環境問題の2026年|環境危機時計とCOPから読む、危機感はどこにあるのか

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秋は、環境問題の大きな節目が続く季節です。9月には、世界の有識者の危機感を時刻で表す「環境危機時計」が35回目の発表を迎え、地球の状態を9つの項目で点検する年次報告も公表されました。10月には生物多様性条約のCOP17と、地球環境の問題の解決に貢献した人を称えるブループラネット賞の授賞式、11月には気候変動のCOP31が控えています。気候変動、生物多様性の損失、化学物質による汚染。2026年、地球ではどのような環境問題が起きていて、人々はそれをどう受け止めているのでしょうか。主な問題と、35年続く環境危機時計の仕組みから見ていきます。


目次▼2026年の秋に続く、環境問題の節目▼いま地球で起きている環境問題プラネタリー・バウンダリー / 気候変動 / 生物多様性の損失 / 化学物質による汚染 / 土地・水・窒素とリン・海 / オゾン層▼環境危機時計――人々の危機感を時刻で表すどのような時計か / 時刻の決め方 / 2026年は9時39分 / 35年の記録 / 読むときの注意 / 生活者の時計は7時3分▼国際社会の取り組み――交渉と危機のあいだでCOP30とサンタマルタ / 米国の離脱とIPCC / エネルギー危機と石炭火力 / COP17とCOP31▼ブループラネット賞――地球環境に貢献した人を称えるどのような賞か / 歴代の受賞者 / 2026年の受賞者
編集部後記 / 参考リンク / 用語解説 / 参考記事 / 関連記事


2026年9月8日、旭硝子財団は第35回「環境危機時計」を発表し、世界の時刻は前年から6分進んで9時39分となった。9月下旬には、ポツダム気候影響研究所などによる「Planetary Health Check 2026」が、9つのプラネタリー・バウンダリーのうち7つが超過し、すべてが悪化傾向にあると評価した。10月12日からはエチオピアのアディスアベバでIPCC第65回総会が開かれ、5回続けて合意できていない第7次評価報告書の日程が焦点となっている。10月19日からはアルメニアのエレバンで生物多様性条約COP17が、11月9日からはトルコのアンタルヤで気候変動枠組条約COP31が開かれる。その間の10月27日には、ブループラネット賞の受賞者記者会見が東京で予定されている。

【編集部解説】

2026年の秋に続く、環境問題の節目

2026年の秋には、環境問題に関わる発表や国際会議が続きます。主なものは次のとおりです。

日付出来事
9月8日旭硝子財団「環境危機時計」第35回の発表
9月20〜27日Climate Week NYC(国連総会と同時期)
9月下旬Planetary Health Check 2026(プラネタリー・バウンダリーの年次評価)
10月5〜8日Pre-COP(COP31に向けた準備会合、ツバル・フィジー)
10月12〜16日IPCC第65回総会(エチオピア・アディスアベバ)
10月19〜30日生物多様性条約COP17(アルメニア・エレバン)
10月27〜31日ブループラネット賞の受賞者記者会見、表彰式典、記念講演会(東京・京都)
11月9〜20日気候変動枠組条約COP31(トルコ・アンタルヤ)

科学の評価、人々の意識の調査、国どうしの交渉、そして賞。種類の違う出来事が、同じ数か月のうちに重なっています。以下では、まず地球で起きている環境問題を見渡し、次に環境危機時計、国際社会の動き、ブループラネット賞の順に紹介します。

いま地球で起きている環境問題

地球の健康診断「プラネタリー・バウンダリー」

プラネタリー・バウンダリーは、人類が安全に暮らせる地球の範囲を、9つの項目で示す考え方です。2009年に、スウェーデンの研究者ヨハン・ロックストローム氏らが提唱しました。項目ごとに「これを超えると危険が高まる」という目安の値が置かれています。

