11月4日、e-Taxが不審な通信を理由に止まり、翌日に再開しました。e-Taxのページの告知は「納税者の情報は漏えいしていない」と伝えています。ところが報道によれば、国税庁はe-Taxを動かすプログラムの一部がコピーされ、外部に流出したと説明していました。告知に書かれたことと書かれなかったことを、並べて読みます。
国税庁は2026年11月4日、国税の申告や納税をインターネットで行う「e-Tax」で不審な通信を検知したとして、確認のための機器メンテナンスを始め、利用を停止した。翌5日、必要な対応と安全性の確認が完了したとして利用を再開し、納税者の情報は漏えいしていないことを確認したと発表した。
時事通信によると、同庁は、e-Taxを動かすプログラムの一部がコピーされて外部に流出したと説明した。システム上の機微な情報や納税者情報の流出はなく、申告期限の一律延長は予定していないという。
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e-Tax再開のお知らせ(国税庁 e-Tax)
【編集部解説】
国税庁がe-Taxのページに載せた再開の告知は、「不審な通信を検知した」「必要な対応と安全性の確認が完了した」「納税者の情報は漏えいしていないことを確認した」という短いものです。
その告知には書かれていないことを、報道が伝えています。時事通信と税務の専門紙「税のしるべ」によると、国税庁は、不正アクセスによってe-Taxを動かすプログラムの一部がコピーされ、外部に流出したと説明しました。税のしるべは、コピーされたのは受付部分のプログラムの一部で、その先への侵入はなかったと伝えています。
税のしるべによると、停止していたのは11月4日の午前11時40分から5日の午前10時40分まで、ほぼ1日です。
「納税者情報の流出なし」と「プログラムの流出」は両立する
報道から読み取れる国税庁の説明は、申告を受け付ける部分のプログラムの一部が持ち出されたものの、その先へは入られていない、というものです。
時事通信によると、国税庁の担当者は「システム上の機微な情報や納税者情報の流出はない」と話しています。まずは利用者にとって最も大事な点が守られたことになります。
それでも、プログラムの流出は軽く見てよい話ではありません。一般に、流出したプログラムは、解析されれば新たな攻撃の手がかりになるおそれがあります。流出した範囲や形式は公表されていませんが、今回の対応で何を改めたのかが、次の攻撃への備えになります。国税庁は「多層的なセキュリティ対策」を講じ、同様の事象が起こらないよう努めるとしています。
告知と説明のあいだ
e-Taxのページの再開告知は、納税者情報が漏えいしていないことを伝える一方で、プログラムの流出には触れていません。流出の説明は、報道機関への説明として伝わりました。
e-Taxのページは、利用者が直接確かめられる公式の窓口です。何が持ち出され、何が守られたのかを、利用者が直接読める場所に一文でも載せておく。それが、報道だけが先に広がって不安が膨らむのを防ぐ近道になります。
実務への影響
11月は、勤務先で年末調整の準備が始まる時期です。ITmediaは、利用者から「年末調整ができない」という声が上がったと伝えました。
ただし、従業員が書く年末調整の申告書は勤務先に出すもので、国税庁の年調ソフトで作った書類も、データか印刷物で勤務先に渡します。e-Taxの停止で手が止まりえたのは、e-Taxで源泉所得税の納付や法人の電子申告をしている事業者や、その手続きを代行する税理士事務所の作業です。ただし従業員の側にも、年末調整で使う住宅ローン控除の証明書をe-Taxのメッセージボックスから受け取るなど、e-Taxを使う手順があります。
源泉所得税の納期限は、原則として給与を支払った月の翌月10日です(納期の特例を受けている場合は年2回)。なお、時事通信が伝えた「一律延長は予定していない」という説明は、申告期限についてのものです。
便乗する詐欺メールに備える
e-Taxや国税庁を装うメールは、以前から多く出回っています。フィッシング対策協議会が9月30日に公表した事例では、「還付に関するお知らせ」「【重要】e-Taxメッセージボックスに新しいお知らせがあります」など、税務を思わせる件名が少なくとも11種類使われていました。今回の停止と再開は、「再開のお知らせ」「再ログインのお願い」といった新しい口実になりえます。
