2026年6月9日、AppleはWWDC 2026の基調講演を開催し、iOS 27・macOS Golden Gate・Siri AIをはじめとする全プラットフォームの大型アップデートを発表しました。2年越しだったSiri刷新がついに形となった今年のWWDCで、何が変わり、何が残ったのか。発表内容を整理します。
日本時間6月9日から13日、WWDC 2026がカリフォルニア州クパティーノのApple Parkで開催され、iOS 27・iPadOS 27・macOS 27(Golden Gate)・watchOS 27・tvOS 27・visionOS 27が発表された。Siri AIのお披露目を中心に、Apple IntelligenceとGoogle Geminiモデルの連携、Liquid Glassの調整、子ども向け安全機能の大幅強化、パフォーマンス改善、iOS 27の幅広いデバイス対応など、多岐にわたる発表が約1時間半にわたって行われた。
※アイキャッチ画像はWWDC2026公式サイトより引用
【編集部解説】
Siri AI——独立アプリ化と会話型へのシフト
今年最大の発表は、2年越しでお披露目となった新しいSiri「Siri AI」です。従来のSiriとは別に独立したアプリとして提供され、会話の継続、メッセージ・写真・メールへの横断的なアクセス、アプリをまたいだタスク実行に対応します。画面上の内容を認識して対応する「ビジュアルインテリジェンス」も搭載され、macOS Golden GateではSpotlight検索にも統合されます。声の抑揚やスピードのカスタマイズも可能になりました。
その基盤となるのが、Apple Foundation Models(AFM)とGoogle Geminiの連携です。AppleはGeminiのモデルを学習・蒸留の段階で活用して自社のAFMを構築したと説明しており、最も高度なクラウドモデル「AFM Cloud Pro」はGoogleのクラウドインフラ上のNvidia GPUで動作します。ランタイムで動作しているのはAppleが独自に開発したモデルであり、GeminiそのものではないとAppleは強調しており、プライバシー保護はPrivate Cloud Computeの仕組みをGoogleのインフラにも拡張することで担保されると説明しています。
ただし、Siri AI自体は秋のiOS 27リリース後もさらに「今年後半のベータ」としての提供となるとAppleは説明しており、全機能が出揃うまでには時間がかかる見通しです。EUではDMA(デジタル市場法)を理由にiPhoneおよびiPadでは当面提供されません。macOSおよびvisionOSでは利用可能ですが、watchOS 27についてはiPhone版Siri AIとのペアリングが前提となるため、EUのApple WatchユーザーもSiri AIを利用できません。
Apple Intelligence、標準アプリ全体に展開
Apple IntelligenceはSiri AI以外にも、標準アプリ全体に広く組み込まれます。Safariではタブをトピック別に自動整理し、価格変動や在庫復活などWebページの変更を通知する機能のほか、自然言語でカスタム拡張機能を生成することも可能になります。Passwordsアプリでは脆弱・漏洩パスワードをワンタップで強化し対象サイトで自動更新まで行います。MessagesとMailにはユーザーの文体を学習したスマートリプライ、Calendarには自然言語でのイベント追加・編集が追加されます。ShortcutsアプリとHomeアプリへの統合も発表されました。
写真まわりでは、構図を仮想的に調整する「Spatial Reframe」、画像を自然に拡張する「Extend」、不要な被写体を除去する「Cleanup」の強化がPhotosアプリに加わります。Image PlaygroundではフォトリアルなAI画像生成やロック画面壁紙の生成が可能になり、Apple Intelligenceで生成・編集した画像にはSynthIDによる透かしが自動付与されます。文章校正・改善提案機能はサードパーティアプリを含む全体に展開され、VoiceOverによる画像の詳細説明やアクションボタンを使ったカメラ越しの質問など、アクセシビリティ機能も強化されます。
デザインとパフォーマンスの改善
昨年大きな話題を呼んだLiquid Glassデザインは、今年は洗練フェーズに入りました。透明度を調整できるスライダーが追加されてデフォルトの外観も変更されます。macOS Golden Gateではツールバーの統一、サイドバーの画面端までの拡張、全ウィンドウの角丸半径の統一、アプリアイコンの刷新が行われます。
パフォーマンス面でも大きな改善が謳われており、AirDropの転送速度・Mailの読み込み・Apple Musicの再生開始などで最大80%高速化、アプリの起動が最大30%、写真のカメラロール表示が最大70%高速化されるとAppleは説明しています。検索基盤もSpotlight・Mail・Photosにわたって再構築され、インデックスがほぼリアルタイムで更新されます。