ドイツのポツダム気候影響研究所などは2024年から、この9項目を毎年点検する「Planetary Health Check」を公表しています。いわば地球の健康診断です。2025年版では海洋酸性化が新たに目安を超え、9つのうち7つが超過と評価されました。2026年9月の最新版も「7つが超過、すべてが悪化傾向」という評価を変えていません。

超過している7つは、気候変動、生物圏の一体性(生物多様性)、土地利用の変化、淡水の変化、窒素とリンの循環、新規化学物質、海洋酸性化です。

国連環境計画(UNEP)は、このうち気候変動、生物多様性の損失、汚染の三つを「三重の地球危機」と呼び、互いにつながった問題として扱っています。以下、この三つを中心に見ていきます。

気候変動――2024年、初めて1.5℃を超えた

気候変動は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが増え、地球の気温が上がることで起きる問題です。

世界気象機関(WMO)によると、2024年の世界の平均気温は、産業革命前(1850〜1900年の平均)より約1.55℃高く、1年を通して初めて1.5℃を上回りました。2025年も約1.43℃で、観測史上2位か3位の暑さでした。2015年から2025年までの11年間は、観測史上もっとも暑い11年にあたります。

パリ協定が目標に掲げる「1.5℃」は、数十年単位の平均を指します。その意味では、まだ1.5℃を超えたわけではありません。ただ、国連環境計画の2025年の報告書は、各国が掲げる目標をすべて達成しても、今世紀の気温上昇は2.3〜2.5℃になると見積もっています。

日本でも、2026年4月に、最高気温が40℃以上の日を指す「酷暑日」が気象庁の正式な予報用語になりました。この夏(6〜8月)の平均気温は平年より1.02℃高く、観測史上5位でした。酷暑日は延べ36地点にのぼり、2010年以降でもっとも多くなっています。

生物多様性の損失――絶滅の速さは目安の10倍以上

生物多様性とは、生き物の種類の多さと、それぞれの生き物がつながり合ってできている生態系の豊かさのことです。私たちの食べ物や水、薬の原料、花粉を運ぶ虫の働きなども、この豊かさに支えられています。

プラネタリー・バウンダリーでは「生物圏の一体性」という項目がこれにあたり、生き物が絶滅する速さは、目安とされる値の10倍を超えていると評価されています。

国際社会は2022年、2030年までの目標として「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を採択しました。陸と海のそれぞれ30%を保全する「30by30」など、23の目標が並んでいます。2026年10月のCOP17では、この枠組みの進み具合が初めて全体として点検されます。8月の準備会合で、各国はすでに、目標の達成に向けた軌道に乗っていないことを認めています。

化学物質による汚染――人がつくった物質のゆくえ

プラネタリー・バウンダリーの「新規化学物質」は、人間がつくり出し、自然界にもともとなかった物質を指します。プラスチックや農薬、有機フッ素化合物(PFAS)などです。数十万種が流通しているとされ、安全性を十分に確かめないまま環境に出ている物質の割合が問題にされています。境界の線を数値で引きにくく、評価の方法そのものに議論がある項目でもあります。

国際的な取り組みとしては、プラスチック汚染を減らすための条約づくりが2022年から続いています。ただ、2025年8月のジュネーブでの交渉は合意に至りませんでした。その後は、交渉の再開に向けて、議長のもとで非公式の協議が続いています。

土地、水、窒素とリン、そして海

ほかの四つの超過項目も、それぞれ私たちの暮らしとつながっています。

  • 土地利用の変化:森林が農地や都市に置き換わる問題です。森林は炭素をため、生き物の住みかとなり、水の循環を支えています。
  • 淡水の変化:川や地下水、土の中の水分が、自然な変動の幅から外れている問題です。
  • 窒素とリンの循環:化学肥料などに含まれる窒素やリンが川や海に流れ込み、藻の大量発生や、酸素の少ない海域を生んでいます。
  • 海洋酸性化:大気中のCO2が海に溶けて海水が酸性に傾き、貝やサンゴが殻や骨格をつくりにくくなる問題です。2025年に初めて目安を超えました。