国税庁を装うメールから偽アプリを入れさせる手口は、innovaTopiaでも10月27日の記事で伝えました。協議会は9月30日時点で、スマートフォン用のe-Taxアプリは提供されていないと注意を呼びかけています。
メールやSMSのリンクからe-Taxに入らず、あらかじめ確認した国税庁の公式サイトやブックマークから入る。これが基本の備えです。
確定申告期を前に
e-Taxでは、2026年2月25日と3月3日にも、ログインや送信がしづらくなる事象が起きています。次の確定申告期を控え、安定して使えるかどうかへの関心は高まっていきます。
今回は約23時間の停止を経て再開し、納税者情報の流出はなかったと国税庁は説明しています。守れた部分と持ち出された部分を、利用者に向けて具体的に示していくこと。それが、数か月後の確定申告期に、多くの人が安心してe-Taxを開くための土台になるはずです。
【関連記事】
【解説】国税庁装うメールから偽アプリ、銀行アプリに偽ログイン画面 信用金庫などが注意喚起
【解説】DMARC合格の詐欺メールが3か月続けて9割超、フィッシング対策協議会の調査で見えた「認証済み」の限界
【編集部後記】
告知には「漏えいしていない」とあり、報道には「流出した」とあります。読み比べると、どちらも誤りではありません。漏れていないのは納税者の情報で、流出したのはプログラムの一部です。
ただ、e-Taxのページだけを見た人には、後者は届きません。自分のデータは大丈夫かと気にする人ほど、公式の告知を確かめに行くはずです。その告知が報道より短いという順番を、次の確定申告期までにどう入れ替えていけるでしょうか。
【用語解説】
e-Tax(国税電子申告・納税システム)
国税の申告や納税、各種の届け出をインターネットで行うための国税庁のシステム。
源泉所得税
会社などが給与や報酬を支払う際に差し引き、本人に代わって国に納める所得税。納期限は原則として支払った月の翌月10日。
納期の特例
承認を受けた小規模な源泉徴収義務者が、源泉所得税を年2回にまとめて納められる制度。
年末調整
勤務先が、1年間に源泉徴収した所得税と、本来納めるべき税額との差を精算する手続き。
年調ソフト
国税庁が無償で提供する、年末調整の申告書を作るためのソフト。作った書類は勤務先に提出する。
フィッシング
実在の組織を装ったメールやSMSで偽サイトに誘導し、IDやパスワード、カード情報などをだまし取る詐欺。
【参考リンク】
e-Taxを装った不審なメール等にご注意ください(国税庁 e-Tax)(外部)
e-Taxや国税庁を装うメールやSMSへの注意を呼びかけるページ。リンクを開かず公式サイトから確かめるよう案内している。
No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例(国税庁)(外部)
源泉所得税の納期限は原則として給与などを支払った月の翌月10日であることと、年2回にまとめて納める特例の条件を説明している。
国税庁をかたり不正アプリのインストールへ誘導するフィッシングメール (2026/09/30)(フィッシング対策協議会)(外部)
9月30日公表。国税庁をかたるメールの件名の例と、Android向けの偽アプリを入れさせる手口をまとめた協議会の注意喚起。
【参考記事】
e-Tax、運用再開 プログラムの一部漏えい―国税庁(時事ドットコム)(外部)
国税庁が、e-Taxを動かすプログラムの一部がコピーされ流出したと説明したと伝える。申告期限の一律延長は予定していない。
e-Taxに不正アクセス、納税者情報の漏えいなし(税のしるべ電子版)(外部)
停止は4日11時40分から5日10時40分まで。受付部分のプログラムの一部がコピーされたが、その先への侵入はなかったと伝える。
e-Taxに「不審な通信」 緊急メンテで利用停止、再開未定 「年末調整できない」悲鳴【復旧】(ITmedia NEWS)(外部)
e-Taxの停止の発表と、年末調整の時期に重なったことへの利用者の声を伝える記事。翌5日の再開を受けて、内容を追記している。



