社内資料をAIに読ませて調べるところまでは、多くの企業が到達しました。残っていたのは、その答えを報告書の形に直す手作業です。ChatSenseのNotebookに加わる新機能は、引用を付けたレポートをWord形式で書き出します。狙われているのは、提出物になる直前の一段です。
株式会社ナレッジセンスは2026年8月14日、法人向け生成AIエージェント「ChatSense」のNotebook機能に、選択した資料を根拠として引用付きのレポートをWord形式で自動生成する機能をリリース予定だと発表した。
提供時期は近日中とされ、価格や対象プランは公表されていない。Notebook機能はこれまで、社内資料をソースとして追加し、その内容をもとにした質問回答やスライド生成を提供してきた。同社は開発の背景として、調査した内容を社内向けの報告書にまとめる際に文書を作り直す手間が生じていたこと、大量の社内資料を扱う企業から編集可能な報告書として受け取りたいという要望があったことを挙げている。
ChatSenseは東証プライム上場企業を含む大手企業等、500社以上に導入されている。
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法人向け「Notebook AI」、大量の社内データから自動レポート生成

【編集部解説】
今回のリリースは、機能の説明としては短いものです。Notebookに入れた社内資料のうち、選んだものを根拠にレポートを作り、引用を付け、Word形式で出す。それだけです。
ただ、この「Word形式で出す」の一言が指しているのは、日本の法人現場でずっと残ってきた、ある段差です。
生成AIに社内資料を読ませて調べる、というところまでは、多くの企業がすでに到達しています。問題はその先でした。画面の中で得た答えを、上司に回す報告書、稟議に添える資料、自治体なら議会に出す説明資料へ変える工程が、いまだに人の手作業として残る。コピーして、貼って、体裁を整え直す。調べる作業が速くなったぶん、提出物に変える工程だけが相対的に重くなっていたわけです。
Wordという指定は、その意味で技術的な選択というより、業務慣行に合わせにいった選択だと読めます。日本の組織で回覧され、赤字が入り、版を重ねる文書の多くは、いまもWordのファイルとして存在しています。出口をそこに合わせるということは、AIの成果物を既存の承認プロセスへそのまま流し込めるようにするということです。
この機能を単体で見ると小さな追加に見えますが、Notebookをめぐる発表を時系列で追うと位置がはっきりします。ChatSenseは2026年6月上旬からNotebookの機能概要やベータ展開の予定を公表し、6月22日には月額980円からの法人プランでベータ版の提供開始を発表しました。そこから2か月足らずの間に、カスタム指示、テキストファイルの入力、画像を含む社内データの検索、Webソースの取り込み、CSVとMarkdownへの対応、スライドのプロンプト・テーマ・枚数指定、PPTX出力など、10件を超えるNotebook関連の機能追加や対応予定が発表されています。今回のWordレポートも、その「出力先」を広げる動きのひとつです。
同時に、根拠を確認するための機能も強化されています。Notebookでは7月6日に、AIの回答が参照した資料の該当箇所をハイライト表示する機能が追加されました。今回のWordレポートにも引用が付き、記述がどの資料に基づくかを確認できるとされています。さらにChatSense全体では8月13日、RAG回答の引用から根拠のPDFをチャット画面内で直接確認できる機能も発表されました。資料を読むだけでなく、根拠へ戻りながら成果物まで作る方向へ機能が広がっていると見るのが、現時点では最も事実に沿った整理です。
引用が付くこと自体の意味も、ここで整理しておきたいところです。AIが作った報告書に引用が並んでいれば内容が保証される、というわけではありません。引用先の資料が古ければその古さは引き継がれますし、引用が示す箇所と本文の主張が対応しているかは、読む側が確かめることになります。
だからこそ、引用を成果物の中に持ち込む設計には意味があります。確かめられる状態で渡されるかどうかで、検証にかかる手間はまったく変わるからです。引用のない要約を受け取った人は、まず出典を探すところから始めなければなりません。引用が付いていれば、少なくともどこを見に行けばいいかは最初から示されている。正しさを保証する仕組みというより、確かめる作業を短くする仕組みとして読むのが妥当でしょう。
導入を検討する立場から見ると、確認しておきたい条件もあります。提供時期は「近日中」とされています。Notebookは現行のビジネスプランで、1ユーザーあたり月100ターンまでが定額、その後は1ターン5円と公式サイトで案内されています。一方、同サイトではスタジオ機能の生成上限について別途ヘルプページを確認するよう案内されています。今回のWordレポート生成にどの利用条件が適用されるかは、問い合わせの際に確認しておきたい点です。
同社は「リリース予定」の段階で発表を出すことが多く、今回もその形です。確定を待って出す運営に比べれば情報の粒度は粗くなりますが、要望を拾ってから形にするまでの距離が近いとも言えます。実際、今回も開発の起点として顧客からの要望が挙げられています。
