マイナビ転職の生成AI調査、転職者の活用率46.7% 年収1000万円以上では90.7%に

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年収1000万円以上の転職者は、90.7%が生成AIを使っています。ところが履歴書やエントリーシートへの活用を肯定する人は、37.0%まで落ち込みます。仕事では使い、自分を語る書類では手を止める。この線を引いているのは、誰なのでしょうか。


株式会社マイナビが運営する『マイナビ転職』は2026年7月30日、「転職者の生成AI活用に関する実態調査」を発表した。調査は2026年4月7日から10日にWEBで実施し、直近1年以内に転職した正社員700名から回答を得た。生成AIを活用しているのは46.7%で、20代53.7%、30代61.7%、40代・50代は約3割、年収1000万円以上(43名)は90.7%であった。

利用経験者389名では、メリットは「発想の幅が広がった」62.2%、「精神的なゆとりの向上」62.0%、「業務効率の向上」60.4%が上位となった。「業務で分からないことはまず生成AIに相談する」ことは47.3%がポジティブと回答。「履歴書やエントリーシートの作成」への活用は37.0%、「新人研修のレポート作成」は38.9%であった。

From: 文献リンクマイナビ転職「転職者の生成AI活用に関する実態調査」を発表

【編集部解説】

この調査が発表されたのは2026年7月30日。その6日前、総務省が公表した2026年版の情報通信白書が、日本社会にひとつの数字を突きつけたばかりでした。

生成AIを使ったことのある個人は2025年度時点で58.8%。前回2024年度調査の26.7%から大きく伸びています。ただし、この2つの数字は条件が同じではありません。2025年度調査から15〜19歳が対象に加わっており、20歳以上に限れば52.2%です。それでも米国とドイツはともに75.6%、中国は93.6%。国内15〜69歳を対象とした調査で、ようやく半数を超えた段階といえます。

そこへ届いたのが、転職市場という切り口からの46.7%という数字でした。国全体より低く見えますが、比較には注意が要ります。

白書の選択肢は「使っている(過去使ったことがある)」で、一度でも触れた人を含みます。マイナビが聞いているのは「活用しているか」。前者が接触の裾野を測るのに対し、後者は現在活用している層に絞られます。母集団も、白書が15〜69歳の一般層であるのに対し、マイナビは直近1年以内に転職した正社員700名。しかも各年代175名で固定した割付調査であり、実際の転職者人口の年代構成には合わせていません。数値の単純比較には向きません。

年収1000万円以上で90.7%——この相関をどう読むか

最も目を引くのは年収との関係でしょう。ただしこの区分の回答者は43名で、一般化には慎重さが要ります。そのうえで、この数字を「AIを使えば年収が上がる」と読むのは早計です。

今回の調査は同一時点の横断調査であり、因果関係を測定していません。裁量権の大きさや導入予算の有無といった要因も測られていない。因果はむしろ逆、あるいは双方向という可能性も残ります。

とはいえ、この調査には見過ごせない続きがあります。マイナビの調査結果全文によれば、転職活動で生成AIスキルをアピールした人の割合は、年収1000万円以上で81.4%、管理職で66.4%、大手企業で59.2%。いずれも多数派です。

つまり生成AIは、少なくとも求職者の側では「転職活動でアピールする価値のある能力」として扱われ始めています。ただしこれは求職者のアピール行動を測った数字であり、企業がそれをどう評価したかまでは分かりません。実質的な評価軸として機能しているかどうかは、採用側のデータを待つ必要があります。

「効率」と並んだ「精神的なゆとり」

生成AIを現在または過去に利用した389名に絞った設問で、メリットの上位3つは発想の幅62.2%、精神的なゆとり62.0%、業務効率60.4%。わずか1.8ポイントの中に並んだ点が重要です。

生成AIの導入効果は、これまで生産性の文脈で語られることが多くありました。ところが現場が受け取っている価値は、そこだけではないようです。自由回答には「生身の人間には相談できない悩みを話せる」という50代回答者の声も掲載されています。1件の回答例ではありますが、数値には表れにくい使われ方を示しています。

ここで白書のもう一つのデータが効いてきます。「生成AIはどのような存在か」という設問で、日本の1位は「機械・道具」38.3%、2位は「辞書・百科事典」28.9%。一方、中国では「友人」が39.9%、米国でも25.3%が同じ回答を選んでいます。生成AIを「精神的な支えとして感じる」割合も、日本31.4%に対し中国62.8%、米国45.2%、ドイツ40.9%と差が開きました。