回復に向かうオゾン層

9項目のうち、安全な範囲に残っているのは、成層圏のオゾン層と、大気中の微粒子(エアロゾル)の二つだけです。

オゾン層は、太陽からの有害な紫外線を遮る、上空の大気の層です。1980年代に南極上空で「オゾンホール」が見つかり、1987年のモントリオール議定書でフロンの生産が国際的に規制されました。その結果、オゾン層は回復に向かっています。国際協力によって地球規模の問題を巻き戻した、数少ない例として知られています。

環境危機時計――人々の危機感を時刻で表す

どのような時計か

環境危機時計は、公益財団法人旭硝子財団が1992年から毎年発表している時計です。世界の環境問題の有識者にアンケートを行い、人類が存続することへの危機感を、0時から12時までの時刻で表します。針が12時に近いほど、危機感が強いことを示します。

時刻は、次の4つの区分に分けられています。

時刻区分
0〜3時ほとんど不安はない
3〜6時少し不安
6〜9時かなり不安
9〜12時極めて不安

名前の似たものに、米国の原子力科学者会報が1947年から発表している「終末時計」があります。終末時計は、専門家の委員会が協議して針の位置を決めます。環境危機時計は、多くの有識者が答えた時刻の平均です。

時刻の決め方

アンケートは、世界各国の政府や自治体、NGO・NPO、大学・研究機関、企業、メディアなどで環境問題に関わる人々に送られます。2026年は4月から6月にかけて約4万5千人に送り、1,464件の回答が集まりました。

回答者は、次の9つの項目から、とくに重要だと考える項目を3つ選んで順位をつけ、それぞれについて危機感を時刻で答えます。

  • 気候変動
  • 生物圏保全性(生物多様性)
  • 陸域系の変化(土地利用)
  • 生物化学フロー(環境汚染)
  • 水資源
  • 人口
  • 食糧
  • ライフスタイル(消費性向)
  • 社会、経済と環境、政策、施策

前半の5項目は、プラネタリー・バウンダリーの項目とほぼ重なっています。一方で、人口、食糧、ライフスタイル、社会や経済といった、人間の社会の側の項目も含まれているのが特徴です。

答えた3つの時刻を、1位50%、2位30%、3位20%の重みで平均したものが、その人の時刻になります。全員の時刻を平均したものが、その年の世界の時刻です。

2026年は9時39分

2026年の世界の時刻は9時39分でした。前年から6分進み、2年続けて針が進みました。もっとも深刻な「極めて不安」の区分の中にあります。日本の回答者の平均は9時30分です。

地域ごとの時刻は次のとおりです。

地域時刻
西欧10時10分
北米10時9分
東欧・旧ソ連10時6分
オセアニア10時1分
アフリカ9時35分
メキシコ・中米・カリブ諸国9時33分
日本9時30分
アジア9時29分
南米9時23分
中東9時13分

前年と比べると、アフリカで52分、東欧・旧ソ連で27分と大きく針が進みました。一方で、オセアニア、北米、西欧では17〜25分戻っています。自由記述では、ロシアとウクライナ、中東の情勢など、軍事的な緊張に触れたものが多く見られました。

項目別では、もっとも多く選ばれたのが「気候変動」(選ばれた割合33%、時刻は9時45分)でした。選ばれた割合の高い上位3項目のうち、時刻がもっとも進んでいたのは「生物圏保全性(生物多様性)」の9時52分です。

35年の記録

最初の1992年の時刻は7時49分でした。1996年以降は、2000年を除いてすべて9時台が続いています。もっとも進んだのは2018年と2020年の9時47分です。2021年から2024年までは4年続けて戻り、2025年は9時33分でした。

