データセンターと電気代が争点に|米中間選挙で問われたAIの電力

電気料金の請求書と、AIのデータセンターが結びついた選挙でした。11月3日の米中間選挙では、データセンターの建設と電気料金の上昇が、知事選から連邦議会選、町の住民投票まで、各地で争点になりました。AP通信によると、米国の連邦議会では、民主党が上院と下院の両方で多数を確保しました。ただ、大統領は共和党のトランプ氏のままで、拒否権も残ります。AIの電力をめぐる政治は、何を動かし、何を動かさないのでしょうか。

最新情報(随時更新)

11月6日 本記事を公開しました。未確定の選挙区の結果と、11月9日に予定される許認可改革法案の上院での採決を受けて更新します。


目次▼選挙の結果連邦議会 / 州と地方▼データセンターが争点になった理由上がり続ける電気料金 / 候補者が掲げたこと / もう一方の言い分▼連邦議会が変わって、動くこと・動かないこと動くもの / 動かないもの / 主役になる州▼COP31への影響交渉の席に、米国政府はいない / 議員と州が、アンタルヤへ / AI誓約とつながる論点▼日本の現在地増える電力需要 / 費用の分け方
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2026年11月3日の米中間選挙で、AP通信によると、米連邦議会の上院と下院の両方で民主党が多数を確保した。上院はCBSニュースによると5日の時点で少なくとも54議席で、アラスカ州とミシシッピ州が未確定である。

テキサス州知事選では、データセンター新設の一時停止を掲げた民主党のヒノホサ氏が現職のアボット氏を破った。ミシガン州やペンシルベニア州の下院選、ジョージア州の公益事業委員会選でも、データセンターと電気料金が争点になった。各地の町や市では、データセンターの一時停止や禁止が決まった。

新しい連邦議会は2027年1月に始まる。予算や調査で政権に圧力をかけられる一方、大統領の拒否権と上院の60票の壁は残り、2025年に廃止が決まった再生可能エネルギーの税額控除もすぐには戻らない。

11月9日に開幕するCOP31では、米国政府は交渉に加わらず、議員団19人と州・自治体の連合が現地に入る。

【編集部解説】

選挙の結果

連邦議会

米国の連邦議会では、AP通信によると、民主党が上院と下院の両方で多数を確保しました。CBSニュースによると、民主党は5日の時点で上院の少なくとも54議席を得ています。AP通信は5日の時点で、上院のアラスカ州とミシシッピ州、下院の35の選挙区で、まだ勝者を確定していません。

新しい連邦議会は2027年1月に始まります。大統領は共和党のトランプ氏のままなので、議会の多数派と大統領の党が分かれる状態になります。上院の民主党トップのシューマー氏は4日、大統領が民意や法に背くなら、調査し、裁判に訴え、「立法の有刺鉄線」で縛ると述べました。

州と地方

テキサス州知事選では、民主党のジーナ・ヒノホサ氏が、現職で共和党のグレッグ・アボット氏を破りました。開票率99%の時点で、得票率はヒノホサ氏53%、アボット氏46%です。アボット氏は敗北を認めました。

ジョージア州では、電力会社の料金や発電所の計画を承認する公益事業委員会の選挙で、民主党が改選の2議席を取りました。環境メディアのGristによると、民主党が委員会の多数を握るのは約30年ぶりです。

住民投票では、ミシガン州で、電力会社による政治資金の支出を制限する案が可決されました。コロラド州では、「天然ガスを使う権利」を州の憲法に書き込む案が、可決に必要な55%に届きませんでした。Gristによると、各地の数十の町や市で、データセンターの一時停止や禁止が決まりました。

データセンターが争点になった理由

上がり続ける電気料金

ロイター通信が伝えた米エネルギー情報局のデータによると、米国の家庭向けの電気料金は、2024年から10%以上上がりました。データセンターの新設が集まるオハイオ州、ミシガン州、ペンシルベニア州では上がり方がさらに大きく、オハイオ州の家庭の電気代は、この2年で20%以上上がっています。