日本では生成AIを情報源として位置づける傾向が強い。それでも転職者の自由回答には相談相手としての使い方が現れています。認識と実際の使い方の間にズレが生じている可能性はありますが、両者は別の調査・別の母集団であり、同一人物の中での乖離を確かめたものではありません。

37.0%が示す、越えられていない一線

一方で、履歴書やエントリーシートへの活用を肯定するのは37.0%。懸念の上位は「個性やらしさが消える」20.6%、「後ろめたさや罪悪感」16.3%でした。

上位に来たのは、技術的な不安よりも、自己表現や倫理面に関する懸念です。ただし「事実と異なる内容への不安」も15.3%あり、技術面の懸念が消えているわけではありません。効率化してよい領域と、自分の言葉で語るべき領域を、人はある程度切り分けているようです。

この線引きは長くは持たないかもしれません。2026年4月に発表されたナイルの調査では、就職活動の情報収集で生成AIを使うと答えた学生は76.2%。調査対象は2026〜2028年卒の419人です。

エントリーシートや面接など、選考対策にAIを使う学生が労働市場に入ってきています。転職者のうち、履歴書やESへの活用を肯定したのは37.0%。一方、学生調査では生成AI利用者319人の48.0%が選考対策に利用しており、利用場面として最多でした。ただし、前者はAI活用への評価、後者は利用者の実際の利用場面を尋ねたもので、設問も母数も異なります。単純比較はできませんが、両者の間にある温度差がどう解消されるかは、まだ見えません。

転職市場に生まれた新しいミスマッチ軸

調査結果全文には、リリースでは触れられていない項目もありました。職場で生成AIの活用を推奨されているのは38.3%。ただし職種で開きがあり、人事・労務71.4%、ITエンジニア60.0%、経営企画・広報・マーケティング系58.0%と、いずれも多数派を占めています。ただし職種別の回答者はそれぞれ数十名規模で、参考値として読む必要があります。

そして転職先を選ぶ際、応募先企業の生成AIへの理解や活用レベルがポジティブに影響したと答えたのは全体で35.1%。20代45.2%、30代47.4%に対し、40代29.7%、50代18.3%と、20代・30代で高くなります。

これは求人票のフォーマットが追いついていない領域です。「AIをどう使わせてもらえるか」が、転職先を選ぶ判断材料の一つとして加わりつつある。面接で質問すること自体は可能ですが、AI活用環境は現行の法令で定められた求人時の共通明示事項に含まれておらず、企業間で比較しにくいのが現状です。これから顕在化する摩擦だと編集部はみています。

企業側のデータも見ておきます。白書の企業調査は、従業員10人以上で2025年までにデジタル化に着手した企業の管理職以上が対象です。その範囲では、生成AIの活用方針を定めている割合は68.9%で前年の49.7%から上昇。何らかの業務で利用している割合は日本86.4%で、前年の55.2%から大きく伸びました。米国90.9%、ドイツ91.6%、中国98.1%との差は縮まっています。ただし業務変革について「組織的な取組はない」と答えた割合は日本27.0%、米国1.4%と、依然として大きな開きが残ります。

この数字の賞味期限

最後に、押さえておくべき前提があります。この調査が実施されたのは2026年4月7日から10日。調査開始から発表まで114日、約4ヶ月弱が経過しています。

生成AI領域において、この期間は決して短くありません。同条件の再調査がない以上断定はできませんが、46.7%という数字は、あくまで2026年4月時点のスナップショットとして読むべきでしょう。

それでも、この調査が捉えた構造——スキルが語る対象になりつつあること、効率と情緒の両面で価値が生まれていること、そして「自分を語る場面」に残された抵抗感——は、数字より長く残るのではないか。編集部はそう考えています。

技術の普及率は数ヶ月で塗り替わりますが、人がテクノロジーとの距離をどう測るかという問いは、もう少しゆっくり進むからです。

【関連記事】

【解説】令和8年版情報通信白書|生成AI利用経験58.8%、それでも「組織的取組なし」27%
本記事が引用した白書データの詳報。「精神的な支えとして感じる」日本31.4%や、企業の業務利用86.4%を設問単位で解説している。

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AI利用者が「最終決定」だけAI利用意向を50%未満に落とす構図を分析。履歴書37.0%と同じ、自分で決める領域の線引きを扱う。

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ICT総研調査の続報。母数が異なる数値を並べる危うさを指摘した回で、本記事の46.7%と58.8%の読み分けに通じる。

【編集部後記】

調査概要の欄に、正式名称が記されています。「転職者の生成AI活用と不安に関する実態調査」。ところがリリースの見出しから、「不安」の二文字は消えています。

単なる表記ゆれかもしれません。ただ、履歴書への活用を肯定したのが37.0%にとどまり、2割が「らしさが消える」と答えた調査です。不安は確かにそこにありました。見出しから落ちた言葉のほうが、この調査が測ったものに近いのではないでしょうか。