環境危機時計が始まった1992年は、ブラジルのリオデジャネイロで地球サミットが開かれた年です。旭硝子財団は同じ年に、ブループラネット賞も始めています。35年分の、世界の有識者の危機感の記録は、科学の評価とも世論調査とも違う種類の時系列のデータです。

読むときの注意

環境危機時計が表しているのは、地球の物理的な状態そのものではありません。環境問題に関わる人々が、いまの世界をどう受け止めているかです。財団も、回答者が人類の存続に対して抱く危機感を表すものと説明しています。そのため、戦争や紛争が環境対策を後回しにさせているといった受け止めのように、気温や二酸化炭素の濃度には表れない情報が映ります。

また、2026年の結果には、財団自身が報告書に記した注意書きがあります。調査の体制を見直すなかで、中国と台湾については従来と同じ調査をしませんでした。そのため海外からの回答は前年の1,358件から994件に減り、日本からの回答は393件から470件に増えました。財団は報告書の3か所で、前年からの6分の変化には、回答者の構成が変わった影響も含まれうると説明しています。

地域ごとの時刻にも、回答者の数に差があります。たとえばアフリカは51人、東欧・旧ソ連は22人の回答の平均です。

生活者の時計は7時3分

旭硝子財団は2021年から、日本の生活者を対象にした「生活者の環境危機意識調査」も行っています。2026年6月に行った第7回の調査で、生活者の時計は7時3分でした。前年から約30分戻り、世界の有識者の9時39分とは2時間36分の差があります。

危機的だと思う問題の1位は、7年続けて「気候変動」でした。2位と3位は「人口」と「社会、経済と環境、政策、施策」で、後者では物価高に関する声が多く寄せられました。自由記述には「イラン情勢」「石油不足」といった言葉も並んでいます。時計が戻った理由について、調査から特定することはできません。

世代による違いもあります。高校生世代の51%が、環境問題は「解決できる」と答えました。大人の世代では、61.3%が解決は「難しい」「やや難しい」と答えています。

国際社会の取り組み――交渉と危機のあいだで

COP30と、国連の外で始まった会議

COP(締約国会議)は、条約を結んだ国々が集まり、物事を決める会議です。気候変動と生物多様性には、それぞれのCOPがあります。

気候変動のCOPでは、2023年のCOP28で「化石燃料からの移行」に合意しました。ところが、2025年11月にブラジルのベレンで開かれたCOP30の決定文には、化石燃料という言葉が一度も入りませんでした。80を超える国が移行の道筋(ロードマップ)を求めましたが、合意には至りませんでした。国連の気候交渉は全会一致を原則としているため、もっとも慎重な国に合わせざるを得ない面があります。

2026年4月には、コロンビアのサンタマルタで、化石燃料からの移行をテーマにした初めての国際会議が、国連の交渉とは別に開かれ、57カ国が参加しました。第2回は2027年に、ツバルとアイルランドの共催で開かれる予定です(会場はツバル)。COP30の議長国も、決定文とは別に、化石燃料からの移行に向けた非公式のロードマップをまとめ、COP31で示す見込みです。

米国の離脱と、IPCCの日程

米国のパリ協定からの離脱は、2026年1月27日に発効しました。さらに1月7日には、気候変動枠組条約(UNFCCC)やIPCCを含む66の国際機関・条約からの離脱を指示する大統領覚書に署名しています。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、世界の研究成果を評価し、報告書にまとめる国際機関です。次の第7次評価報告書をいつまでに出すかについて、各国の意見がまとまっていません。2026年3月のバンコクでの総会まで、5回続けて合意できませんでした。2028年に予定されている、パリ協定の目標に向けた世界全体の点検(グローバル・ストックテイク)に間に合わせたい国と、時間の余裕を求める国とで意見が分かれているためです。

10月12日から16日まで、エチオピアのアディスアベバで第65回総会が開かれています。【IPCC-65の結果が出たら差し替え】

エネルギー危機と、日本の石炭火力

2026年2月28日、米国とイスラエルがイランを攻撃しました。それ以降、中東の原油の輸送路であるホルムズ海峡の通航が大きく混乱しています。10月初めの時点でも、イランは海峡を事実上封鎖しており、原油価格は1バレル100ドル前後と、開戦前の約72ドルを大きく上回っています。