電力会社は、データセンターの電力需要に応えるため、発電所と送電網に大きな投資を計画しています。その費用は、電気料金を通じて家庭にも回ってきます。ただし、データセンターだけが票を決めたわけではありません。AP通信の有権者調査では、議会選の投票で「決定的」とした争点に、政治の腐敗と生活費を挙げた人がそれぞれおよそ半数いて、移民の取り締まり、イラン戦争、AIのデータセンターよりも多くありました。データセンターは、電気代を通じて生活費の争点と重なっている、と私たちは見ています。

ジョージア州では、州の電力会社が2025年、データセンターの需要を見込んで10ギガワットの電源を加える計画を公益事業委員会に申請しました。

候補者が掲げたこと

テキサス州のヒノホサ氏は選挙戦で、大量に電気を使う事業者が、自らの電力と送電網の費用を負担するルールを州議会が定めるまで、データセンターの新設を止めると訴えました。

Gristによると、ミシガン州7区で勝った民主党のウィル・ローレンス氏は、データセンター新設の全国的な一時停止を求めていました。ペンシルベニア州8区では、民主党のペイジ・コグネッティ氏が、データセンター企業の株を持っていた共和党の現職を破りました。オハイオ州の上院選では、民主党が共和党のハステッド氏とデータセンターを結びつける看板を出し、民主党のシェロッド・ブラウン氏が勝ちました。

オハイオ州知事選では、データセンター新設の一時停止を支持した民主党のエイミー・アクトン氏が、共和党のヴィヴェク・ラマスワミ氏を破りました。

政党による違いもありました。イタリアの環境メディアRinnovabiliが伝えた調査団体データセンター・ウォッチの集計では、データセンター新設の一時停止を支持した候補は、民主党で32.4%、共和党で3.4%でした。

もう一方の言い分

データセンターの拡大を支持する側にも、はっきりした主張があります。トランプ大統領は、データセンターは雇用と税収が「莫大」だとして、「ぜひ欲しい」と述べました。政権は、AIで中国に勝つための基盤として、データセンターを発電所や送電網につなぐ支援を進めています。

ホワイトハウスは「料金負担者保護の誓約」を打ち出し、業界団体のデータセンター連合は、会員企業が「エネルギーの費用を全額払う」と表明しました。電力会社の業界団体エジソン電気協会のマローニー会長は、送電網は「政治の日程では動かない」と述べ、毎年の安定した投資が必要だと訴えています。料金の凍結は家庭の負担をあまり減らさず、長い目で見た送電網への投資を減らしかねない、という電力会社側の主張もあります。

データセンターへの対応は、党派を越えて動いていました。共和党のアボット氏は選挙前、データセンターのせいで州民の電気代が上がらないよう規制当局に指示し、来年に規制を強める法案を出すと約束しました。民主党のニューヨーク州のホークル知事も、大規模なデータセンターの新設を1年間止める命令を出しています。

連邦議会が変わって、動くこと・動かないこと

動くもの

連邦議会の多数派は、予算を決め、政府を調べる力を持ちます。Gristによると、民主党は、議会での調査や、必ず通さなければならない予算法案を使い、気候対策の予算を政府に執行させたり、削られた予算の一部を戻したりすることをねらっています。

11月9日の午後5時半(米東部時間、日本時間10日午前7時半)には、上院で、許認可の手続きを見直す超党派の法案「米国の手頃さと雇用のための超党派法(BAAJA)」の手続きの採決が予定されています。ロールコールによると、法案は国家環境政策法などを大きく改め、裁判で争える範囲を狭めます。民主党のハインリック上院議員が入れた条項は、州の規制当局に連邦の基準を採り入れさせ、AIの大手事業者にデータセンターの電力の費用を自ら負担させるものです。石油業界と再生可能エネルギー業界の団体がともに支持する一方、環境団体は裁判の制限に反対しています。採決には60票が必要で、下院民主党には、新しい議会が始まってから見直すべきだという声もあります。

動かないもの

大統領は、議会が通した法案に拒否権を使えます。トランプ大統領は選挙の夜、民主党の法案には拒否権を使うと表明しました。上院で法案を前に進めるには、多くの場合60票が必要で、民主党の議席はそこに届きません。

再生可能エネルギーの税額控除は、2025年7月に成立した税制法で、すでに縮小が決まっています。風力と太陽光の発電所は、2026年7月4日までに建設を始めるか、2027年末までに運転を始めなければ、控除を受けられません。民主党が控除の一部を戻そうとしても、大統領の拒否権に阻まれる可能性があります。