各OS——広がる対応デバイスと新機能
iOS 27はiPhone 11以降に対応し、過去最大の対応範囲となりました。iCloud共有アルバムがフル解像度での共有に対応してAndroid・Windowsからもアクセス可能になり、AirPodsにはカスタマイズ可能なイコライザー機能、CarPlayには動画アプリのサポートが加わります。watchOS 27はSiri AIの統合とSmart Stackの予測強化のほか、Healthアプリにペリメノポーズおよびメノポーズのトラッキング機能が追加されました。visionOS 27ではSiri AIの統合とVisual Intelligence機能が加わります。
子ども向け安全機能の大幅強化
今年のWWDCでは予想以上に大きな時間が子ども向け安全機能に割かれました。13歳未満に必須となる子どもアカウント、カテゴリ別・時間帯別にアプリ利用を管理できる「Time Allowance」、Messagesから直接Webサイト閲覧の承認をリクエストできる「Ask to Browse」などが導入されます。iPhoneを持たない子ども向けにApple Watchを設定できる機能も追加され、これらは開発者向けAPIとしても公開されサードパーティアプリにも適用可能になります。
ティム・クックの最後のWWDC
今回のWWDCは、2011年からAppleを率いてきたティム・クックにとってCEOとして最後の基調講演でした。9月1日に後任のジョン・ターナス(現ハードウェアエンジニアリングSVP)にバトンを渡します。クックは閉幕の言葉で、「皆さんと共にいられたことに深く感謝しています。想像力に限界はない。未来はとても明るくなると私は確信している。」と述べ、15年間を締めくくりました。ターナスは基調講演に登場せず、次世代リーダーへのバトンタッチは9月以降に持ち越されました。
【用語解説】
Apple Foundation Models(AFM)
AppleがWWDC 2026で発表した大規模言語モデル群の総称。端末上で動作するAFM Core / AFM Core Advancedと、クラウドで動作するAFM Cloud / AFM Cloud Proなど複数のモデルで構成される。Google Geminiのモデルを学習・蒸留に活用して構築された。
Siri AI
WWDC 2026で発表された新世代のSiri。AFMを基盤に、会話継続性・アプリ横断タスク実行・画面認識などを備える。独立アプリとして提供されるほか、Spotlightなどにも統合される。英語のみ先行対応で、今年後半よりベータ提供開始予定。
DMA(デジタル市場法)
EUが2022年に発効・2023年5月に適用を開始し、2024年3月にゲートキーパー企業への義務履行が完全に始まった大規模プラットフォーム規制法。AppleはこれをEUでのSiri AI(iOS/iPad版)提供見送りの理由としている。
Private Cloud Compute(PCC)
Appleが2024年に導入したプライバシー保護型クラウドAI処理の仕組み。WWDC 2026では、このPCCの枠組みをGoogleのクラウドインフラにも拡張して利用することが明らかになった。
SynthID
Google DeepMindが開発した電子透かし技術。WWDC 2026でAppleはApple Intelligenceで生成・編集したすべての画像に同技術による透かしを自動付与すると発表した。
【参考リンク】
Apple WWDC 2026 公式サイト(外部)
Apple Intelligenceの発表内容、セッション動画、開発者向けドキュメントを提供する公式ページ
Everything announced at Apple’s WWDC 2026 keynote(Engadget)(外部)
Siri AIから子ども向け安全機能まで各発表の概要をコンパクトにまとめた記事
WWDC 2026 recap: iOS 27, macOS Golden Gate, Siri AI(Digit.in)(外部)
発表内容全体のまとめと、Apple Intelligence対応デバイス要件などの詳細
【参考動画】
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【編集部後記】
2年越しの発表となったSiri AIがついに姿を現したWWDC 2026。「約束が果たされた」という安堵の一方、「今年後半のベータ」という注釈が示すように、まだ道半ばでもあります。AIレースの速度を考えると、Appleが「間に合った」のか「追いついた」のか、それとも「また少し遅れた」のかは、秋のリリースを実際に使ってみてから判断することになりそうです。今年の発表の中で、皆さんが最も気になった機能はどれでしたか?