もう少し引いて見ると、生成AIの製品競争の重心が動いていることがわかります。どのモデルが賢いかではなく、その出力を人がどう受け取り、自分の名前を付けて外に出すかという、最後の数十センチの設計へ。NECが2026年8月に新設したAI組織でも、AIが業務を担う一方で、最終的な評価と意思決定、品質とガバナンスの統制は人が担うとされています。AIの出力をどこで人が確認し、統制するのかという点で、今回の論点と重なります。
社内資料は、眠っているだけでは価値になりません。読まれ、まとめられ、誰かの判断材料として机の上に載ったときに、はじめて意味を持ちます。今回の機能が引き受けようとしているのは、その最後の一段です。
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【編集部後記】
リリース一覧をさかのぼると、8月4日に「大量のファイルから音声ブリーフィングをAI生成する」機能の予告が出ていました。公式サイトにも、ポッドキャスト形式の音声サマリーを予定していると書かれています。
読む形で出す機能と、聞く形で出す機能が、同じ時期に並んで進んでいる。社内資料の出口が増えるほど、どの形で受け取るかを決めるのは人の側の仕事になります。次に増える出口は、何になるでしょうか。
【用語解説】
Notebook(ChatSenseのNotebook機能)
社内資料をソースとして登録し、その内容を根拠にAIが回答・要約・スライド生成を行う作業領域。2026年6月にベータ版の提供が始まった。
RAG
社内資料などの外部データを検索し、その内容を根拠にAIが回答を組み立てる仕組み。Retrieval-Augmented Generationの略。モデルが学習済みの知識だけで答えるのではなく、指定した資料の範囲で答える点が特徴である。
スタジオ機能
Notebook上で、登録した資料からスライドや音声などの派生アウトプットを生成する領域。ChatSenseの公式サイトでは、生成の上限が通常の利用枠とは別に案内されている。
ソース
Notebookに登録する、回答の根拠となる資料。PDF、Word、Excel、PowerPointなどのファイルを登録でき、AIはここに入れた資料の範囲で答えを組み立てる。
ターン
Notebookの利用量を数える単位。1回の指示と応答のやりとりが1ターンにあたる。ChatSenseでは1ユーザーあたり月100ターンまでが定額枠で、超過分は1ターンにつき5円が加算される。
引用
AIの回答や生成物に、どの資料のどこを根拠にしたかを示す表示。内容の正しさを保証するものではなく、確認先を示すものである。
Word形式(.docx)
Microsoft Wordの標準的なファイル形式。書式や変更履歴を保持でき、日本の組織で回覧・修正される文書に広く使われている。
PPTX
Microsoft PowerPointの標準的なファイル形式。画像として書き出す方式と異なり、文字や図をあとから編集できる。
Markdown
記号を使って見出しや箇条書きを表す軽量な記述形式。テキストファイルのまま構造を持たせられる。
カスタム指示
AIの回答の方針をあらかじめ指定しておく機能。役割や出力の粒度を毎回書かずに済む。
【参考リンク】
ChatSense Notebook(外部)
ChatSenseのNotebook機能の公式ページ。対応ファイル形式、引用の付き方、料金体系、今後追加が予定されている機能を掲載している。
ChatSense(外部)
法人向け生成AIサービスChatSenseの公式サイト。プラン別の料金、搭載しているAIモデル、拡張機能の一覧を確認できる。
株式会社ナレッジセンス(外部)
ChatSenseと生成AIテストサービスOzoneを提供する運営会社の公式サイト。導入事例やリリース情報がまとめられている。
スライドAIエージェント(外部)
ChatSenseのスライド生成機能のギャラリーページ。社内データからパワーポイント資料を作った出力例を確認することができる。
法人向けエージェント「Cowork」(外部)
ChatSenseのブラウザ操作エージェントCoworkの公式ページ。権限制御や高リスク操作の確認手順について説明している。
【参考記事】
株式会社ナレッジセンスのプレスリリース一覧(外部)
ナレッジセンスのプレスリリース一覧。Notebook関連の機能追加が6月以降どの順で発表されてきたかを追うことができる。
セキュアな「Notebook」AIサービス「ChatSense」、資料から1クリックでスライド化する機能を実装予定(外部)
Notebook機能から1クリックでスライドを生成する機能の実装予定。この時点でNotebook機能自体が公表されている。
セキュアな法人向け「Notebook」AIサービスをリリース、980円〜法人利用可能(外部)
Notebookのベータ版リリースを伝える発表。月額980円からの法人プランの範囲で利用できるようになったと案内している。
セキュアな法人契約プラン「Notebook AI」、RAGの根拠をハイライト(外部)
AIの回答が参照した資料の該当箇所をハイライト表示する機能。Notebook機能そのものの更新として発表されたものである。
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回答に付いた引用から根拠のPDFをチャット画面内で確認できる機能。ChatSense全体のRAG機能に関する発表である。
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