ」という言葉が飛び交う今、実際に何がどこまで「実装」されているのかを、会場の熱量と切り離して問い直すことも必要ではないでしょうか。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。