発電所や自動車の排出規制の撤廃は、政権が行政の判断で進めてきました。議会の多数が変わっても、それだけで元に戻るわけではありません。

主役になる州

連邦で動きにくいぶん、州の役割が大きくなります。Gristによると、ウィスコンシン州、アリゾナ州、ペンシルベニア州では、民主党が知事と州議会の両方を握りました。ペンシルベニア州の下院の民主党は、地域の太陽光や蓄電池を支える法案と、自治体が再生可能エネルギーを禁じることを防ぐ法案を通す方針です。ジョージア州の公益事業委員会の多数が変わったことは、電力会社の発電所計画の審査にも影響しうるとGristは伝えています。

AIのルールでも、データセンターは州の手に残ります。トランプ大統領が2025年12月に署名した大統領令は、州のAI規制を連邦の法律で上書きする案を議会に示すよう求めました。ただし、その案でも、AIの計算基盤とデータセンターに関する州法は、一般的な許認可の改革を除いて、上書きの対象にしないとしています。州のAI規制を連邦が上書きするかどうかをめぐる新しい議会の動きは、「【解説】米中間選挙で民主党が両院奪還、AI規制の州法上書きは新議会の課題に」で解説しています。

COP31への影響

交渉の席に、米国政府はいない

米国はパリ協定から離脱しており、気候変動枠組条約からも2027年2月に離脱する予定です。11月9日に開幕するCOP31の交渉に、米国政府は加わりません。新しい議会が始まるのは2027年1月なので、COP31の会期中に米国政府の立場が変わることはありません。

議員と州が、アンタルヤへ

代わりに、連邦議会の議員19人の代表団がアンタルヤに向かいます。代表団は、党派に属さない団体「SEEC研究所」が率います。州や自治体の首長も、連合「アメリカ・イズ・オール・イン」として参加します。

代表団を発表したショーン・キャステン下院議員は、「米国は意思を示した」と述べ、選挙の結果は理解をもって受け止められるだろうと話しました。ただし、COP31の時点では民主党はまだ議会の多数ではないことも認め、「慎重に楽観している」と述べています。気候の専門メディアのクライメート・ホーム・ニュースは、選挙の結果は会議の空気を和らげても、交渉そのものを易しくはしない、と見ています。

AI誓約とつながる論点

COP31では、11月16日に、議長国トルコが呼びかける「アンタルヤAI誓約」が正式に披露されます。誓約は、データセンターを電力網につなぐときの費用を適切に分けることを、柱のひとつに挙げています。米国の選挙で問われたのも、データセンターの電力と送電網の費用を誰が払うのか、という同じ問いでした。誓約の中身は「アンタルヤAI誓約とは|COP31が向き合うAIの電力、任意の約束に書かれたこと」で整理しています。

日本の現在地

増える電力需要

日本でも、データセンターの電力需要は増える見通しです。電力広域的運営推進機関の2026年1月の見通しでは、データセンターと半導体工場の新設や増設による電力需要の増加分は、2035年度に568億キロワット時で、そのうちデータセンターが494億キロワット時を占めます。

費用の分け方

米国の選挙では、データセンターの電力と送電網の費用を、事業者と家庭のどちらがどれだけ負担するのかが、争点になりました。日本では、データセンターの省エネの基準や、電力と通信を一体で整える「ワット・ビット連携」の議論が進んでいます。一方で、増える費用の分け方は、まだ広く知られた論点にはなっていない、と私たちは見ています。

【編集部後記】

AIを使うたびに電気が使われていることは、これまで技術や環境の話として語られてきました。今回の米国の選挙では、それが電気代の請求書という、もっと身近な形で、票を争う問いになりました。データセンターの新設を止めるべきか、それとも事業者に費用を払わせたうえで進めるべきか。米国の各党の答えは分かれ、民主党の候補でも、一時停止を支持したのは3人に1人ほどでした。日本で同じ問いが表に出てきたとき、私たちは何を手がかりに考えればよいのでしょうか。11月9日からのCOP31と、16日のアンタルヤAI誓約の披露は、その手がかりのひとつになるかもしれません。

