Apple Vision Proが切り拓いた高性能XRヘッドセット市場に、もう一つの有力な挑戦者の輪郭がはっきりと見えてきました。ByteDance傘下のPicoが開発してきたVision Pro対抗機に、正式名称と発表イベントの日程が明らかになったのです。
ByteDance傘下のPicoが開発を進めるVision Pro対抗機に、正式名称「Pico Space Pro」が与えられたことが明らかになった。中国メディアNweonの報道によれば、Pico Space Proは同社が今年3月に初めて予告したスタンドアロン型VRヘッドセット「Project Swan」であるとみられる。
同機は9月2日、北京で開催される特別イベントにて披露される予定だ。詳細な仕様は未公表だが、これまでに4000 PPIのmicroOLEDディスプレイ、平均約40 PPD、知覚・画像処理用の自社開発XRチップ(知覚遅延約12ミリ秒)とフラッグシップSoC(XR2 Gen 2比でCPU・GPU性能2倍以上)によるデュアルチップ構成が伝えられている。実機は依然として公開されておらず、リーク動画も投稿元から削除された状態にある。
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Pico’s Vision Pro Competitor Gets Official Name and Debut Date
【編集部解説】
「正式名称」がなぜニュースになるのか
一見地味な発表に見えるかもしれません。しかし、Pico Space Proという名前が定まったこと自体に意味があります。プロジェクト名「Project Swan」で呼ばれてきたこの機体は、今年3月に初めて存在が明かされて以来、具体的な発売時期が見えないまま半年が過ぎていました。製品名と発表日が固まったということは、開発が量産・出荷に向けた最終段階に入ったことを示すシグナルとして読むことができます。
高性能XRヘッドセット市場の地図が変わった半年間
Picoがこの機体を予告した3月から現在までの間に、市場の前提は大きく変わりました。10月にはSamsungが「Galaxy XR」を1,799ドルで投入し、Vision Proの3,499ドルの約半額で同等クラスの性能を提示するという構図を実証してみせています。「Vision Pro相当の体験を、Vision Proより大幅に安く」という土俵で挑戦者が成立することは、すでに一つの前例として証明されたわけです。
一方、Vision Proの直接の脅威となるはずだったMeta自身の高級路線は足踏みしています。軽量・パック型コンピュート方式の新型ヘッドセット(開発コード「Phoenix」)は2027年前半へと後ろ倒しされ、従来型のQuest後継機も2027年後半以降が見込まれています。Picoが9月2日に動く時点で、少なくとも今年中はMetaが同じ土俵に上がってこない計算になります。ただし9月23〜24日のMeta Connectで、Phoenixに関する続報が語られる可能性はあります。
デュアルチップという選択が示すもの
Pico Space Proの仕様として伝えられている「専用XRチップ+フラッグシップSoC」というデュアルチップ構成は、Apple Vision ProのM5+R1という組み合わせと発想が近いものです。知覚・パススルー処理を専用シリコンに切り出す設計は、Samsung Galaxy XRが採用するSnapdragon XR2+ Gen2によるシングルチップ構成とは異なるアプローチであり、Picoが「Vision Proの土俵で戦う」という位置づけを仕様面でも裏づけています。この専用チップの開発は2022年に始まり、現時点で量産段階に入っているとされます。
価格と発売地域については、現時点でPicoからの公式発表はありません。ただしPicoのヘッドセットはこれまで一貫して、中国・東アジア・東南アジア・欧州を中心に展開されており、北米での正規販売実績はありません。加えて、Pico製品は過去にMeta製品より高めの価格設定をとる傾向があり、Meta優勢地域での訴求力を制約してきた経緯もあります。今回、ByteDanceの潤沢な収益基盤(2025年第2四半期の売上高はMetaを上回る480億ドル規模)を背景に、この価格戦略が変わるのか。9月2日のイベントで、私たちはその答えの一端を見ることになりそうです。
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【編集部後記】
正式名称と発表日が決まっただけで、私たちはまだPico Space Proの実機にも、価格にも触れていません。それでもこの数ヶ月、Vision Pro級の体験を掲げる選択肢は着実に増えています。高性能なXRヘッドセットが「珍しいもの」から「選べるもの」に変わっていくとき、私たちは何を基準に選ぶようになるのでしょうか。9月2日、その手がかりの一つが北京から届きます。
【用語解説】
PPI(ピクセル・パー・インチ)
ディスプレイの精細さを示す指標。1インチあたりに含まれるピクセル数で、数値が大きいほど画面が緻密に見える。
PPD(ピクセル・パー・ディグリー)
視野角1度あたりに収まるピクセル数を示す指標。ヘッドセットは目に近い距離でレンズ越しに見るため、PPIよりも実際の見え方(解像感)に近い評価基準とされる。
マイクロOLED(micro-OLED)
シリコン基板の上に直接形成する超小型・高精細な有機ELディスプレイ。ハイエンドXRヘッドセットで主流の表示方式で、Apple Vision ProやSamsung Galaxy XRも採用。
パススルー
ヘッドセット搭載カメラの映像を介して、装着したまま現実の周囲環境を見られる機能。
空間コンピューティング(Spatial Computing)
現実空間にデジタル情報やアプリを重ね、視線・手の動きなど直感的な操作で扱う次世代のコンピューティング形態。Apple Vision Proが提唱し、Pico OS 6・Android XRも同じ方向性を志向している。
【参考リンク】
Pico公式サイト(グローバル)(外部)
Pico製品ラインナップや最新情報を掲載する公式サイト。
PICO Developer「Project Swan & PICO OS 6 よくある質問」(外部)
開発者向けに公開されているProject Swan(Pico Space Pro)とPico OS 6のFAQページ。
Nweon「PICO官宣:将于9月2日发布全新头显PICO Space Pro」(外部)
Pico Space Proの名称と発表日を最初に報じた中国メディアの記事。
Apple Vision Pro公式ページ(外部)
比較対象となるApple Vision Proの公式製品ページ。
Samsung Galaxy XR公式ページ(外部)
1,799ドルでVision Pro対抗を打ち出したSamsung Galaxy XRの公式製品ページ。
【参考記事】
Pico Reportedly Releasing Vision Pro Competitor in 2026 with Self-developed Chip — Road to VR(外部)
Vision ProとのPPI比較、Picoの地域展開実績・価格戦略の傾向について参照。
Samsung Galaxy XR Offers Comparable Vision Pro Specs & Features at Half the Price — Road to VR(外部)
Galaxy XRの価格とVision Pro比の市場ポジショニングについて参照。
Meta Teased Headset News for Connect. The Roadmap Says Do Not Expect a Quest 4. — VR.org(外部)
Meta次世代ヘッドセット(Phoenix/Griffin)の延期状況とタイムラインについて参照。
Pico Reportedly Releasing Vision Pro Competitor in 2026 with Self-developed Chip — VRSUN(外部)
自社開発チップの開発開始時期(2022年)と量産段階の情報について参照。
ByteDance Explained: How a Beijing Startup Built a $300B Empire — digitalinasia.com(外部)
ByteDanceの2025年第2四半期売上高とMeta比較のデータについて参照。

