日本政府は3月27日、効率の低い石炭火力発電所に課していた稼働率50%の上限を、2026年度の1年間停止すると決めました。液化天然ガス(LNG)を節約するためです。エネルギーの安全保障と気候変動への対策を、どう両立させるか。2026年の日本は、その課題に直面しています。

生物多様性のCOP17、気候のCOP31

10月19日から30日まで、アルメニアのエレバンで生物多様性条約のCOP17が開かれます。昆明・モントリオール生物多様性枠組の進み具合を、初めて全体として点検する会議です。

11月9日から20日には、トルコのアンタルヤで気候変動のCOP31が開かれます。トルコが議長国を務め、オーストラリアと連携して運営します。10月5日から8日には、その準備会合(Pre-COP)が、海面上昇の影響を受けるツバルとフィジーで開かれました。

ブループラネット賞――地球環境に貢献した人を称える

どのような賞か

ブループラネット賞は、地球環境の問題の解決に貢献した個人や組織を称える国際賞です。旭硝子財団が1992年に創設し、毎年原則2件を選んで、それぞれに賞金50万米ドルを贈っています。これまでに70件が顕彰されました。

旭硝子財団の始まりは1933年、旭硝子(現在のAGC)の創立25周年を記念して設けられた「旭化学工業奨励会」です。長く化学の研究を助成してきましたが、1990年に目的を地球環境へと広げ、名前を「旭硝子財団」に改めました。現在は、ブループラネット賞と環境危機時計のほかに、研究助成や奨学事業も行っています。

歴代の受賞者

第1回の受賞者の一人は、気候モデルの研究者、真鍋淑郎氏でした。真鍋氏はその29年後の2021年に、ノーベル物理学賞を受けています。

歴代の受賞者には、いくつかの分野の流れが見られます(受賞者は財団の受賞者一覧による。分け方は編集部による)。

  • 気候の科学:真鍋淑郎氏(気候モデル)、チャールズ・キーリング氏(大気中のCO2濃度の観測)、ジェームズ・ハンセン氏など
  • 自然を資本として捉える経済学:宇沢弘文氏(社会的共通資本)、パーサ・ダスグプタ氏、ロバート・コスタンザ氏など
  • 化学物質と健康:シーア・コルボーン氏(内分泌かく乱物質、2000年)、マイクロプラスチックの研究者たち(2023年)

2026年の受賞者

2026年の受賞者は、米国の毒性学者リンダ・S・バーンバウム博士と、米国の環境経済学者エドワード・バービエイ教授です。

バーンバウム博士は、ダイオキシンやPCB、一部のPFASなど、環境中に長く残る化学物質の毒性を研究してきました。環境中の濃度ではなく、体の中に取り込まれて残っている量でリスクを考えること。胎児期や乳児期のように、体がとくに影響を受けやすい時期があること。こうした考え方を、化学物質のリスク評価に根づかせてきました。2009年から2019年まで、米国立環境健康科学研究所(NIEHS)の所長を務めています。

バービエイ教授は、森林や湿地などの自然が果たしている働きを、政策に使える形で数値に表す方法を開拓してきました。2009年には国連環境計画の委託で「グローバル・グリーン・ニューディール」をまとめ、金融危機からの回復、貧困の削減、脱炭素、生態系の保全を一つの戦略として示しています。