【用語解説】

生成AI(ジェネレーティブAI)
テキストや画像、音声などを新たに生成するAIの総称である。ChatGPTに代表される対話型サービスが広く使われている。本調査で現在活用していると答えた327名では、用途はメール・チャット文面の作成48.6%、資料作成38.2%、情報収集・要約37.0%が上位だった。

ハルシネーション
生成AIが事実と異なる内容を、もっともらしい形で出力する現象を指す。本調査で挙がった「誤りや曖昧な表現が含まれ、最終的な確認に手間がかかる」という弊害は、この特性が一因となり得るものである。

エントリーシート(ES)
主に新卒採用の選考で企業が独自に用意する応募書類である。志望動機や自己PRを記述式で問う形式が一般的で、本人の思考や個性が評価対象となるため、生成AI活用への抵抗感が生じやすい領域とされる。中途採用で用いられる場合もある。

ガバナンス(AIガバナンス)
組織がAIを利用する際の方針・体制・統制の枠組みを指す。何を推奨し、どこにリスクがあるかを企業が明示する取り組みが該当し、本調査の総評でも整備の重要性が指摘されている。

情報通信白書
総務省が毎年公表する、日本の情報通信分野の現状と政策動向をまとめた報告書である。1973年の第1回以来、2026年版で54回目にあたる。2026年版は「AIの進展がもたらす多面的影響〜人間とAIが健全に協働するデジタル社会の実現に向けて〜」を特集テーマに掲げている。

【参考リンク】

マイナビ転職(外部)
株式会社マイナビが運営する総合転職情報サイト。全国の正社員求人と、履歴書の書き方や面接対策などの転職ノウハウを提供している。

マイナビ転職 キャリアトレンド研究所(外部)
働く人の意識と行動を独自調査で分析する調査コンテンツ。本調査の結果全文と全11点の図版がここで公開されている。

株式会社マイナビ(外部)
就職・転職・進学情報から出版やニュースメディアまで展開する総合サービス企業。各種ニュースリリースを自社サイトで公開する。

総務省 令和8年版情報通信白書の公表(報道資料)(外部)
令和8年版情報通信白書の公表を伝える報道資料。特集テーマや構成、公開形式とスケジュールが記載されている。

総務省 令和8年版 情報通信白書 データ集(外部)
2026年版白書の図表の元データと出典をまとめたページ。国内外の生成AI利用率や企業の導入状況の根拠を確認できる。

マイナビキャリアリサーチLab(外部)
マイナビが運営する雇用・労働・キャリアの調査研究メディア。転職市場の行動特性調査など分析レポートを継続公開する。

【参考記事】

日本の生成AI利用まだ6割 仕事中心、7割超の米国は「友達」使い(外部)
2026年版情報通信白書の報道。生成AI利用経験は日本58.8%、米独75.6%、中国93.6%。日本は「ほぼ毎日」が29.9%にとどまる。

15〜19歳のAI利用経験9割超 企業利用86.4%でも3割弱は「組織的な取り組みなし」(外部)
2026年版白書の調査条件を整理した記事。15〜19歳が新たに対象へ加わり、20歳以上に限った利用率は52.2%となる点を示す。

生成AI「使っている」86%でも「活かせていない」27%——2026年 情報通信白書で見えた日本のAI活用のいま(外部)
白書の企業調査を解説。業務利用は日本86.4%で前年55.2%から上昇。一方で組織的な取組がない企業が27.0%残る。

【解説】令和8年版情報通信白書|生成AI利用経験58.8%、それでも「組織的取組なし」27%
同白書を設問単位まで掘り下げた解説。「精神的な支えとして感じる」は日本31.4%、中国62.8%、米国45.2%、ドイツ40.9%。

【就活生のAI利用はもう常識!?】就職活動での生成AI活用実態調査(外部)
ナイル株式会社の調査。学生419人のうち76.2%が就活の情報収集で利用。利用者319人では選考対策48.0%が最多だった。

総務省|令和7年版 情報通信白書|個人におけるAI利用の現状(外部)
前年版白書。2024年度の生成AI利用経験率は日本26.7%、米国68.8%、ドイツ59.2%、中国81.2%だった。

中途採用も“AI前提”の時代へ。転職者の6割超がAI活用、企業のAI環境も選択基準に(外部)
転職者のAI活用を扱う別調査の分析。面接練習58.88%、企業リサーチ50.47%。母数はAI活用者107名である。

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山本 達也
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。