スマートシティの競争は、AIやセンサーをどれだけ導入したかだけでは測れません。BCGの初の都市指数でロンドンが首位となった背景から、BCGが採用した住民の暮らしの変化を重視する評価軸と、日本の都市政策への示唆を読み解きます。
Boston Consulting Group(BCG)は2026年7月27日、39カ国61都市を対象とした初の「Intelligent Cities Index 2026」を発表した。
総合順位はロンドン、ドバイ、ニューヨーク市、ワシントンD.C.、アムステルダムの順。成果、戦略、導入、業務の進め方、実現基盤の5領域では異なる都市が首位となり、報告書はAI活用だけでなく、人材、資金、ガバナンスを組み合わせる必要性を指摘している。
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London Tops BCG’s First Intelligent Cities Index
【編集部解説】
今回のランキングで重要なのは、ロンドンが首位になったことだけではありません。BCGの評価体系が、通信網やセンサーの整備量だけでなく、技術が住民の生活にどのような成果をもたらしたかを独立した評価領域として扱っている点です。
Intelligent Cities Indexは、「成果」「戦略」「導入」「業務の進め方」「実現基盤」の5領域で構成されています。総合点に占める比重は、成果、導入、実現基盤が各25%、業務の進め方が15%、戦略が10%です。成果には生活の質、経済的機会、社会関係資本、行政との関わりなどが含まれます。
ロンドンは総合85点で首位となり、特に住民への成果の領域で1位でした。BCGは、ロンドンが生活の質と経済的機会に関する成果で高く評価されたことが、総合首位につながったと説明しています。
この構成から読み取れるのは、導入数だけでは総合評価は決まらず、成果や基盤、行政運営も同時に評価されるということです。アプリやAIサービスを増やすだけでなく、サービスが実際に使われ、住民の利便性や経済活動、行政との接点を改善したかまで問われます。
BCGの分析では、AIを中核的な都市サービスへ組み込んでいる都市ほど、成果が高い傾向が示されました。一方、AIのユースケースが比較的少なくても住民成果が高い都市もあり、AI導入と成果の関係は単純な比例ではないとされています。
ここには、都市行政が注意すべき点があります。AIの導入件数は予算執行や事業の進捗として示しやすい一方、「住民の待ち時間がどれだけ減ったか」「必要な行政サービスへ到達しやすくなったか」「生活の質に差が生まれたか」は、継続的な測定が必要です。導入件数を成果とみなす設計では、利用されないアプリや特定の住民だけが使えるサービスが増えても、スマートシティが進展したように見えてしまいます。
成果を中心に評価する仕組みは、住民にとっては行政サービスの改善を確認しやすくする一方、自治体や技術提供企業には、導入後の利用率や満足度、社会的効果まで示す責任を求めることになります。技術を導入する側にとっては評価が厳しくなりますが、都市政策と住民の便益を結び付けるには必要な視点です。
今回の対象には東京と大阪も含まれ、東京は総合63点で35位、大阪は52点で56位でした。両都市はいずれも、新興段階を示す「Emerging」に分類されています。
ただし、この順位を日本の都市政策全体の成否として受け取るのは適切ではありません。調査対象はGDPとインテリジェントシティとしての関連性を基準に選ばれた39カ国61都市であり、評価結果はBCGが設定した5領域、14項目、35指標と配点に基づいています。都市の文化、住宅事情、治安、医療などを網羅的に比較した一般的な「住みやすさランキング」ではありません。
一方、日本政府もスマートシティを、ICTや官民データを活用して人々へより良いサービスと生活の質を提供する都市・地域と定義しています。少なくとも理念上は、BCGが重視する「技術だけでなく住民への成果も見る」という方向と重なっています。
今後、日本の都市に求められるのは、都市OSやAI、IoTの整備実績を並べることだけではありません。導入したサービスが誰に利用され、どの課題をどの程度改善したのかを、住民に分かる形で示すことです。BCGの指数は、「何を導入したか」だけでなく、「暮らしがどう変わったか」も同じく重視しています。
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【編集部後記】
ニューヨークではなくロンドンが首位となったことは、少し意外に感じました。GDPなどの経済指標では米国の都市が優位に見えますが、AIやデジタルサービスが市民一人ひとりの生活基盤として行き渡るかどうかは、国家や自治体の政策と実行力に大きく左右されます。ロンドンでは何が住民の成果につながり、日本の都市とはどのような違いがあるのか。順位だけで判断せず、その背景を継続して観察していきたいです。
【用語解説】
インテリジェントシティ(Intelligent City)
AIやデジタル技術を都市サービスや行政運営に組み込み、住民や企業への成果につなげる都市。BCGの指標では、成果、戦略、導入、業務の進め方、実現基盤の5領域で成熟度を評価。
住民への成果(Resident Outcomes)
技術の導入件数ではなく、生活の質、経済的機会、社会関係資本、行政への参加や接点に、どのような改善が生じたかを示す評価領域。
スマートシティ
ICTや官民データを活用し、社会・経済・環境上の課題を解決しながら、住民、企業、訪問者により良いサービスや生活の質を提供する都市または地域。
都市OS
都市内の異なるサービスやデータを連携させる共通基盤。防災、交通、医療、行政手続きなど、分野をまたぐデータ活用を支える仕組み。
都市成熟度
BCGが都市の総合的な到達度を示すために用いた分類。「Leading」「Accelerating」「Emerging」「Developing」の4段階で構成。
【参考リンク】
Boston Consulting Group(BCG)(外部)
経営戦略や公共政策などのコンサルティングを手掛ける企業。今回のIntelligent Cities Indexを作成した主体。
内閣府「スマートシティ」(外部)
日本政府によるスマートシティの定義、都市OS、施策のロードマップ、KPI設定指針などを掲載する公式ページ。
スマートシティ官民連携プラットフォーム(外部)
自治体、企業、大学、研究機関、関係府省が参加し、日本各地のスマートシティ事業を支援する官民連携基盤。
【参考記事】
BCG’s Intelligent Cities Index 2026: How AI Shapes Urban Living|BCG(外部)
61都市の評価結果と、AI導入、住民の利用意識、都市の成熟度との関係を解説したBCGの公式報告ページ。
BCG’s Intelligent Cities Index 2026|BCG報告書PDF(外部)
全61都市の順位、評価領域、配点、成熟度、東京と大阪を含む都市別結果を掲載した報告書本体。
スマートシティ|内閣府(外部)
日本政府によるスマートシティの定義と構成要素を紹介。住民へのサービスと生活の質を重視する国内政策の確認資料。