2人の研究分野は、プラネタリー・バウンダリーでいえば「新規化学物質」と「生物圏の一体性」にあたります。どちらも、気候変動と並んで目安を超えている領域です。

10月27日、ブループラネット賞の受賞者記者会見

10月27日には、2人の受賞者の記者会見が東京で開かれます。生物多様性のCOP17の会期中であり、気候のCOP31の2週間前にあたります。

innovaTopia編集部も会見に参加し、次のような点を聞きたいと考えています。

  • 体の中に残る化学物質の危険は、目に見えず、暑さのように肌で感じることもできません。そうした危険への認識を、社会はどう共有できるのか。
  • 自然を資本として測る考え方は、2009年の金融危機の時代に、回復への処方箋として示されました。エネルギー危機の年である2026年に、その考え方はどう生かせるのか。

会見の内容は、改めてお伝えします。

【編集部後記】

環境危機時計の、世界の有識者の9時39分と、日本の生活者の7時3分。その差は2時間36分です。どちらかが正しいというより、同じ地球の状態を、立場の違う人々がどう受け止めているかの違いなのだと思います。地球の状態は、人工衛星やセンサーで日ごとに細かく測れるようになりました。一方で、人の危機感は、いまもアンケートで尋ねるしかありません。35年間、その測りにくいものを測り続けてきた記録があることに、この時計の価値があるように感じます。10月27日、受賞者の言葉を聞いたうえで、改めてお伝えします。

  1. 環境危機時計®(外部)
    1992年から続く環境危機時計の公式ページ。各年と地域別の時刻、アンケートの仕組み、報告書を掲載。
  2. 第35回アンケート調査報告書(PDF)(外部)
    2026年の調査結果の全文。回答者構成の変化が時刻に与えうる影響についての注意書きも収録。
  3. ブループラネット賞について(外部)
    1992年創設の地球環境国際賞の設立趣旨と概要。ここから歴代受賞者の一覧へもたどれる。
  4. 旭硝子財団|af Magazine(外部)
    ブループラネット賞の受賞者や、財団が研究を助成した研究者へのインタビュー連載。
  5. af Magazine|残留性化学物質のリスクを世界に伝え続ける毒性学者(外部)
    2026年の受賞者、リンダ・S・バーンバウム博士へのインタビュー。研究の歩みとPFASへの考え。
  6. af Magazine|グリーン経済の礎を築いた経済学者・バービエイ教授(外部)
    2026年の受賞者、エドワード・バービエイ教授へのインタビュー。自然資本に至った原点と日本への期待。
  7. Stockholm Resilience Centre|Planetary Health Check 2025(外部)
    9つのプラネタリー・バウンダリーのうち7つが超過したと評価した2025年版の解説(英語)。
  8. 生物多様性条約(CBD)(外部)
    COP17(10月19〜30日、エレバン)の情報や、昆明・モントリオール生物多様性枠組の進捗(英語)。
  9. UNFCCC|The Road to Antalya(外部)
    COP31(11月9〜20日、アンタルヤ)に向けた議長国の書簡や協議の日程(英語)。
  10. IPCC(気候変動に関する政府間パネル)(外部)
    これまでの評価報告書や、第7次評価報告書に向けた総会の資料を公開(英語)。

【用語解説】

プラネタリー・バウンダリー
人類が安全に暮らせる地球の範囲を、気候変動・生物多様性・化学物質など9つの項目で示し、それぞれに目安の値を置く考え方。2009年にヨハン・ロックストロームらが提唱。

Planetary Health Check
ポツダム気候影響研究所などが2024年から公表している、プラネタリー・バウンダリーの年次点検報告書。2025年版と2026年版で、9つのうち7つが超過と評価。

三重の地球危機
気候変動、生物多様性の損失、汚染の三つを、互いにつながった危機としてとらえる国連環境計画(UNEP)の呼び方。

環境危機時計®
旭硝子財団が1992年から毎年、世界の環境問題の有識者へのアンケートをもとに、人類存続に対する危機感を0時〜12時の時刻で表したもの。地球の物理的な状態ではなく、回答者の危機感を示す。