  1. Data Center Coalition|DCC Statement on Ratepayer Protection Pledge 2.0(外部)
    業界団体による、政権の「料金負担者保護の誓約」への声明(英語)。
  2. Gina Hinojosa for Texas|Hinojosa Calls for Data Center Moratorium(外部)
    ヒノホサ氏の陣営による、データセンター新設の一時停止の主張(英語)。
  3. 電力広域的運営推進機関|2026年度 全国及び供給区域ごとの需要想定(PDF)(外部)
    データセンターと半導体工場による電力需要の増加の見通し。
  4. The White House|Executive Order 14365: Ensuring a National Policy Framework for Artificial Intelligence(PDF)(外部)
    州のAI規制の上書きを求める大統領令。データセンターに関する州法は対象外とする第8条(英語)。
  5. Senate Cloakroom|Vote scheduled: 5:30pm, Monday, November 9th(X)(外部)
    上院の議事進行の告知。許認可改革法案の手続きの採決の日時(英語)。

【用語解説】

中間選挙
米国で、大統領選挙の2年後に行われる連邦議会などの選挙。下院の全議席と、上院の約3分の1の議席が改選される。多くの州で知事選も同時に行われる。

議事妨害(フィリバスター)
米上院で、少数派が討論を続けて採決を引き延ばす手法。打ち切るには、原則として100人中60人の賛成が必要になる。

公益事業委員会
州ごとに、電力会社などの料金や設備投資の計画を審査し、承認する機関。ジョージア州などでは委員を選挙で選ぶ。

レームダック会期
選挙のあと、新しい議会が始まるまでの間に開かれる議会の会期。選挙で退くことが決まった議員も採決に加わる。

許認可改革
発電所や送電線、パイプラインなどを建てるときの、環境の審査や許可の手続きを早めるための法律の見直し。

アメリカ・イズ・オール・イン
米国の州、市、企業、大学などが、パリ協定の目標に向けた取り組みを続けることを掲げる連合。

データセンター
大量のサーバーを置き、データの処理や保存を行う施設。AIの学習や利用で電力の使用が増えている。

【参考記事】

  1. What a historic 'blue wave' midterm means for climate action — Grist(外部)
    選挙結果と、データセンター、電気料金、住民投票の争点(英語)。
  2. Democrats win US House and Senate, taking full control of Congress — AP(外部)
    上下両院の結果、AP通信の有権者調査、知事選の結果(英語)。
  3. Races AP hasn't called yet in contests for Senate and governor — AP(外部)
    AP通信がまだ勝者を確定していない選挙(英語)。
  4. 2026 Senate midterm election results — CBS News(外部)
    上院の多数の予測と、未確定の州(英語)。
  5. Texas governor election results: Greg Abbott vs. Gina Hinojosa — KPRC 2(Click2Houston)(外部)
    テキサス州知事選の開票結果(英語)。
  6. Power bills and data centers cast rare spotlight on utilities in US midterms — Reuters(Honolulu Star-Advertiser掲載)(外部)
    電気料金の上昇と、公益事業委員会の選挙、電力業界の主張(英語)。
  7. 2026 midterm elections: What changes for U.S. energy — Rinnovabili(外部)
    許認可改革法案と、データセンターをめぐる各党の候補の立場(英語)。
  8. Here's all the ways that data center controversies have transformed the midterm elections — AP(Daily Courier掲載)(外部)
    各州の対応と、トランプ大統領の発言(英語)。
  9. Permitting bill writers seek industry aid ahead of Senate vote — Roll Call(外部)
    許認可改革法案の中身と、11月9日の採決の予定(英語)。
  10. One Big Beautiful Bill Act Brings Big Changes to Green Energy Tax Credits — Kirkland & Ellis(外部)
    2025年の税制法による、再生可能エネルギーの税額控除の縮小(英語)。
  11. 'Cautious optimism' for renewed US engagement on climate as delegation heads to COP31 — Euronews(外部)
    COP31に向かう米議員団と、キャステン議員の発言(英語)。
  12. COP31 Briefing: What to expect from the Antalya climate summit? — Climate Home News(外部)
    COP31の見通しと、米中間選挙の受け止め(英語)。
  13. US set to exit UN climate convention in February 2027 — Climate Home News(外部)
    米国の気候変動枠組条約からの離脱の時期(英語)。

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