生活者の環境危機意識調査
旭硝子財団が2021年から行っている、日本の生活者を対象にした調査。生活者の危機感も、環境危機時計と同じく時刻で表す。

ブループラネット賞
旭硝子財団が1992年に創設した地球環境国際賞。毎年原則2件を選び、各50万米ドルを贈る。

新規化学物質
プラスチック、農薬、有機フッ素化合物(PFAS)など、人間がつくり出し、自然界にもともと存在しなかった物質。プラネタリー・バウンダリーの9項目の一つ。

生物圏の一体性
生き物の多様さ(種の絶滅の速さなど)と、生態系が果たす働きの健全さを表す、プラネタリー・バウンダリーの項目。環境危機時計の「生物圏保全性」にあたる。

PFAS(有機フッ素化合物)
炭素とフッ素の強い結合を持つ化学物質の総称。熱や薬品に強く水や油をはじく一方、自然界でほとんど分解されず、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。

モントリオール議定書
オゾン層を破壊するフロンなどの生産と消費を規制する国際条約。1987年採択。

昆明・モントリオール生物多様性枠組
2022年の生物多様性条約COP15で採択された、2030年までの国際目標。陸と海の30%を保全する「30by30」など23の目標を掲げる。

COP(締約国会議)
条約を結んだ国々が集まる最高意思決定の会議。気候変動枠組条約と生物多様性条約には、それぞれのCOPがある。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)
気候変動に関する科学的知見を評価し、報告書にまとめる国際機関。世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)が1988年に設立。自ら研究は行わず、既存の研究を評価する。

第7次評価報告書(AR7)
IPCCが作成中の次期の評価報告書。公表の時期をめぐって各国の意見が分かれ、日程が決まっていない。

グローバル・ストックテイク
パリ協定の目標に向けた世界全体の進み具合を、5年ごとに点検する仕組み。次回は2028年。

サンタマルタ会議
2026年4月にコロンビアのサンタマルタで開かれた、化石燃料からの移行をテーマとする初の国際会議。国連の気候交渉の外で、57カ国が参加。

酷暑日
最高気温が40℃以上の日。2026年4月に気象庁の正式な予報用語になった。

【参考記事】

  1. What’s on the climate calendar for October 2026? — Climate Home News(外部)
    Pre-COP、IPCC総会、COP17など、2026年10月の気候・環境関連の国際会議の日程。
  2. 2025 set to be second or third warmest year on record — WMO(外部)
    2025年が観測史上2位か3位の暑さになる見通しと、2024年に通年で1.5℃を超えたことを伝える発表。
  3. Seven of nine planetary boundaries transgressed, with worsening trends — Down to Earth(外部)
    Planetary Health Check 2026が、7つの超過とすべての項目の悪化傾向を示したことを報じる記事。
  4. IPCC: ‘Frustrating and disappointing’ meeting leaves AR7 timeline in deadlock — Carbon Brief(外部)
    2026年3月の第64回総会で、第7次評価報告書の日程が5回続けて決まらなかった経緯。
  5. Santa Marta: Key outcomes from first summit on ‘transitioning away’ from fossil fuels — Carbon Brief(外部)
    国連の外で開かれた、化石燃料からの移行に関する初の国際会議の成果と、次回の共催国。
  6. Hormuz ship attacks surge: Are increased oil exports sustainable? — Al Jazeera(外部)
    10月初めのホルムズ海峡。タンカー攻撃の増加と、迂回による原油輸出の回復、価格の動き。
  7. Belém COP30 delivers climate finance boost and a pledge to plan fossil fuel transition — UN News(外部)
    COP30の成果。適応資金の拡大と、決定文とは別に議長国が示した化石燃料移行の道筋づくり。
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野村貴之
大学院を修了してからも細々と研究をさせていただいております。理学が専攻ですが、哲学や西洋美術が好きです。日本量子コンピューティング協会にて量子エンジニア認定試験の解説記事の執筆とかしています。寄稿や出版のお問い合わせはinnovaTopiaのお問い合わせフォームからお願いします(大歓迎です)。

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